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子供用ハイチェアからの転落と、医療の人たち。

先日、8ヶ月の息子が子供用ハイチェアから転落した。

そのことを通じて、親である私は心が張り裂けそうになるくらいの後悔と、恐怖と、息子への申し訳なさと、医療への感謝と。。沢山の感情を覚え、学びを得た。

世の中の赤ちゃんやパパママに、同じような思いを決してして欲しくなかったし、「8か月 ハイチェア 転落」など一つでも何か情報が欲しくて沢山検索していた自分の経験を踏まえ、このnoteを残しておこうと思った。そしてもしさせちゃった際には、対応方法の一参考になればと思う。

楽しい晩ごはんが一変。。。

その日もいつもと同じく家族3人で、楽しい晩ごはんを食べていた。沢山食べる息子の姿に、旦那も私も笑顔が絶えなかった。そして晩ごはんを食べ終え、いつもならそこで、子供用ハイチェアから息子を降ろし、おもちゃを広げて息子は遊びタイムに入る。しかしその日は、息子が大好きなイチゴがあったので、ハイチェアからは降ろさず、「イチゴ食べようね」と言ってそのまま座らせていた。もうだいぶハイチェアにも慣れていたし、いつも上手に座ってくれていたので、イチゴを食べる前に、旦那は食器を洗い、私は洗濯物を畳もうとしていた。そのときだった。

ドンっ。ギャーーーー。

振り向くと、息子がハイチェアから転落し、泣き叫んでいた。一瞬何が起きたのか分からなかった。すぐさま息子に駆け寄り、「ごめんね、大丈夫?!痛い?」と聞いてみるものの、息子は全く泣き止む様子がない。焦る私とは反対に、冷静に息子の様子を観察していた旦那が、「〇〇、右腕どうした?これ握ってごらん?」と息子にペンを持たせようとしたが、息子の右腕はぷらーんと垂れ下がり、全く動こうと(動かそうと)しない。「いつもなら高く腕を上げるのに…。なんで?!」と私はさらに焦り、その事実を受け入れたくなくて、「〇〇、ハイハイしてみよっか!」と息子が得意のハイハイの姿勢をさせてみた。その時には少し息子も泣き止んでいたが、ハイハイしようとした瞬間、力が入らなかったのか右腕から崩れ落ちるようにその場に転がった。息子は自分でも、自分の体に何が起きているのか分からないといった様子で再び号泣し始めた。

「病院行こう。」

旦那と私はすぐさま病院へ連絡。指示通りの場所へ車で急いだ。私たちは緊急外来にお世話になってしまった。

初めての整形外科、初めての脳CT

コロナ対策で院内への付き添いは一人のみ。私だけが院内へ行くことにした。その頃には息子も泣き止んで、落ち着いていた。先生へ転落した状況を伝えつつ、息子の様子を見てもらうと、「ここまでハッキリと私の方を見るし、呼吸も落ち着いているから脳への異常はなさそうと思います。でも心配だったらCTも受けられます。もし僕の子供だったら、ここまでハッキリしてたら受けないけど、どうしますか?」と聞かれ、私の頭は混乱した。正直、腕のことばかり考えていたので、「脳?!」となった。そうか、確かに転落だから頭を打ってる可能性もあったのかと恥ずかしながらそこでハッと気が付いた。「受けることに何かリスクはありますか?」と尋ねると、「特にないです。でも心理的ストレスはあると思う、でもそれくらいかな。」とのことだったので、念には念をでCTもお願いした。「分かりました、じゃあ受けられる準備をしておくので、先に整形外科の先生に診てもらいましょう。お母さんも大変でしたね。心配したでしょう。」と私の心配までして下さって、その先生の優しさに心が締め付けられた。そして整形外科の受診室へ通された。

「お母さん、大変だったね。心配したでしょ?大丈夫?」と整形外科の先生も私の心配をして下さった。「こうして見る限り、鎖骨周りも大丈夫そうだし、右腕も動かせてはいるから、少し痛みがあるだけで次期に動かすかもね。レントゲンを撮ってもこれだけの乳児の場合、ちゃんと映らないんだよね。だから2〜3日経っても様子がおかしかったら、小児科か小児整形外科を受診して下さい。」とのことで、整形外科の先生の受診は終わった。

レントゲン撮っても映らない、というのは素人の私には「そうなんですね、、」としか言えず(思えず)、それ以上ツッコむことはなく、先生の話を受け入れた。でもとりあえず、先生の受診の時だけでも、息子は号泣しながらも右腕を動かしていたので、私も「あ、動かす!」と少し安心し、様子を見ることにした。

