クレプト治療記その3
ご挨拶
はじめまして。コッシーと申します。
現在30歳で、妻子持ち、無職で窃盗症(クレプトマニア)の男です。
紆余曲折あって、現在人生のどん底にいると感じていますが、前向きに生きていくべく、noteで日々の思いや行動を記録していこうと思います。
どなたかの心の励みになれば幸いです。
近況報告
3週間ぶりの更新となりましたが、最近変化があったことといえば、10月に入ってからパートのお仕事を始めたことです。
ですので、正確に言うと、今は「30歳で、妻子持ち、パートで窃盗症(クレプトマニア)の男」になりますかね。
近所の老人ホームで事務員をしていますが、小さい会社なので、電話対応やデータ入力、経理のお手伝いから、お掃除などの雑用まで、幅広く何でもやっております。
ほぼ1年ぶりに働くので少し不安はありましたが、幸いなことに、社長や同僚の方に恵まれ、楽しく働くことができています。
ただ、在宅捜査はまだ続いている状況です。
本当であれば、会社に迷惑を掛けないためにも、不起訴が決定してから(起訴となった場合は裁判で判決が出てから)働き始める方が良いとは思うのですが、子供が保育園に転園したこともあり、日中何もせずにぼーっとしていると、よからぬ事を考えてしまいそうな不安がよぎるので、ストレスがかかり過ぎない環境で、少しの時間でも働こうと思った次第です。
捜査の方は、調書に一部訂正箇所があったとのことで、先週警察署に出向いて訂正箇所に捺印をしてきたので、書類送検はこれからのようです。
被害店さまへの弁済については、最後のお店と明日アポが取れたので、明日行ってきます。
その後は、警察、検察の方に手続きやご判断をお任せするという形になります。
以下の記事で、年末くらいには全て終わる予定とお伝えしていましたが、もしかすると年明けになるかもしれません。
とはいえ、気持ちの方は特に大きな浮き沈みはなく、穏やかに過ごせています。
3週間ぶりの通院
前回の記事で、翌々週にまたクリニックに行ってきます、とお伝えしていたのですが、お仕事の関係もあり、1週間遅めの通院となってしまいました。
そして、まさに今日行ってきましたので、通院後の電車の中でこの記事を書いています。
これがミーティングの意義
今日のクレプトミーティングはとても良いものでした。
これが、当事者同士でミーティングをする意義なのか、と実感できた会でした。
というのも、まさに今「また万引きをしてしまおうかな、、」という気持ちがふつふつと芽生え初めてしまい、不安で不安で堪らなくなって急遽ミーティングに参加された方がいたんです。
ミーティングでは、毎回違ったトークテーマが用意されており、もちろん今日も決められたテーマがあったのですが、急遽その方の話題について意見を交わすことになり、その時間がとても有意義だと感じたんです。
ミーティングの内容は非公開なので、架空のお話ということで書かせて頂きますが、、
その方(仮にAさんとします)は、常習的に万引きを繰り返した末、私同様に警察のお世話になったことで、数ヶ月ほど前からクリニックに通っておられる方なのですが、昨日までは、クリニックに通院しながら何とか再犯の気持ちを抑制できていたそうなんです。
ただ、昨日起こったとある出来事をキッカケに、急にスイッチが入り、「また万引きしてしまおうかな、、、」という感情が芽生えてしまったそうなんです。
そのとある出来事というのが、スーパーの無人レジで1点だけ商品のバーコードをスキャンし忘れ、その分の料金を払わずに帰ってきてしまったということなんです。
無人レジなので、自分で商品のバーコードをスキャナーで読み取るわけですが、買い物かごに入れた商品全てスキャンしたつもりが、1点だけ漏れていたようで、帰宅後レシートをみた時に発覚したそうです。
ですので、故意にやったことではありません。
ただ、Aさんがその時にまず感じたのが、
「あ、得しちゃった。」
だったそうです。
そして、直後に頭に浮かんだのが、
「今まで普通に買っていた分、損していた気がする。取り返したいな、、、」
そんな気持ちだったそうです。
ここまで聞いて、私はぞっとしてしまいました。
再犯が頭をよぎったAさんに対して、ではなく、同じ立場に立たされた時に、私もそう考えてしまうのではないかという自分自身に対してぞっとしてしまったんです。
あれほど抑制していた気持ちが、簡単に崩れてしまったんだそうです。
