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ストコフスキーとシンフォニー・オヴ・ジ・エア

さて、まただらだらとクラシック音楽オタク話でも書こうかな。本日の仕事は夜にあるだけで、先ほどブログ記事の書きためも終わったところなのです。「好きなCD」の話です。

ストコフスキーがシンフォニー・オヴ・ジ・エアというオーケストラを指揮して正式にレコーディングした2枚組のCDがあります。購入したのは大学1年か2年のときで、いまから29年くらい前の話となります。ずっと持っており、ずっと愛聴しております。

「EMI」と書いてあります。私はCDのレーベルにはまったく詳しくないのですが、当時、このレーベルにレコーディングされたストコフスキー指揮シンフォニー・オヴ・ジ・エアの録音のうち、ベートーヴェンの交響曲第7番を除いたすべてが収録されているCDではなかろうかと思います。

シンフォニー・オヴ・ジ・エアは、NBC交響楽団ののちの名前だと聞いています。NBC交響楽団は、ストコフスキーも指揮者陣のひとりでした。このCDに入っているのはすべてステレオ録音だと思います。すべてだいたい1958年くらいの録音です。ステレオ録音という技術が開発され、各レコード会社がこぞって録音をしていた時代の産物だと言えると思います。

収録順に書きたいと思います。

まず、レスピーギの「ローマの松」が入っています。このCDを30年近く持っているということの証拠みたいなもののひとつがこれであり、1995年度の東大オケの定期演奏会の候補曲にこれは挙がっており、先輩からカセットテープを作るように言われた私は、このCDからカセットテープを作った記憶があるからです。結局、この曲は正式に選曲され、私は2番フルートで演奏いたしました。思い出深い曲です。いまでも「20分くらいでスカッとしたいな」と思うときによく聴く音楽です。数学の授業の開始前の音楽としても愛聴しており、目下、ストコフスキー指揮フィラデルフィア管弦楽団のカムバックコンサートのライヴ録音はパソコンに入れています。

ストコフスキーは、この作品はこの1度しか正式なレコーディングを残していませんが、相当に得意な曲であったようです。すぐ上に書いたフィラデルフィア管弦楽団ライヴをはじめ、いくつかのライヴ録音が残っています。しかし、この録音はいただけません。おおざっぱに聴けばいいのですが、細かいところでアンサンブルの乱れが聴けます。とくにこの作品は、同じNBC交響楽団で、トスカニーニが指揮した非常に有名なレコードがあります。これはひいきするから厳しめに言いますが、トスカニーニのほうがはるかにいい出来です。この曲を極めて精緻にやった身としては、ますますそう思います。でも、30年近く愛聴してきたCDであり、好きな演奏です。先述のフィラデルフィア管弦楽団カムバックコンサートのライヴ録音は文句なしであり、いつかそのカムバックコンサートライヴについても記事が書けたら、と思っています。

なお、ストコフスキーはレスピーギのローマ三部作では、この「松」だけをレパートリーとしたようです。「噴水」や「祭」をやった形跡はないのです。ただし「東方三博士の礼拝」のライヴ録音はあります(アメリカ交響楽団)。

それから、1926年くらいに、レスピーギ本人がフィラデルフィアに来て、指揮者としてこの「ローマの松」をやっています。ストコフスキーが呼んだのでしょうかねえ。

つぎが、ハチャトゥリアンの交響曲第2番「鐘」です。これもストコフスキー絶好調の様子がうかがわれる秀逸な演奏です。私はこの曲にもこの演奏でなじみました。ずっとのちに作曲者自身の指揮の録音も聴きましたが、冒頭がストコフスキーよりずっと遅くて驚いたということがあります。そしてそちらのほうが標準的であることもだんだんわかって参りました。この演奏も、細かいアンサンブルは雑であるということも言えるのですが、この「ハチャ2」の魅力を伝えてやまない演奏として、私は聴き続けています。ストコフスキーはこの曲もこの1回しか録音しておらず、かつこれは他のライヴ録音も残りませんでしたが、演奏会記録を見るとかなり得意な曲であったことがうかがわれます。ストコフスキーはハチャトゥリアンのよき理解者でした。祝典詩曲、ロシア幻想曲、交響曲第3番をアメリカ初演し、交響曲第3番はシカゴ交響楽団を指揮したレコードを残しました。秀逸です。私はそのときにライヴ録音されたほうの録音をパソコンに取り入れ、授業前の音楽のひとつとしています。

