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蓮の葉を使ったお料理と大阪・万博記念公園の象鼻杯(元教授、母親の卒寿をレストランでお祝いする:その2)定年退職72日

前回、母の卒寿のお祝いについてお話ししました。今回は、横浜のおしゃれなレストラン(下写真:レストランの待合室)で行った会での、とても美味しくそして楽しかったお料理の前菜をご紹介いたします。

卒寿のお祝いをしたレストランの待合室


食事の前にはレストランに少し時間をとっていただき、簡単な挨拶と映写会を行いました。その後赤ワインを注文し、最初に運ばれてきたのが、ガラスの器の上に蓮の葉が乗った前菜でした(タイトル写真)。器の中にはトマト風味の海老の料理が入っており、蓮の葉の上には「じゅんさい」が乗っていました。

お店の方の説明によると、「その蓮の葉を引いてじゅんさいを海老の料理にかけて一緒にお召し上がりください」とのこと。じゅんさいは、透明なゼリー状の中に若芽が入った、ツルンとした食感が楽しい食材です。関西では吸物や味噌汁の具として親しまれていますが、関東の方々には珍しいようで、初めて口にする人もいました。<ゼリーは、私の専門分野の一つでもありますので、いずれゆっくりとお話しさせていただきます>

蓮の葉を引いてじゅんさいを海老の料理にかけたところ

この前菜の妙は、じゅんさいの柔らかい見た目と食感に加え、それが蓮の葉の上からスルッと落ちるワクワク感も楽しめたことです(上写真)。私は科学者という職業柄、蓮の葉の撥水性の原理を参加者に説明しようと思い、話を始めましたが、誰も聞いている様子はありません。「せっかくの面白い話なのに」と思い憤慨しましたがw、理系の少ない場では多勢に無勢でした。隣の席にいた数少ない理系の弟に助けを求めようと横を見ると、彼はすでに食べ終わっておりました(汗)。もちろん、そこで話を続けるのは諦めました(怒)。


ということで、誰も聞いてくれなかったので、この場を借りて少しお話しさせてください。蓮の葉のイメージとしては、スタジオジブリの映画「となりのトトロ」で、トトロが傘のように使っていた葉っぱです(ただ調べてみると、トトロが使っていたのは蓮ではなくサトイモの葉のようです。水をはじくという点では同じですが)。

蓮の葉の表面には、高さ数マイクロメートルの微細な突起がびっしりと並んでおり、この構造が水をはじく秘密です。この突起の凸凹構造により水滴と葉の接触面積が極めて小さくなり、さらにその突起のすき間に入り込んだ空気の層が水滴と葉の表面の接触を防ぎます。水をはじくもう一つの理由は、突起の先端に撥水性の「ワックス」が付着しており、突起自体も水に濡れにくくなっていることです。これらの二つの相乗効果により、蓮の葉は優れた撥水性を示すのです(参考文献1など)。

蓮が沼地で生きていくために身につけた構造・機能ですが、自然の仕組みは本当に素晴らしいですね。実際に、蓮の葉の上に水を垂らすと、丸い玉になってコロコロと葉の上を転がり、葉は全く濡れません。機会があれば、ぜひ皆さん試してみてください。


大阪で、私が住んでいる近所の万博記念公園の中の日本庭園には蓮の池があり、毎年7月初め頃に観蓮会が開催されます。一度早起きをして奥様とともに参加したことがあります(早朝でないと花が閉じてしまうということで、朝6時からの催しです)。早朝にもかかわらず、多くの人々が列をなしていました。蓮の鮮やかな花の色と葉の緑のコントラストがとてもきれいで印象的でした。

万博記念公園の観蓮会の模様(大阪府のHPより(注1))

驚いたことに、その会場では「象鼻杯」という催しも行われていました。蓮の茎には穴が通っており(蓮のもう一つの特徴です)、葉にお酒を注ぐと、ストローのようにして飲むことができます。蓮の香りが移り美味しいとのことでしたが、私は車で来ていたため試すことはできませんでした。しかし、ご年配の方々が楽しそうにお酒を飲んでいて、その姿がとても微笑ましかったです(残念ながら、現在はコロナ禍の影響で中断(中止?)しているようです)。


このような話を「卒寿の会」でしたかったのですが、興味を持ってくれる人がいませんでした(汗)。しかし、この場で皆様にお話しできて大満足です。最後まで読んでいだだき、ありがとうございました。

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参考文献1:三井化学「そざいの魅力ラボ」https://jp.mitsuichemicals.com/jp/molp/article/detail_20220627/index.htm など
注1:大阪府ホームページ「「万博記念公園 早朝観蓮会」を開催します!」よりhttps://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/fumin/o070130/prs_48134.html


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