その後、脳のCTも撮ってもらい、異常なしだったので、その日は家に帰宅した。でもやっぱり、帰宅後も右腕は全く動かしておらず、私の胸のザワザワは収まらなかった。それからすぐ、息子は病院疲れと強い眠気ですぐにぐっすりと寝た。

親が抱く「違和感」には慎重に

どうか息子が右腕を高く上げて動かしてくれますようにと心の底から祈りながら翌朝を迎えたが、やっぱり息子は右腕をだらーんとさせていた。「やっぱりどこかおかしい。ちょっと痛みが残ってるだけとは思えない。」という違和感で胸がザワザワした。そんな状態で息子はいつもより元気はなかったが、たまに笑ったりしてくれることが、ほんの少しの救いだった。

「やっぱりもう一度病院行こう。小児整形外科を得意としてる先生のところ行ってみよう。」

と旦那と朝一調べ、病院へ向かった。そこは街の小さな整形外科だった。昨日の状況を伝え、レントゲンを撮ってもらった。きっと痛みよりも怖さで息子は号泣していたが、先生はすごく優しく、息子をなだめながら細かく複数撮影して下さった。

「ここ見えるかな?右腕のとこ、誰が見ても分かるよね。骨折しちゃってるね。きっと大きな病院だと転落ってなるとまず真っ先に脳を心配するんだろうね。脳は異常なくてもね、腕は痛いよね。」

とレントゲン写真を見せて下さって、明らかに折れているのが私でも分かった。

「乳児の場合、レントゲンだと見えたり見えなかったりするから、同じ整形でも専門的な技術が必要なときもあってね。」

ということだったが、何より、骨折が原因で腕を動かしていなかったのかと分かっただけでもホッとした。

「ここからは治療法なんだけど。今、数分、右腕を固定して置いてみたけど、固定しててもやっぱり少し曲がっちゃうんだよね。いずれ骨はくっつくからいいんだけど、くっつき方の問題でね。真っ直ぐに骨がくっついてくれるのがベストではあるから、内側に入り込みながらくっついちゃうのが嫌だったら、中にワイヤーを通して治すっていう選択肢もある。でもここではそれはできないから、紹介状を書くから、また昨日の大きな病院へ行って、治療法を相談して下さい。もしどうにも決まらなかったら、また来て。乳児の骨の成長は良くも悪くも早いから出来るだけすぐ行ってね。」

とお話を受け、緊急外来でお世話になった病院へすぐさま電話して予約をし、翌日に再度行くことにした。

その日の夜、骨折を見つけて下さった先生から個別にお電話をもらった。「どうだった、、?病院に連絡ついた?見てくれるって?」と心配のお電話だった。「はい!明日の朝一、予約して診ていただけそうです。」とお伝えすると、「それは良かった。どう?少しずつ動かそうとしたりする?もし本人が動かしたがってたら制限しなくていいからね。ハイハイとかは体重が乗っかるからダメだけど、腕を上げたりみたいな動きはさせていいからね。」と。なんて優しい先生なんだろう。。。と感謝でいっぱいになった。先生が見つけて下さらなかったら、原因不明で落ち着くことはなかったなと、本当に良い先生に巡り会えた。

この日の夜、ちょっとずつ元気になっていた息子を寝かしつけ、スヤスヤと眠る顔を見ながら、私は後悔と恐怖で泣いた。もし明日手術って言われたらどうしようとか、CTで異常はなくても3日経ってから異常が出ることもあるって聞くしとか、呼吸が急に止まっちゃったらどうしようとか、色んなことを考えてしまい、親の自覚の至らなさを責めた。

再度、総合病院へ。医療の人たちの笑顔に救われる。

翌日、また総合病院へ出向き、整形外科を受診。レントゲンも撮ってもらい、骨折してることを確認していただいたが、「骨膜は破れてないから大きな心配はいらないです。念のため、固定をして検診で様子を見ていきましょう。」と先生はにこやかに笑って下さった。「いくつか質問です。お風呂は入っても大丈夫ですか?」「はい。大丈夫です。」「将来何か残るリスクはありますか?」「いえ、このくらいの怪我であれば、それはないでしょう。多少曲がって骨がくっついてしまったとしても、自家矯正力という自分で矯正しようとする力で真っすぐになっていくんです。なので心配はいらないです。」「本人が腕を動かそうとしたら動かさせてあげていいですか?」「はい。本人が動かそうとするのを制限する必要はないです。」「全治はどのくらいですか?」「乳児って本当に早くて、2~3週間もすれば新しい骨ができてくっつくと思います。もちろんそれ以降も検診で状態は見せてもらうのだけど、骨がくっつくというところだけを言うと、期間はそのくらいです。」

