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【シナリオ】「弟子入り志願」
〈人物〉
大森円香(21)大学生
大森弘樹(40)円香の叔父・噺家(渡家七海助:わたりやなみすけ)
大森靖子(45)円香の母
まめ八(20)前座
橋本達也(17)高校生
◯大森家・和室(夕)
端正な顔立ちの大森弘樹(40)が浴衣姿で座布団を枕に寝ている。
遠くで電話のベルの音。大森、片目を開ける。
小走りな足音。襖が開き、大森円香(21)が入ってくる。
円香「叔父さん起きて! 代演! 車出しとく!」
大森、円香の脚に触り、蹴飛ばされる。
◯大森家・玄関(夕)
広い玄関。
足元にスポーツバッグを置き、神棚に柏手を打つ着流し姿の大森。
家の奥から大森靖子(45)が出てくる。
大森「姉貴、ちょっくら行ってきますよ」
靖子「もう電話番はたくさん。
女将さんか、弟子でも取ってよ」
大森「うるさいよ、出戻りが」
がらりと玄関の扉を開けて、円香が顔を出す。
円香「ヒロ叔父さん、まだぁ?
お母さん、愚痴なら後にして!」
円香、すぐに顔を引っ込める。
走って行く足音。
大森、笑いながら玄関を出て行く。
◯鈴本演芸場・楽屋口
舞台の声が聞こえる。
大森と円香が入って行くと、青い顔のまめ八(19)が駆け寄る。
まめ八「七海助師匠! おはようございます」
大森「おう、まめ八。おはようございます」
大森、バッグをまめ八に渡し、雪駄を脱ぐ。
まめ八、バッグを手に座敷の方へ消え、すぐに戻ってくる。
まめ八「師匠、すみません、間もなくサゲです、
すみません、お後お願いできますか」
大森「大丈夫。はなからそのつもりよぉ」
大森、まめ八の肩を叩き、着物の襟を直す。
大森「円香、お前は帰んな」
円香「えぇー、せっかく来たのにぃ」
ふくれ面をする円香。
舞台から大きな笑いと拍手が響く。
まめ八が舞台の方へ姿を消す。
出囃子の音。
大森「気をつけて帰れよ」
大森、円香にデコピンをすると、舞台の方へ歩いて行く。
額に手をやる円香。
◯鈴本演芸場・客席
7割程の客入り。
舞台で大森が落語を喋っている。
舞台左手に「七海助」のメクリ。
大森「『それならそうと早く言ってくださいョ、
あっしもまんざら馬鹿じゃあねぇんで』
『馬鹿だよッ』」
客席から笑い。
客席後方で、円香が立ったまま食い入るように大森を見つめている。
◯大森家・門前(夕)
ガレージを出る円香。
門柱の傍に立っていた橋本達也(17)が
橋本「あ、あのっ。
な、な、七海助師匠はご在宅ですかっ?」
橋本、勢いよく90度のお辞儀をする。
円香「えーと…。もしかして、弟子入り?」
円香、お辞儀のまま固まっている橋本をまじまじと見る。
◯大森家・リビング(夜)
円香がソファでスルメを手に缶チューハイを飲んでいる。
スルメをぼんやりと見つめる円香。
シャツ姿の大森が入ってくる。
大森「ただ今ぁ。お、円香も呑んでたのかぁ」
大森、円香の隣に座り、円香の手からスルメを横取りする。
円香「ヒロ叔父さん…取るの? 弟子」
大森「あぁ?」
大森、スルメを齧りながら円香の方に寄りかかる。
大森「円香はどうなんだよ、就活? とかさあ」
円香、缶ビールを一気に呷る。
円香「就職は、しない」
大森「え? 何、お前まさか結婚とか?
あ、俺が認めねぇ男とは結婚させねぇぞ」
腰を浮かしかける大森。
円香、音を立てて缶ビールをローテーブルに置き、大森の方へ向き直る。
円香「ヒロ叔父さん。…ううん、七海助師匠。
私を、弟子に、してください!」
深々と頭を下げる円香。
ぽかんと口を開く大森。
これを公開するのには、かなり勇気が要りました。。。
「魅力的な叔父さん」というテーマで出された課題。
*小父さんでも伯父さんでもなく、”叔父さん”であること。
*叔父さんの「職業」がわかること。
という縛りがありました。
私には叔父がおりません。
そして、描ける自信のある職業も思いつかなかった。
「どんな叔父さんなら、原稿用紙を埋められるのか?」
と悩み倒した挙げ句、今まで以上に自分の内面をさらけ出す羽目になりました。
この緊急事態宣言下、限られたリソースで様々なトライをしている演者さま方に、たくさんの勇気をいただきました。
私もひとつハードルを越えてみようかと。
鈴本演芸場はじめ、定席で、心置きなく落語を楽しめる日が、早く来ることを願って。。。
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