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中退(中途退学)と単位取得退学

 私の最終学歴は「東京大学大学院数理科学研究科数理科学専攻博士課程単位取得退学」です。「単位取得退学」は聞き慣れないかたが多いと思います。少し、単位取得退学という最終学歴について、私の知っていることを書きたいと思います。

 「中退」という最終学歴はご存知のかたが多いと思います。ネットで調べたところ「中途退学」の略のようですね。これは大学(学部)でも起きますので、多くの人にとって耳なじみのある最終学歴ではないかと思います。大学院博士課程でも中途退学はあり得ます。私の「単位取得退学」というのは、「単位はそろえた」という意味です。ではなぜ「修了」ではないのかと言いますと、博士論文を提出していないからです。博士課程で単位をそろえたものの博士論文だけ出さなかった人の学歴を「単位取得退学」と言うのです。

 私の父の最終学歴も、ある大学院の博士課程の単位取得退学です。しかし、私とはまったく状況が異なります。彼は、博士課程を修了する前に、ある別の新設された大学の助手に決まったのです。いまでは考えられません。いまでは博士課程を修了しても研究者になれない人が多いのに!彼はのちに博士論文を提出して「論文博士」になりました。(論文博士とは、博士課程に在籍せずに、論文提出で博士になる人のことです。ドイツ留学をして博士論文を提出したある友人の牧師にこの話をしたら、信じられないという感じでした。ドイツにはないらしい?しかし、論文博士は非常に審査が厳しいと聞いています。いっぽうで博士課程に在籍して博士になる人を「課程博士」と言います。)しかし、私の大学院でも、私より上の世代の先生がたで、論文博士は多かったものです。おそらくあまりにも優秀で、博士課程を修了する前にどこかの大学のポジションを得た先生がたでしょう。

 「単位取得退学」という言葉にはなんとなくマイナスの印象がある、ということは昔から言われていることです。「退学」という言葉の持つマイナスのイメージです。講演会で講師の最終学歴が「単位取得退学」だったので、聴衆の皆さんがひそひそと「あの先生、退学ですって!」と言っていた、などという話はときどき聞きます。ですから、皆さん最終学歴を書くときに慎重になられます。ある先生は著書の自分のプロフィールに「○○大学大学院博士課程後期で学ぶ」と書いたり、「博士後期課程単位取得」と書いたりしています。よく読むとその先生にはちゃんと「単位取得退学」と書いている著書もあります。おそらく「退学」という言葉のマイナスのニュアンスを嫌って「単位取得」とだけ書くのだろうと思います。多くの人がそうしています。「満期退学」とか「単位取得満期退学」といった言いかたもあります。たったいま検索したところによると私は「単位取得満期退学」なのかもしれません。3年以上はいたからです(5年いました。ただしうち1年は休学)。

 私はこの「みっともない」最終学歴がなかなか好きです。自分の中途半端さを如実に表しているように感じるからです。ここ、笑うところですよ。なんだかまだ「中退」のほうがかっこよく聞こえるようにも感じましたが、私は単位をそろえ、中途退学ではなく「単位取得退学(単位取得満期退学)」になったのでした。これで少し通じましたかねえ…。なかなかわかってもらいづらいことです。

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