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自分の手でやってみる

 私はかつて教員をやっていました。そのころから、以下のような教材はありました。教室の壁に映し出すのです。これは三角関数(サインとコサイン)のグラフです。(律儀にご覧になる必要はございませんよ。)これは「目に見える」ので、問答無用に納得せざるを得ません。しかし、これで理解できるようになるのかと言ったらはなはだ疑問だと思っています。


 もちろん私の学生時代にこのようなものはありませんでした。ひたすら頭で考え、手を動かし、何度も間違いながら、七転八倒して、ようやく理解したものです。どれだけ電卓が発達しても筆算の経験が必要であるように、どれだけパソコンが当たり前になっても漢字の書き取りの練習が必要なように、どれだけネット検索が当たり前になっても図書館まで行って調べることがなくならないように、自分の手を使って、足で稼いで調べることはなくなりません。私の教員のころはICT教育とか言っていましたが、これで三角関数が理解できるわけではないと思います。わかった気になるような気がするとは思いますが。

 10年くらい前、高校の数学で統計が必修になりました。高校の教員は怖れていました。習ったことのないことを教えることになるからです(やはり教員というものは自分が学生時代に習ったことを振り回して成立する仕事だということがここからも明らかになります)。そして、はじめてセンター試験で統計が出た翌日。いつもセンターの数学は日曜だったので、睡眠障害のある私は、問題を見ることなく月曜を迎えます。そして、意地の悪い生徒が、授業中に私に新聞を見せ「これなーんだ?」と試してきます。相関係数の問題でした。私は高校の統計にかんしては、いちいち手で計算して、自分に落とし込んでいました。そして、そのくらいはっきりした相関のある相関図(散布図)になるのであれば、相関係数は0.95くらいあることと確信し、選択肢から0.95を選びましたが、当たりました。これはあてずっぽうというのではなく、「手で計算していた」からこそ出せる「肌の体験」によるものです。

 聖書もそうです。「3分でわかる大人の雑学」みたいな聖書の入門書を読んでもわかるとは思えません(「3分でわかる大人の雑学」では、どんな分野もわからないと思いますが)。聖書そのものを読まないと!

 自分の手を動かして、足を動かして得た知識は本物になります。情報はたくさんあふれていて、検索すればすぐに出て来る世の中ですが、本当に理解しようと思ったら、地道な試行錯誤は避けて通れないと思っています。紀元前のユークリッドが言ったという「学問に王道なし」という言葉は、非常に重みがありますねえ!

(夜、書いている横道です。上の動画、適当に拾って来ましたが、よく見ると、y=sinθと書いてあるのに、横軸はθでなくてxになっている。あきれた動画ですね。)



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