そんな質問をいくつか投げさせてもらい、終始穏やかに話してくださる先生の笑顔に安堵した。そしてその間に、まだ小さい息子が珍しかったのか、奥から数名の看護師さんも出てきて、「可愛い~!!」の嵐。笑 そんな看護師さん達の姿にも笑顔をもらった。手術と言われなくて良かったし、将来何か残ってしまうリスクもなさそう。。。生きた心地のしなかった数日間、やっと少し安心できた。

今も息子は右腕に包帯を巻いて固定しながら過ごしているが、日に日に元気になり、右腕を高く上げて遊びまわっている。子供の学習能力の高さや怖いもの知らずな挑戦心は素晴らしく、動かない中でも動ける範囲の中で一生懸命に遊ぶし、動かすことへの恐怖心もどんどんなくなっている。お座りの姿勢でぴょんぴょんと器用にジャンプしながら前進したりもする。少しずつ元気を取り戻す息子が見れて本当に良かった。

子を育てているつもりが、私が育てられている

ハイチェアから目を離してしまった自分の不注意を非常に反省しつつ、この数日間を振り返ると、息子が大事なことを沢山教えてくれたし、見せてくれたと思った。

まず、教えてくれたこと。

こんなに小さな体に怪我をさせてしまったが、もし頭を打っていたら脳に異常があったかもしれない。ハイチェアであろうとなんだろうと、当たり前だが、子供から目を離してはいけないし、自分が想像してなかったような動きをする可能性も高い。そう思うと、私の親としての自覚を改めさせつつ、命や脳への危険なく骨折だけで済ませてくれたのは、神様のご配慮だったのかもしれない。もし万が一、転落や転倒させてしまった際には、子供の様子をしっかり観察し、目に見えるところだけを気にするのではなく、様々な可能性を考慮して必要に応じて病院で診てもらう。親の感じる違和感は軽視せず、ネガティブに考えてすぐに動いた方がいい

そして、今ある子供の笑顔や健康は当たり前じゃない。ハイハイしたりご飯を食べたり笑い声が聞こえたり、そんな何気ない毎日が大変幸せで守らなければならない宝物なのだ。怪獣みたいに部屋を散らかしてても散らかせるほど元気ということだし、夜も元気で全然寝ないというのも大変だけどそれは幸せ疲れ。髪を引っ張られたり、おむつ替えで沢山動かれたり、そんなことすら元気な証で愛おしい。

そして、息子のことだけでなく、私のことまで心配してくれる人が家族以外にも沢山いた。医療の方々や保育園の先生、会社の方々。自分のことのように心配して声をかけて下さったり、仕事の調整をして下さったり、本当に感謝しかないと思う。このご恩は決して忘れてはいけない。

息子の怪我から、そんなことを教わったように思う。目の前にある日常をもっと大切に、しっかり守らなければならないということを。

そして、見せてくれたもの。

深夜問わず、丁寧に診てくれる医療現場の人の働く姿。このご時世でただでさえ大変だろうに、患者だけでなく、患者の親までも心配してくれて、心ある言葉をかけてくれたり。緊急外来で待合室にいたときも「私の息子も小さい時にホームから落ちちゃって、そのときは寿命が縮んだと思ったけど、今はもうすっかり元気に走り回ってるから、大丈夫ですよ。」と声をかけ、私の気持ちを落ち着かせようとしてくれたり。レントゲンで号泣する息子の撮影は大変だっただろうが、丁寧に時間をかけて撮影して下さったり。「ごめんね、こんなマスクして怖いよね〜。ママがいいよね〜。」と言いながら嫌な顔一つせず診てくれて、なんなら最後は手を振ってくれたり。

そんな医療で救う人たちに、息子の怪我だけでなく、私の心までも救われた。忙しくても心を無くさず、相手に寄り添ってくれる心の広さというか、どこかに少しの余裕を持っていて、そんな姿が素晴らしくて感動した。私は自分自身が会社で働いていたとき、こんな風に振る舞うことができていただろうかと自問自答せざるを得なかった。復帰したら、この医療で救う人たちを思い出し、相手に寄り添える人にならなくてはと思う。

息子の怪我がしっかりと完治するまで気は抜けないが、この経験を無駄にせず、活かさなければならない。改めて、私は息子に育てられているなと実感した。