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おすすめの曲㉖:シベリウス「フィンランディア」

(これは、私がときどき書く、クラシック音楽マニアネタです。マニアと言っても今回の曲はクラシック音楽界ではそれほどマニアックではありませんけども。長くなります。それでもよろしいというかたは、どうぞお読みください。おもしろいかどうかは保証できませんが…)

 シベリウスという作曲家については、いままでも記事にしてきています。あえてリンクをはると以下のものになります。読まなくてだいじょうぶですよ。長くなりますから。スルーしてくださいね。2つ、はりますね。



 そんなわけで、シベリウスの後期作品に目覚めたのは大学の2年くらい(交響曲第6番との出会い)のときでしたが、その前から、シベリウスの名前は知っていました。最初に知ったのは、私が中学か高校くらいのときに父が買ったCDで、シベリウスの「フィンランディア」「カレリア組曲」「交響曲第2番」の入った、アシュケナージ指揮フィルハーモニア管弦楽団でした。いま思うと、シベリウスの「ド名曲」ばかりの入ったCDですが、なにしろこれしか知らなかったのです。

 そういうわけで、「フィンランディア」は、シベリウスの作品のなかでも特別に有名で、シベリウスに限らずとも、いろいろなオーケストラ曲のなかでもかなり人気のあるほうの曲です。いわゆる「やりやすい」曲でもあり、アマチュア・オーケストラも、プロのオーケストラも、けっこうひんぱんにやります。7分か8分くらいの短い曲です(クラシック音楽としては、これでもけっこう短いほうです)。中間部に、讃美歌にもなっている有名なメロディが出ます(讃美歌の日本語歌詞は、「やすかれ、わが心よ」というものです。教派にもよるでしょうが、この讃美歌をご存知のクリスチャンは多いだろうと思います)。この「フィンランディア」を分析的に聴くと、シベリウスは、このメロディを出すために、曲の冒頭から、慎重に布石を打っていることがわかります。先ほどの「やりやすさ」の話に戻りますと、アマチュアの場合は「難易度」のほかに「編成」という要素があり(プロにも「編成」の問題はあるのでしょうが、プロオケの話は知らないので書けません)、この曲は、トロンボーン3人とテューバがあるので、その人たちの出番を確保するという意味で、そういう大きめのオーケストラなら選ばれやすい曲でもあります(ほかに、トランペットが3人である点、ティンパニ以外の打楽器奏者があとひとり要る点などが特徴的です)。

 高校のころの「フィンランディア」の思い出は、これを「採譜」(耳コピのことです。耳で聴いただけで、すべて楽譜に書き起こす能力です。私にはこれが昔からあります。世の中で流れている音楽のほとんどは、耳だけで聴きとれていて、その気になれば、こうやって、楽譜に書き起こすことができます)して、ピアノ連弾用に編曲したものを、ある、当時、芸大の作曲家を目指している同年輩の学生さんのところへ、持って行ったという記憶です。その学生さんは、母の知り合いでした。母も、私の才能を、なんとか売り込みたかったものと思われます。その子とは、それきりになりましたが、そののちどうしているだろう。私と同年輩ですから、生きておられればだいたい46歳くらいになると思いますけど。

