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断片 #3

先日、6年間いた大学の音楽サークルをついに引退した。
休学期間やコロナ禍で活動していなかった時期等を考慮すると更に短いかもしれないが、それでも多くの時間をこの場所で過ごした。
思えば長かったような、短かったような、とてつもなく濃い時間だったと振り返ってみて感じる。




自分のいたサークルについて

先日引退した音楽サークルは、いわゆる普通の軽音サークル(以降ロッ研と表記する)と全然ジャズをやらないジャズ研究会(以降ジャズ研と表記する)だった。
他にもブラックミュージックを専門に演奏する固定バンドのサークルや、出演バンドが少な過ぎてDJが駆り出されまくるサークル、合宿で上の代の人間が大やらかしをして決別したサークルなどに所属していたものの、最後まで続けていたのは今回引退したロッ研とジャズ研の2つだけである。

自分が通っていた大学のキャンパスはとんでもない田舎にあるためか、全体としての演奏の技量はそこまで上手くなかったり、内々のノリが随所に見られたりと、外部の人からすればあまり良いサークルに見られなかったかもしれない。

外部のキャンパスの音楽サークルは、自分が通っていたキャンパスの音楽サークルよりもそれはそれは大きな規模で、1000人以上集客可能な渋谷にある箱でライブを行うサークルも数多くあった。
外部のサークルを知った自分は、まるで都会に憧れ田舎から出てくる若者の如く目を輝かせていたのを覚えている。
田舎と決別し都会に居続ける者達のように、自分と同じキャンパスに通っていても都会のキャンパスのサークルにしか入らない者もいた。


そんな中で、なぜ自分はこんな閉鎖的で技量も卓越していない2つの音楽サークル、ロッ研とジャズ研に居続けたのか。
その理由の一つに『多様性』が挙げられる。

『多様性』とは言いつつも、これは音楽的な部分も人間的な部分もその他興味範囲も全て内包したものを意味する。
通っていたキャンパスには、いわゆる軽音サークルが私の所属していたロッ研しかなかった。そのためキャンパス内で軽音をやりたいのであればロッ研に入るしかなかったのだ。

バンドミュージックと言っても音楽ジャンルは多岐に渡る。ロックの中でもオルタナ、パンク、シューゲイザー、サイケデリック、ハードロック等、本当に幅広く分岐していく。
あらゆる音楽好きが一箇所に集められると、先程私が述べた『多様性』が生まれる。自分だけでは知り得なかったもの、外部ではアウトサイダーと扱われかねないことをやっても許される環境が、たしかにそこに存在していた。

そんな環境で過ごしていると、元々音楽をそこまで聴いていなかったり詳しくなかった者も少しずつではあるが醸成されていく。
時間が経つにつれて、その人の中には「この音楽が好きだ!」という確固たる気持ちが生まれアンテナが広がっていった。
その様子を間近で見つつ、共に成長していくという感覚を実感していた。それが妙に心地良かった。


最も、それは音楽面だけに言えることではない。

会話する上で自分よりも熟達した考えを持っている人が多くいたため、知見が広がる環境であったことは間違いない。少なくとも自分にとっては。
学問のこと、恋愛のこと、本当にくだらない下ネタやアングラなネタ、どうでもいいことを交わし合う時間が、今になって恋しく感じる。

特に、他人の弱さや自分自身が抱える悩みに対して真剣に考え、話し合える相手が多く在籍していた。この点に関しては、ロッ研とジャズ研に在籍していて本当に良かったと思える部分の一つである。色々なことに気付かせてくれてくれた先輩、同期、後輩達にこの場を借りて御礼を申し上げたい。
本当にありがとう。



追いコンの話

閉鎖的な環境であるのも一つの理由か、兼サーしている人が多いロッ研とジャズ研は合同で追いコンを行うことになった。
15〜16バンドが出演する中、私は8バンド出演するという暴挙に出た。これが本当に最後だったので、それくらいやってやろうという気持ちだったのだ。

卒業するまでに絶対にやると決めていたFishmans、最後の舞台で絶対挑戦したいと思っていたHiatus Kaiyote、2018年から続けてきたファンク・ソウルのコピーバンド、そして入学した時からずっと一緒にやってきた同期と演奏するpaionia。
これが本当に最後、今日が終われば跡形もなく消えゆくものかもしれない。しかし、自分達はたしかにそこにいたと刻み付けるのに相応しい時間だった。

昨年末から準備をしつつ、1月末から練習を始めてはいたが、よくもまあこんなわがままな人間に同期や後輩達はついてきてくれたなと思う。

追いコンは、私だけの力では絶対に成立しなかったものであり、先輩や同期、そして運営や練習に参加してくれた後輩達の力があって実施できたのだ。
でも、そんな追いコンもついに終わってしまった。
2日ほど経った今、疲れが抜けてきてようやく感傷に浸る余裕ができた。




最後に

音楽サークルなんて、誰かにとってたかがコピバンかもしれない。自分にとってもそうだし、それ以上でもそれ以下でもない。
それでも、自分が本気で好きなものを本気でやるという環境があったからこそ、絶対にこのメンバーでやる!という気概が持てたからこそ、気付けたこともあった。

感謝したい人が多過ぎて、一人一人とちゃんと話す時間が取れなかったのが悔やまれる。
迷惑をかけてしまったり、自分が怒ってしまい嫌いにさせてしまった人もいるかもしれない。それでも自分は君達に生かされていて、感謝の一言では言い表せない程世話になった。
もう一度この場を借りて御礼を申し上げたい。ありがとう。


自分が2021年一番聴いたバンドであるpaioniaの詞の中に、

いつまでも続いた長い夜
語り尽くせない自分とやら
俺たちはあの日の俺たちと
抱きしめ合える日を夢見てる

爆音で殺した退屈や
星空が語る遠い街
俺たちはあの日の俺たちと
抱きしめ合える日を夢見てる
https://www.paionia.info/disc


という歌詞がある。


自分がロッ研とジャズ研にいた6年間、いつか自分が辛い壁にぶち当たった時、今まで過ごした記憶を御守りのようにしながら生きていこうと思う。

さらば、愛した場所よ。

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