そして、1枚目には、あと3分未満の小品が2つ、入っています。フレスコバルディのガリアルダと、パレストリーナの「アドラムス・テ」です。いずれもストコフスキーの古い音楽への理解を示した秀逸な録音です。

2枚目に行きますが、ショスタコーヴィチの交響曲第1番です。これはステレオ再録音です。この曲もストコフスキーがアメリカ初演しています。前にも書いたと思いますが、交響曲第5番を書く前のショスタコーヴィチに理解を示すのはすごいことだと思います。ストコフスキーがアメリカ初演したショスタコーヴィチ作品は、この交響曲第1番と、第3番、第6番、第11番、それからユージン・リストをソロとしたピアノ協奏曲第1番となります。この「タコ1」は得意な曲であり、いくつかのライヴ録音が残っています。ベルリンフィルで取り上げたこともあります。(ビシュコフが、自分がショスタコーヴィチの交響曲第5番をベルリンフィルで取り上げる前にはこのオケは交響曲第10番しかショスタコーヴィチのレパートリーはなかった、と言っていましたが、そういうことはなく、こうしてストコフスキーは、交響曲第1番のみならず、交響曲第5番もベルリンフィルで取り上げています。)現代的な感覚からいうと、かなり標準を離れた演奏ですが、完全に曲がストコフスキーのものとなっており、非常に満足度の高い演奏です。

そして、ショスタコーヴィチの小品が2つ、続きます。ひとつはおなじみの前奏曲変ホ短調であり、ストコフスキーの編曲によって見事なオーケストラ曲となりました。この小品については脱帽するしかないと思います。そして、ムツェンスクのマクベス夫人の間奏曲が入っています。「ついでに録音した」という感じではありますが、これもちゃんとストコフスキーは手を抜かずに演奏しており、聴きごたえがあります。

そして、ブロッホの「シェロモ」です。チェロをソロとした曲ですが、ストコフスキーにとっては、フォイアマンをソロとしたフィラデルフィアでの録音についでステレオ再録音となります。これも「超得意」な曲と言ってよいです。いろいろライヴ録音も残りましたし、演奏会記録を見てもしばしば演奏しています。ストコフスキーはだんだんオケの首席奏者にソロを務めさせての演奏が多くなっていったように思えます。このナイクルグ(と読むのでしょうか。George Neikrug)もこのオケの首席奏者であったと考えられます。ブロッホもストコフスキーがひいきにした作曲家のひとりです。なお、私はフルートのレッスンでブロッホの「モーダル組曲」を習ったことがありますが、私の先生はこの作曲家を「ブロック」と発音していました。この作品のタイトルの「シェロモ」も、日本語聖書で「ソロモン」と言われているイスラエルの王のことであり、珍しくクラシック音楽で通称となっているほうが聖書の表記より本来の発音に近いという例になっています。

そして最後にまた短い曲が収録されています。チェスティの「お前は私を苦しめることはなかった」(いまあわててネット検索して邦題を見つけました。普段、気にせず聴いている証拠です)、そして、ガブリエリの「ピアノとフォルテのソナタ」です。後者は高校オケのとき、金管の仲間がやっていて、感銘を受けたものです。ストコフスキーはこのほか、自分で編曲した、木管楽器も入ったアレンジで、ロンドン交響楽団でやったライヴが残されています。

というわけで、学生時代から30年近くも聴いているCDです。このCDのおかげで親しんだ曲も多いです。東大オケのホルンのマニアックな友人に貸した記憶もあります(そのころから持っていたという証拠のひとつです)。私にとっては貴重な宝です。これらは私の青春そのものです。

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