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Running Biomechanics ~ランニングフォームを診る~

 先日、ランニングの様子を撮影したので、今回はそれを見ながら簡単なフォームの分析を行いたいと思います。撮影時のメニューは1周1kmのランニングコースを5周する5kmのペース走で、5周目のゴール手前の走っている様子を撮影しました。走行ペースは4分30秒 / km程度です。

体の上下動

 まず走っている時に体がどの程度上下に動いているか。一般に上下動が大きいと上に跳ねていて、地面を蹴る動作による前への推進力が上手く伝わっていないとされます。

下の図1がランニング時の上下動の様子。地面を蹴って上に跳ねている時と着地した時の腰の位置に簡易的に線を引いて、距離も計測してみました。その結果、だいたいですが10cm程度の上下動がありそうです。

あくまでも簡易的なものなので10cmという数字の精度は保証できないですが、動画で見ても上下動が大きめだなと感じます。上に跳ねているというよりは、特に着地時の膝の折れ具合と腰の沈み具合が大きいために、上下動が大きくなってしまっているのかなと思います。

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図1 ランニング時の上下動

ちなみにランニング時のある程度の上下動は有効に働くという研究結果もあるようです(下記論文など)。このような生体や運動力学的考察は必要ですね。じっくり勉強してみたい分野です。

Runners do not push off the ground but fall forwards via a gravitational torque, NICHOLAS ROMANOV, GRAHAM FLETCHER, Sports Biomechanics
September 2007; 6(3): 434–452

猫背

 現在練習を行っている中で特に気を付けているのは背中が丸まらないようにすることです。図2の画像のように疲れてくると背中が丸まってしまいます。こうなると骨盤は後傾し重心が後ろ寄りになってしまうので、スピードが維持できなくなります。

ですのでコアトレーニングも行っていますが、普段のランニング時はもちろん、私生活でも猫背にならないよう姿勢に気をつけています。

普段の姿勢は気をつけていないと、無意識に楽な姿勢をとろうとします。特にスマホを見たりパソコンで作業することが多いのですが、その時に腹筋にすこし意識を置いて、背筋を伸ばすのは結構大変です。

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図2 上体の様子

着地について 

 次は足の着地について。僕の着地は比較的ミッドフット寄りだと思います。この時はスピードが出ていない(1km4分台)のでかかと寄りになっていたと思います。また距離を走って疲労が溜まってくるとかかと寄りの着地になるのは走っていて分かります。

スピードが出ていればミッドフットで着地した真上に重心が乗りますが、前への推進力が衰えてくるため、重心の位置がミッドフットで着地した時に比べ後ろへ移動し着地の真上に乗らなくなってきます。その結果、かかとから着地しミッドからフォアへ重心を転がすように移動させるようになるのだと思います。

また下の図3の画像は着地時の様子ですが、足の外側(小指側)から着地しているのが分かります。特にミッドフットやフォアフットの場合は足のどの部分が始めに地面に着くかというのも人によって分かれてくるのではないかと、色々な人の走りを見て思います。足の内側(親指側)から入る人は少ないと思いますが、中央で着地するか、小指側から着地するかの大きく2種類で分けられるのではないかと。

これはシューズの裏を見ても分かるかもしれないです。僕は小指側が擦れて凹凸が無くなるので、着地の仕方が出ているのだと思います。

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図3 接地の様子

プロネーション

 着地の仕方も人それぞれで、なかなかどれが良い悪いというのは答えが出てません。その人にあった走法があると思いますし。

着地の位置がどこかだけではなく、着地からまた蹴り出すまでの足の微小な動きも重要な要素であり、特に着地時の衝撃に対する足首の傾きであるプロネーションという動作があります。

正確にいうと、プロネーションとは着地時の衝撃を分散するために足が内側に回転する動きです。着地すると足の内側方向に足首が倒れこむことで着地の衝撃を分散するようになっているんですね。スローで着地の様子を見てみると分かりやすいと思います。

このプロネーションは傾きが過剰であると様々な怪我の原因になると言われています。特に内側への過剰な傾きをオーバープロネーション。逆に外側への傾きをアンダープロネーションと言います。また着地時に足の倒れこみが少ないものをニュートラルプロネーションといい、他の傾きが大きい場合に比べると怪我がしにくいと言われています。

 このプロネーションは測定するのが難しいと思いますが、僕はスマートフットウェアのOrphe Trackを履いているので、なんとプロネーション角度が分かります!

最近のトレーニングでは基本このOrphe Trackを使用してデータを取っています。まだベータ版で測定値は参考の値ではありますが、どちらに傾いているかがしっかりと測定されています。

図4は今回のランでのプロネーション角度の測定結果です。今回は不整地も走っているのでその影響もあるかもしれません。ただプラスかマイナスかどちらに傾いているかの傾向はつかむことができています。僕の場合は外側に倒れこむアンダープロネーション気味であることが分かりますね。恐らく過剰な範囲ではないかと思いますが、左右で違いがありそうなのでそこも気にしていきたいです。

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図4 Orphe Trackによるプロネーションの測定結果(参考)

客観視は必要不可欠

 ざっとフォームの確認を簡単に行いました。走っている感覚も大事ではありますが、自分の体の動きを客観的にみることはフォームを改善したいのであれば必要不可欠だと思います。

またOrphe Trackのようなスマートフットウェアも登場し、走りをデータ化できるようになってきたので、そういったデータを活用し自分のランニングを分析することはとても重要であり、かつランニングを楽しくすることができるのではないかと思います。