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Melon Soda Float 開発の裏側 【Collection Note Vol.3-5】

301の拠点である、カフェバーとクリエイティブオフィスが融合したスペース「No.(ナンバー)」は、これまでカフェバーで提供してきたメニューを刷新します。
「/RE DESIGNING THE BASICS(リ デザイニング ザ ベーシックス = ベーシックなものを見つめ直し、独自の視点を提案していく)」をコンセプトに、シェフやデザイナーなど業界を超えたコラボレーションで新たなプロジェクトチームを立ち上げ、共に開発したメニューを発表していくメニューシリーズ『No. COLLECTION』がスタート。
本マガジンでは、「SUMMER COLLECTION 2021」のメニューブックに掲載されている内容を順次公開していきます。


“胃に入るときには溶けて液体になっている。時間が経つとその形でいることができない。寿命が短いからこそ、店という場所で食べることの意味がある”


―デザートがあることで、コレクションがひとつのコースのような輪郭を持ちますね。


もちろんコースのようにも楽しんでもらえますし、このデザート単独でも昼夜問わずコーヒーと合わせてライトに食べてもらうこともできる一品になっていると思います。



―今回のデザートは、どのように発想していきましたか?


はじめに、今回のデザートを考える上での前提となっている「アシェットデセール」という概念について説明する必要があります。これは「お皿に直接盛るデザート」という意味があるのですが、例えばケーキやプリンのようにパティスリーで買える種類のデザートをただお皿に乗せるのとは全く異ります。

レストランでデザートを出すことの意味にもつながるのですが、そこでは「お皿に盛られてからの時間の流れ」というものがセットで考えられます。別の言い方をするならば、「極めて寿命の短い、レストランでしか食べることのできないデザート」といったところでしょうか。「店におけるデザートとは何か」という問いが、このメニューのテーマのひとつと言えるかもしれません。


―パティシエと料理人では、デザートに対するアプローチが違うのですか?

全然違うようです。パティシエはもちろんデザートをつくる上での様々な技や知識を持っているので、純粋に美味しいデザートをつくるという意味では料理人に勝ち目はない。しかし、店での体験をひとつの流れとして捉え、デザートを食べる瞬間をどのような体験にできるか、という考え方であれば、料理人の可能性は広がります。

井口シェフは「デザートはサプライズ」という表現をしていましたが、心躍るような遊び心やアイディアを大切にする、それでいて、食事のあとに食べることも想定して、どこかほっとする瞬間にもしてあげることができる、そんなイメージで考えているそうです。

だとすれば、大事にしたいのは味そのものというより、食べたときに感じる素材感やテクスチャー (例えばムース状のものを口に入れたり噛んだりしたときの感触) だったりする。今回のデザートは色々な要素が入っていますが、胃に入るときには溶けて液体になっている。時間が経つとその形でいることができない。寿命が短いからこそ、店という場所で食べることの意味があるんです。


―なぜメロンクリームソーダなのでしょうか?


みんなが知っているものだし、懐かしさを感じさせる。それをNo.のような場所で、しかも料理人が開発しているってどういうことだろう、という期待感を出せるのではないかと考えました。多くの人の記憶にあるメロンクリームソーダは、昔ながらの着色料の濃い緑色と、人工甘味料の甘さじゃないかと思います。今回はフレッシュのメロン100%のジュースを使っているのですが、ナチュラルなメロンの味は甘いだけじゃなくて優しくて繊細さがあります。そこに、ブランマンジェ、ジュレ、マスカットを追加で組み合わせることで立体的な食感を生み、「ドリンク」ではなく「デザート」という解釈で生まれ変わらせたと言うこともできます。

また、3種類のお酒を使用していたり、エスプーマの泡の口当たりをつくったり、最後にライムの皮を削ったりと、カクテルのような雰囲気も出しています。そういう意味でも、No.らしいデザートと言えるのではないでしょうか。



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記事の全文が載ったメニューブック

「No. SUMMER COLLECTION 2021 CONCEPT BOOK」は

No. の Stores から購入いただけます。

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