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12 今だからやってみたい授業開き。

今日(3月1日)が卒業式という高校は多いのではないでしょうか?5年前の今日、島田も卒業生の担任として40数名の生徒達を見送りました。そして、その生徒達と一緒に学校現場から今の職場へと異動しました。

学校から離れた今だからこそやってみたいと妄想している、そして、高等学校において新学習指導要領が年次進行で実施されていく令和4年度がすぐそこまで来ているけど今すぐ準備できる「学びづくり」についてしたためておきます。

時節柄、年度初めの授業開きを想定して述べていきますが、ある程度学習が進んだ年度途中の方が、また音楽Iよりも IIでの実践の方が、現実的かもしれません。

結論1:教科・科目の目標と内容について、生徒と一緒に考える!

新年度が始まる4月は出逢いの季節。生徒も我々教員も新たな気持ちで音楽室に集まり、教科・科目のオリエンテーション、つまり授業開きとなります。(状況を見ながらですが)歌ったり、音楽を聴いたり、教科書やシラバスを見ながら1年間の学びの見通しを持ったりします。また、評価についての確認も重要となります。

でも、教科・科目の目標の確認はさらっと・・・もしかしたら、やらないかも。やったとしても、目標と学習活動とがどうつながるかについては確認しなかったな・・・

というわけで、「教科・科目の目標と内容について、生徒と一緒に考える!」ということから授業を始め、生徒に学びづくりを提案していったらどうかという結論です。以下、もう少し詳しく述べていきます。

子供が主役の学び

新学習指導要領の検討は、以下のように「子供が学びの主役」であるということを大きく掲げてなされてきました。これは「授業づくり」ではなく「学びづくり」という拙稿の大前提につながっています。

指導すべき個別の内容事項の検討に入る前に、まずは学習する子供の視点に立ち、教育課程全体や各教科等の学びを通じて「何ができるようになるのか」という観点から、育成すべき資質・能力を整理する必要がある。その上で、整理された資質・能力を育成するために「何を学ぶのか」という、必要な指導内容等を検討し、その内容を「どのように学ぶのか」という、子供たちの具体的な学びの姿を考えながら構成していく必要がある。
教育課程企画特別部会「論点整理」2.新しい学習指導要領等が目指す姿

教科・科目の目標

前提となる「子供が主役」を踏まえ、ここでは「音楽Ⅰ」の目標で具体的に見ていきましょう(教科の目標も大切ですけど割愛します)。

音楽の幅広い活動を通して,音楽的な見方・考え方を働かせ,生活や社会の中の音や音楽,音楽文化と幅広く関わる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1)曲想と音楽の構造や文化的・歴史的背景などとの関わり及び音楽の多様性について理解するとともに,創意工夫を生かした音楽表現をするために必要な技能を身に付けるようにする。
(2)自己のイメージをもって音楽表現を創意工夫することや,音楽を評価しながらよさや美しさを自ら味わって聴くことができるようにする。
 (3)主体的・協働的に音楽の幅広い活動に取り組み,生涯にわたり音楽を愛好する心情を育むとともに,感性を高め,音楽文化に親しみ,音楽によって生活や社会を明るく豊かなものにしていく態度を養う。
「音楽Ⅰ」の目標

「これが、1年後のみんなの姿だよ~」と言いながら、生徒に見せていったら、どんな反応をするでしょうか?

「・・・・・・・」
島田の想像(いや妄想)

はい、正解。そうです。おそらく1年生の場合は、無言の重苦しい時間がひたすら流れます。そこで先生が喋ってしまうと、「あー、先生中心に授業が進むんだ」的な雰囲気が生徒の中につくられてしまうので、絶対に我慢しましょう。じゃあ、どうするかというと、

「ここにある、『文化的・歴史的背景』とか『音楽表現を創意工夫する』とかって、小学校や中学校でなにか勉強してきた?」

と聞いてみる。そうすると・・・

「あー、『勧進帳』で歌舞伎が江戸時代に流行ったとかって言ってたかも」
「合唱コンクールで、歌詞に合せて強弱を工夫しました」
島田の想像(いや妄想)

いや~、小中学校の先生方、ホントにありがとうございます。皆様のお力で、高校の教員は授業ができます!っていうくらいの答えがあるはずです。もちろん中学校の授業開きでも、小学校での学びを振り返る形で可能だと思いますが、より多様な学校から進学してくる高校では、自己紹介も兼ねて、「隣の人と自己紹介し合ってから、一緒に考えてみて」と伝えると、必ず何かの答えは導けますし、他者理解にもつながります。

そこで間髪入れずに、例えば以下を提示して、「さっき、合唱で音楽表現を工夫したな~って思った人は、実は、アやイ(ウ)、ウ(イ)などを中学校でやってきたってことなんだよね。高校でもさらに深めていこう!」と伝えたいです。

 歌唱に関する次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 歌唱表現に関わる知識や技能を得たり生かしたりしながら,自己のイメージをもって歌唱表現を創意工夫すること。
イ 次の(ア)から(ウ)までについて理解すること。
   (ア)曲想と音楽の構造や歌詞,文化的・歴史的背景との関わり
   (イ)言葉の特性と曲種に応じた発声との関わり
   (ウ)様々な表現形態による歌唱表現の特徴
ウ 創意工夫を生かした歌唱表現をするために必要な,次の(ア)から(ウ)までの技能を身に付けること。
   (ア)曲にふさわしい発声,言葉の発音,身体の使い方などの技能
   (イ)他者との調和を意識して歌う技能
   (ウ)表現形態の特徴を生かして歌う技能
「音楽Ⅰ」A表現(1)歌唱の内容

結論2:教科・科目の目標と内容について、生徒と一緒に学びを想像・創造する!

ここまでで十分で、むしろ理想だと思うのですが、ここからはより突っ込み気味にやるとしたらという案というか、島田の妄想です。

例えば、先ほどの(1)歌唱の内容と教科書を照らし合わせながら、

「イ(イ)の内容ってどんな曲で勉強できそう?」

と生徒達に聞く。すると、生徒はこれまでの音楽経験を総動員して「言葉の特性」や「曲種」、「発声」について解釈し、それを学べそうな曲を教科書から探そうとします。

「言葉の特性ってことは、日本語とか英語とか?英語の歌載ってる?」
「発声っていうのはオペラの歌い方とかで何となく分かるけど、曲種って何?EDMとかKーPopとか?」
島田の想像(いや妄想)

こうして、どんな教材を使って学んでいくのかを考えながら、どんな資質・能力を身に付けていくのか?について、まさに生徒の視点で考えるというわけです。それは、確実に生徒にとって身近な楽曲を取り入れた学びとなり、資質・能力が身に付いた実感を強く得られるものとなるでしょう。

ちなみに、これは4月の授業開きだけでなく、学年の途中でも効果的だと思います。その場合も、生徒自身がどんな資質・能力を身に付けたか?についてメタ認知することが重要となるだろうと思います。

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