13 探究するなら妄想力をつけろ!
「総合的な探究の時間」が始まって3年が経ちます。
「えっ?新しい学習指導要領の実施って令和4年度からじゃないの?」という方は、以下を確認してください。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/__icsFiles/afieldfile/2018/09/04/1408758_004.pdf
総合的な探究の時間では、下図で表されるように、
とされています。②~④は実際の学習活動として具体の姿も想像しやすいですが、①が問題ではないでしょうか。
実際、総合的な探究の時間の担当として、各校の先生方に聞き取りを行っているのですが、「課題設定に苦慮している」という声が多く聞こえてきます。
そこで、日常生活や社会に目を向けた時に湧き上がってくる疑問や関心に基づいた課題設定について考えるとともに、芸術科音楽(に限らないけど)でどんな探究的な学びが可能か考えていきます。(ここまで前置き、長い!)
想像より妄想が大切なんだよ…
「疑問」や「関心」って、どうすれば湧き上がってくるの?ということですが、一般的なJKを例にして、彼女の思考を手掛かりに考えていきましょう。
この探究的な学び(ん?学びですよね?)の根源的な部分には、「このモデルさんみたいになったら、あれしてこれして…」みたいな妄想(と言っては失礼か!)があるわけです。失礼を承知で妄想と書きましたが、「想像」ではなく「妄想」が重要だと思います。
妄想の解説にある「根拠もなく」というのが重要です。根拠は後からついてくるのです!
いや!むしろ、根拠を確保することこそ「探究」といってもいいでしょう!
音楽の授業では?
音楽の授業でも、探究的な学びは可能です。
ある年の授業開きの際、「翼をください」を歌いました。とても素直な歌声で二部合唱までサラッとできました。
その後、当時AKB48のメンバーだった岩佐美咲の歌を聴きつつ、「今日からみなさんはAKB48のメンバーです。メンバーとして『翼をください』を歌うとしたら、どんな声でどう歌う?」と聞きました。
そして、「どんな声とか説明しなくていいから、とりあえず歌ってみて!」と伝え、40人のJKが歌うと完コピ!!
今思えば、恐ろしいほどの再現率でありました。その後に確認すると、ちゃんと「ちょっと鼻にかかったような声」とか「フレーズの最後を杓うように歌うとそれっぽい」とか、意識してやっているんです。そこで、「そういう発声に関する身体の使い方とかフレーズの工夫とかを、高校でも勉強していくよ~」と伝えれば、最初の探究的な学びとしては合格点!
つまり、「私がAKB48のメンバーだったらどう歌うかな~???」ということについて、とにかく根拠は要らないので、あれこれ想像を巡らして歌ってみる、つまり妄想を基に活動することで、学習として成立しちゃうのです。
教科における探究的な学びは、妄想に次ぐ妄想によって、可能です。
この学年の授業を最後に、島田は現場を後にしましたが、1年間、本当に授業しやすい学年となったのは、この探究的な学びがベースにあったからだと思います。
他の教科ではどうなの?
高等学校における新しい学習指導要領では、国語科では「古典探究」、地理歴史科の「地理探究」、「世界史探究」、「日本史探究」、理数科の「理数探究基礎」と「理数探究」というように、「探究」と名の付く科目が多くあります。もちろん、「総合的な探究の時間」もあります。
特に、地理歴史科では、以下のように「問い」が重視されています。
時系列に関わる問い
「問い」は、思考を引き起こすトリガーになるので、重視されているのですが、「当時の人々はなぜそのような選択をしたのだろうか」なんて、完全に妄想です。もちろん、判断する材料として知識が必要となりますが、「なぜ?」を問うことは妄想を誘発させているようなものです。
「なぜ、キリンの首は長いのだろう?」と聞けば「食料となる木の葉を食べるために進化した」と高校生は答えますが、幼稚園児なら「長い方がカッコいいから!」とか「模様を自慢するため!」とか自由に考えます。そこから「首の短いキリンはカッコ悪いか?」とか「キリンの模様は何のためにあるのか?」とか、新しい問いとその解決に向かう学習がうまれます。
だから、「AKB48のメンバーとして『翼をください』を歌うとしたら、どんな声でどう歌う?」という「問い」により「妄想」させることで、教科の探究を成立させることができるわけです。
小さな探究の積み重ねが、生徒主体の「学び」をつくるのです。