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指揮者のオケから見た評判

 ある仲の良い元オーケストラプレイヤー(プロ)のかたがいます。どこの誰だかわからないように書きますね。その人とは長い付き合いになりますけど、たまに、酒の席とかで聞いた、「オケから見た指揮者の評価」の話を、ここに書こうと思います。最近、茂木大輔さんというN響で長いことオーボエを吹いておられたかたの『交響録 N響で出会った名指揮者たち』という本を読んで、私もこんな記事を書きたくなりました。ただし、茂木さんの本は、まず「本」であって、みんなが読むもの。いろいろな指揮者のファンも読むでしょう。あと、茂木さんの場合、自身が指揮者でもあることもあって、それほど悪口は書いてありません。私がこれから書こうとしていることは、その年上の友人の言っていた、酒の席での話。「本」にするつもりはないから、当然、本音まるだしです。でも、せっかくの話だから、書いてしまおう。

・外山雄三

 非常にすぐれた指揮者だった。耳はいいし。(この人が積極的にほめる指揮者って、外山雄三だけであったと思います。)

・渡辺暁雄

 いやもう、いい人でいい人で、あれで指揮さえしなければ最高なんだけどなあ、って言われてたね。ひどかったね。レコーディングのときも、「いいですねえ、いいですねえ」って言って、レコーディングエンジニアから「ダメです」と言われているくらいだった。
(ようするに、性格はいいのだけれど、指揮者としては失格、という評価です。外山雄三の真逆ですね。おっと、外山雄三の性格が悪いとは言っていませんよ笑)

・近衛秀麿

 なにを言っているのかよくわからないし、なにを指揮しているのかもよくわからない指揮者だった。フルトヴェングラーを尊敬しているようだった。あの人、フルトヴェングラーに会っているんだよね?
(ただ、実際に近衛の著書を読むと、もちろんフルトヴェングラーも尊敬していますが、近衛が最も尊敬していた指揮者は、ストコフスキーらしいことがわかります)

・朝比奈隆

 朝比奈?それはもちろん悪く言う人がいるのは当たり前だけど、われわれの仲間で、いや、外山や岩城よりもいい、って言っているのもいたよ。あの人、練習を全部、録音しているんだよね。あとで聴いて勉強しているのだろうか。

・小澤征爾と若杉弘

 小澤征爾がうちのオケに来たとき、吉田秀和が新聞に「小澤はオケを魔法にかけた」とか書いていたけど、われわれ、魔法になんか、かかってないしね。ただ、小澤のよさは、細かいところはオケに任せるところだね。たとえば若杉弘なんかは「そこはそうして」とか「ここはこうして」とかいう注文が非常に多い。それで、音楽はよくなるどころか、かえってどんどんつまらなくなっていってしまう。その点、小澤征爾は、細かいところはオケに任せていたから、その点は小澤の長所だ。

・尾高忠明

 学生オケの前では厳しいんだって?
(つまり、学生オケの前ではいばっていて、そのオケのようなプロのオケの前では、へこへこしていた、と言いたいのでしょう)

・井上道義

 ひどかったね。あるとき共演した(ヨーロッパの)ソリストも、「あの指揮者は音楽というものを何もわかっていない!」とかげで言っていたね。ほんとうにひどかったね。

・三石精一

 あの四角い顔。音大時代からバカにされていたよ。

 こんなところでしょうか。やっぱり本音が出ると、悪口大会になってしまいますね笑。外山雄三を除いては、ほぼ悪口ではないでしょうか。ちょっと、現役の指揮者先生のためにフォローしておくと、このオケマンさんは、この一覧を見てもお分かりの通り、けっこう年配なので(近衛秀麿を知っているわけですから)、尾高忠明さんや井上道義さんも、経験を積んで、いまはだいぶよくなっているかもしれませんから…というフォローをしておきますね。以上です。

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