「責任という虚構」を読んで①: 自由意志は存在しない
小坂井敏晶さんが書いた「責任という虚構」という本を、1ヶ月ぐらいかけてようやく読み終えました。
社会心理学や脳科学、哲学などの膨大な文献に基づいて「責任とは何か」を考察するという内容で、とても興味深かったです。
ただ、自分が普段触れる機会のない分野についてのかなり固めの文章だったこともあり、本全体をまとめた感想を書くには、まだ頭の中がとっ散らかり過ぎています。
そこで、自分の中で引っかかった内容をトピックごとにまとめていくことに決めました。
行為は無意識から生じる (リベットの実験)
この本を読み始めて一番最初に衝撃を受けたのが、人間には自由意志が存在しないという内容でした。
生まれてこの方、自分の行動は全て自分の意志で決めていると思い込んでいましたが、脳科学の世界においては自由意志が存在しないことが常識なのだと本に書いてあったのです。
その根拠として書かれていたのが、生理学者ベンジャミン・リベットによる実験。被験者に手首を持ち上げるよう指示し、そのときの脳内の動きを電気的に測定するという実験です。
この実験の結果、最初に手首の運動を起こそうとする無意識的な信号が脳内で生じ、その0.35秒後に手首を動かすぞという意志が、そして意志のわずか0.2秒後に実際に手首が動く、ということが明らかになったそうです。
つまりこのことから、行動は意志によってではなく、無意識(潜在意識)によって生じるものであると本の中では結論づけられていました。
無意識から生じた行為の責任はどこへ
行為が意志ではなく無意識から生じるとなると、その行為の責任をどこに持たせるべきかが急激に揺らぎます。
本の中で、行為の例として殺人が出てきましたが、殺人を犯す行為も無意識から生じていると考えたことがなかったので、自分の頭の中がぐっちゃぐちゃになりましたね。
そもそも責任というモノの正体について、これまで深く考えてこなかったんだなってことに気付きました。
責任についてどう考えるべきかは、また別の機会にまとめることにします。
本当に自由意志は存在しないのか
ここからは本の感想ではなく、自分の追加リサーチのまとめ。
本には断定的に「自由意志は存在しない」と書かれていたのですが、それが果たして本当なのか信じられなくて、ネットでいろいろ調べてみました。
すると、「自由意志は存在する」という記事をWIREDで発見しました。この記事にはリベットが追加実験を行ったことが書かれていて、意志と行為のずれの0.2秒の間に被験者が「拒否」を選択できた結果を根拠に、リベットも自由意志が存在すると考えていたと述べられています。
ただ、科学的な見解からは「自由意志は存在しない」とするのが一般的なようです。これまで特に意識してこなかったことがガラガラと音を立てて崩れて、とにかく驚きました。
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