「盗っちゃだめ、盗っちゃだめ」と強く思っていた気持ちが、「別に盗ったって良いじゃん、なんでこんなに頑張ってんだろう、あほらしい、、、」とまで思ってしまっているとのことでした。
そんな考えがよぎった自分が怖くなり、来るつもりのなかった今日のミーティングに助けを求めてきたとのことでした。
未払いの商品はまだお店に返していないらしく、なんなら、ミーティングに来るまでに万引きしてしまおうかと思ったほどで、ミーティングの帰りも同じ気持ちになりそうで、とにかく怖くて怖くてたまらない、と訴えていらっしゃいました。
お話を聞いていて、とても心苦しかったです。
私もその気持ちが理解できるからです。
司会役の精神保健福祉士の方が、この一件について、参加者に意見を求めました。
似たような経験があると話す方もいれば、同情して心を痛める方、解決策を考えようとする方もいらっしゃいました。
私も思いを伝えました。
同じ立場であれば、私もきっと同じことを考えてしまうだろうということ。私は自分を信じられないので、家族に協力してもらいながら再犯防止に努めていること。
全員の話を聞いた後、精神保健福祉士の方がこう続けました。
「今日このミーティングに助けを求めに来たと仰っていましたが、残念ながら、私はあなたを助けることはできません。もちろん再犯して欲しくはありませんが、再犯してしまうかどうかはあなた次第なんです。私ができることは、『再犯しないために何をすれば良いのか』を自分で考えるためのサポートまでです。ミーティングもその一つです。色んな方の考えを聞くことで、少し視野が広がったり、自分なりに予防策を考えてみたり、また正直に感情を吐き出すことで不安な気持ちが少し軽くなったり、、。今ご自身の気持ちを話されて、それに対する皆さんの意見を聞いて、お気持ちはいかがですか?」
私は心配で心配で仕方がありませんでした。
今にも盗ってしまいたいという衝動にかられ、助けを求めてきたAさんが、みんなの意見を聞いたくらいで何になるんだろうと思ったからです。
ですが、Aさんは、
「私のために時間を割いていただき、ありがとうございました。ひとまずは、ご意見にあったように、無人レジには並ばず有人レジに並ぶことで対策したいと思います。それよりも、皆さんに私の気持ちを聞いて頂けたことの方が大きかったです。本当に助かりました。親にも友達にもなかなか相談できない内容なので、正直に気持ちを話せて、それに対して色んなご意見を伺えただけで、気持ちがだいぶ楽になりました。今にでも盗ってしまおうという気持ちも少し落ち着いた気がします。本当にありがとうございました。」
涙を浮かべながら、そう仰っていました。
それを聞いた私含め他の参加者も涙を浮かべていました。
そうなんです。
具体的な対策よりも、「正直に気持ちを吐露できて、それを誰かに聞いてもらえて、語り合える」という時間の方が、Aさんにとっては大きな助けになったんです。
この瞬間に、私はミーティングの重要性を感じました。
私は、不安を感じた時すぐ妻に相談できる環境にありますが、妻は万引きの当事者ではないので、本当の意味で気持ちを理解することは難しいです。
ですが、ミーティングの参加者はすべて当事者で、本当の意味で気持ちを理解できる方がたくさんいます。
まさに、今回のAさんのお話は他人事ではなく、自分事として感じられましたし、Aさんにとっては、参加者全員が、自分事のように話を聞いてくれて、理解してくれて、色んな意見を貰えたことが、何よりの心の救いになったのだと思います。
ミーティングは、単にアドバイスを求める場所ではなく、自分を理解してくれれる同じ境遇の方々と触れることで、それが心の救いになり、また万引きの抑止力にもなる、とても重要な機会だということを感じることができた日でした。
お近くに専門のクリニックがない方も、KA(クレプトマニア・アノニマス)というクレプトマニアの自助グループが各地域(全ての地域にあるわけではないみたいです)にあるので、お住いの地域のKAでミーティングに参加されてみたり、
元クレプトマニアの方が主催しているオンライン自助グループでもミーティングが開催されているらしいので、こういったものに参加してみるのも良いかと思います。
Aさんが心穏やかに生活できることを切に祈ります。
では、また翌々週にクリニックに伺おうと思います。
ありがとうございました。
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