元教授、学生時代に食べた自販機のきつねうどんを思い出す: 定年退職95日目
ここ何回か NHK の「ドキュメント72時間」の話題を取り上げてきましたが、今回はいよいよ歴代1位の回「秋田、真冬の自販機の前で」についてです(タイトル写真、下写真:注1)。この回のポイントは「自販機」。番組を見ていて、京都の学生時代によく利用していた、あの懐かしい自販機のうどんを思い出しました。
番組では、寒風吹き荒ぶ真冬の秋田で、人々が屋外にある自販機のうどん(そば)を求めてやってきます。設置されているのはかなり年季が入り、少し壊れかけている自販機ですが(下写真)、そこから熱々のうどんが出てくるのです。後ほど紹介しますが、生麺が使われており、お汁もとても美味しいのです。数分後、出来上がったうどんを手に、外のベンチに座り、時には頭を雪だらけにしながら、ただ黙々とうどんをすするのです。一人で、あるいは仲間と、時には父親が息子を連れてくる様子も見られました。
この回が人気の理由は定かではありませんが、ランキングでは常にトップクラスです。秋田の風景や吹雪の中での光景、そして何より自販機のうどんを美味しそうに食べる人々の姿が魅力なのでしょう。
40年あまり前、大学院生になった私は学生マンションに引っ越しました。以前の離れにあった下宿とは違い、エアコンやトイレ・シャワー付きのいくらか文化的な生活を手に入れました。しかし、当初は洗濯機がなく、近くのコインランドリーを利用していました。日曜日の夕方に、よく1週間分の洗濯物を抱えて行きました(日曜日は大抵昼過ぎまで寝ていたので、洗濯はその時間になってしまったのです)。
そのコインランドリーの向かいにうどん自販機はありました。秋田の自販機とおそらく同じ機種だったと思います。洗濯と乾燥の待ち時間に、そこでよくうどんを食べました。人気は天ぷらうどんでしたが、大抵売り切れており、きつねうどんを食べることが多かったです。ただ、近くの食堂の人が生麺や具材を補充してくれていたので、味は格別でした。
高校まではずっと関東に住んでいた私は、実はそれまで「きつねうどん」に馴染みがありませんでした(もちろん知ってはいましたが)。関西では、こんなにメジャーな食べ物とは思いもしませんでした。関東では、うどんより蕎麦が主流で、具材は天ぷらが多いのです。お金に余裕があれば「天ぷらそば」、そうでなければ揚げ玉が乗った「たぬきそば」を選んでいました。
一方、関西では出汁の染みた大きな油揚げが乗った「きつねうどん」が主流でした(京都では少し違い、短冊切りした油揚げと九条ネギが乗っていました:下写真)。また、私の好きな「たぬきそば」を注文すると、予想と全く違うものが出てきて驚きました。京都の「たぬきそば」は、短冊切りの油揚げが乗り、餡がかかり、生姜が薬味として添えられていたのです。さらに大阪に行くと、「たぬきそば」を食べたい時は「ハイカラ」と注文しなければいけません。地域によって呼び方が全く異なることに、思わず笑ってしまいました。
私が京都で、自販機のうどんに次いでよく食べたのは、銀閣寺近くにある名店「おめん」のうどんです(下写真)。食事時にはいつも大行列ができるほどの人気店です。うどん自体も美味しいのですが、山盛りの野菜と一緒に出され、つけ汁に入れながら食べるのです。あまりにも美味しかったので、友人はそこでアルバイトを始めたほどです。ただ、その友人から衝撃の事実を聞かされました。実はそのうどんは京都名物ではなく上州(群馬)名物だったのです。関東の友人たちが京都に遊びにきた時、私の案内ルートは銀閣寺を訪れ、「おめん」で昼食をとり、哲学の道を歩いて街に出るものでした。「京都」観光に来た彼らには申し訳なかったですが、抜群に美味しかったのでお許しください。
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注1:NHK 「ドキュメント72時間」テレビ画像より
注2:大阪ガス、ホームページより https://services.osakagas.co.jp/portalc/contents-2/pc/tantei/1270896_38851.html
注3:「おめん」ホームページより https://omen.co.jp/
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