うまいものはうまかった。

またなくなってしまった店の話ばかりかもしれないが承知されたい。

少し前のおひとり様話とも少し被るが、今回はもう少し範囲を広げて話せるかもしれない。

昔、三条通りに非常に、それはもう非常に美味いうどん屋があった。
数m近付いたところで既にその店から出汁の良い匂いが漂っており、いつも地元の方から外国人観光客まで幅広く賑わいを見せていた。
僕は、うどんは勿論だがそこの揚げだし餅という少し変わったメニューがとても好きで、ほぼ毎回頼んでいたほどだ。薄めの衣に出汁が染みて、餅もほどよく伸びる。あの味は忘れられない。
なぜあれほどの人気店が店を閉めたのかは解らないが、暫しのあいだショックでずっとあの香りが脳裏に過ぎっていた。

惜しい店をなくした、と思ったのはもう一件。
ひがしむき商店街にあったあをによしというラーメン屋である。ここは有名ではないだろうか。
あっさりめの味が好きだった。なかなかの量で提供され、落ち着いた雰囲気の店内もラーメン屋のイメージとは少し離れていて誰でも入りやすい店だったのを覚えている。
少し奥まった店だったので、ガラケーの電波が届かなかったのもいい思い出だ。
ここはラーメン以外なら、ゆずシャーベットが美味かった。今でこそ柚子味というのはメジャーになったが、当時は柚子は珍しかったと思う。

場所は変わって、王寺町の片隅にあった『まつや』サンというお好み焼き屋さんだ。
少し値は張ったが、それだけボリューム満点のお好み焼きがテーブルの鉄板に運ばれてくる。女性だと一枚食べきれず残りを持ち帰られる方もいらっしゃったそうだ。
ここはかなりの頻度で家族で訪れていた。
僕はここでも"もちチーズ"というメニューをよく食べていた。無意識だがもちの食感が好きなのかもしれない。
ご夫婦で経営なさっていたお店で、食べ盛りの時によく行っていたこともあり、食べっぷりの良さを度々喜んでいただけた事がある。
そうそう、そこには変わったメニューがあった。その名も『ライスモダン』。焼きそばの代わりにご飯が挟まっているのだ。非常に米の食感やソースとの絡みもよく、これもよく頼んだものだ。
最後に、おまけでシャーベットを振舞ってくれるサービスがあった。そのシャーベットが、あのメロン型のシャーベットのような口当たりと独特のサッパリした味で、今もなおたまに食べたくなるのだ。
ここはご夫婦が引退し、別の方が継いだのだが、今は恐らくもう店がなくなっていると思われる。

最後に、少しミステリアス・・・というほどでもないが、不思議な話をしよう。
奈良なのだが、どこなのか、なぜ自分がそこへ入ったのか全く記憶にないカフェがある。
そこは道路に面していて、さほど広くはなかった。その道路がどこなのか思い出せない。僕は2階の窓と向かい合うかたちのカウンター席に座り、たしかブラウニーのようなものを食べていた。
雰囲気としては福智院、高畑、紀寺あたりの道路のような気がする。しかしもっと、奈良⇔名古屋の昼行バスが通る道のような気もする。(全然違うじゃないかというツッコミは尤もである)
でもそんな場所に流石に行くだろうか?というロケーションだけが記憶にあるのだ。
あれは夢だったのだろうか。

そんな不思議な話も交えつつ、前半3つのお店については、共通することは『居心地の良さ』だったように思う。
空間であったり、店員さんであったり、なにかしら気持ちのいい店だったのだ。

毎回、懐古的な話ばかりになってしまうが、奈良は昔も今も魅力の変わらない場所なのだ。

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