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短編「幼馴染の定食屋」

私の住むマンションの隣には定食屋さんがある。
小学校の頃から毎日忙しい両親の代わりに夕飯を用意してくれる、お店は私の第二の家と言っても良いほどだ。
ピロリとラインが鳴ったら集合の合図。今日もウキウキ気分で、閉店間際のお店を訪ねた。

「こんばんわ〜」

と声をかけて店に入ると、奥から同い年の幼馴染が顔を出す。
「いらっしゃい」といつものように出迎えてくれる。営業中の札をひっくり返して、閉店に変える。

「今日は手伝うことある?」
「あとは洗い物だけだから、こっちに食器持ってきて欲しい」
「はいはい」

ささっと終わらせようと手を洗って、テーブルに残っている食器を運んでいく。
いつからか、私は夕飯の弁当とは別に彼のオヤツか間食を貰う代わりに、ちょっとした手伝いをするようになった。
パウンドケーキ、クッキー、カップケーキ、唐揚げ、コロッケ、煮物など。食べてきた料理はどれも美味しくて、面倒という気持ちが起きることなく、楽しく通っている。

「ねえ、今日って何?」
「お弁当の残りで作ったハンバーグと煮物」
「やった〜〜」

ちょっと小さいけどハンバーグのタネが残るのは珍しいからあると嬉しいのよね。つい鼻歌を歌いつつ、食器を洗い場に運んでテーブルを拭いていく。
今日はどのくらいの大きさかな。一口サイズかも?もっと大きいといいな。
最近は私の好きなおかずが残っていることが多くてラッキーだ。

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