 つぎの「フィンランディア」の思い出は、大学1年のときに、実際にやった、という思い出です。1番フルートを吹かせていただきました。なかなかたいへんな思いもしましたが、本番はうまくいきました。録音も残っています。本番の直前に、ペーター=ルーカス・グラーフのフルート・リサイタルを聴く機会がありました。その日の思い出はまだ書いたことがないようです。いずれまた書くことにして(しかし1994年の話ですけどね。いつか書くのか?)、あらましを書きます。それは、オケの先輩がもらってきたチケットで、そのオケのフルートのメンバー全員で聴きに行ったのです。私ひとりでは決してしないことですが、終演後、楽屋に押しかけてサインをもらいました。私は、そのとき練習していた、「フィンランディア」の1番フルートのパート譜の裏面にサインしてもらいました。グラーフは「これやるの?」と言い、サインしながら「ッカタカタカタタッタ」と何度も言っていました(「フィンランディア」に頻出する特徴的なリズムです)。とっくに紛失しておりますけど。さて、本番の演奏会のアンケートの感想を読むうち、「讃美歌が云々」というアンケートがありました。当時、まったくキリスト教と縁のなかった私は「ふーん」と思って読み流しましたが、とにかく有名な讃美歌なのです。(個人的には、あまり好きではない歌詞の讃美歌です。勇ましすぎるというか。「いたみも苦しみをもおおしく忍び耐えよ、主イエスのともにませば、たええぬ悩みはなし」。いや、主イエスがともにましても、たえられない悩みはあるでしょう!やはりこの曲は音楽だけがよい!ちなみにいわゆる『讃美歌1編』のメロディは少しおかしく、『讃美歌21』はシベリウスが書いた形に直しています。他の讃美歌集についてはよく知りません。)

 それから十数年の年月が流れ、学校に就職してから、オーケストラ部の顧問として、あと2度ほど、「フィンランディア」に出会ったことがあります。乗ってもおらず、指揮してもおりませんが、とにかくよくやる曲なのです。ある、かなりアマオケをやり込んでいるトロンボーンの同僚に出会いました。彼はシベリウスなら「タピオラ」をやったことがあるというつわものでした(シベリウスの「タピオラ」をやったことがある人は滅多にいません。そもそもアマオケのプログラムで「タピオラ」を見たことなどない気がします)。「フィンランディア」は数えきれないほどやっている人で、「フィンランディア」なら、暗譜で吹けると言っていました。それくらいよくやる曲なのです。

 さて、この曲のどこが「おすすめ」かと言いますと、このわかりやすさと短さですね!7、8分でストレス解消するのにぴったりです!私はね!この手の私の「ストレス解消音楽」は、5分くらいの時間であればフォーレの「シチリアーノ」、7分か8分であればこのシベリウスの「フィンランディア」かホルストの「惑星」の「木星」、10分くらいであればボロディンの「だったん人の踊り」、15分くらいであればラヴェルの「スペイン狂詩曲」、20分くらいであればレスピーギの「ローマの松」かストラヴィンスキーの「火の鳥」組曲、と言った感じなのです。わかりやすいでしょ(笑)。とくに私は、発達障害の特徴のひとつでもある「耳についた音楽が離れない」という特徴がありますので、なにか「耳についた音楽を洗い流す」ときにも最適な音楽です。もはや有名な音楽すぎて、「自分が若いころやったことのある音楽だ」という感覚はなくなっています。

 どういう演奏で聴いているかを最後にご紹介しますね。ストコフスキー指揮フィラデルフィア管弦楽団の1930年録音です。この曲は、ストコフスキーは「やりたいほうだい」で、なかなか常識を超越した演奏なのですが、これがまたいいのです。ストコフスキーが指揮した「フィンランディア」は、ライヴ録音も含めると、いくつかあります。ヘルシンキ市交響楽団というシベリウスの本場のオケに客演したときに「オール・シベリウス・プログラム」を組み、この「フィンランディア」もやり、この日の演奏会はすべて録音されてCD化もされています(この録音はあまり音質がよくなくておすすめはできないのですが、とにかくストコフスキーは、本場のオケであるにもかかわらず、また、作曲者が聴いているにもかかわらず、これだけのことをやってのけていたという記録です。シベリウスは長生きでした)。

 そのYouTubeもはって、終わりにしますね。これも律儀に聴く必要はないですよ。はるだけです。どうぞスルーなさってください。



 そういうわけで、ストレス解消音楽として、いまだに私がしばしば聴いている音楽である、シベリウスの「フィンランディア」のご紹介でした。ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

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