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Zucchini 開発の裏側 【Collection Note Vol.3-4】

301の拠点である、カフェバーとクリエイティブオフィスが融合したスペース「No.(ナンバー)」は、これまでカフェバーで提供してきたメニューを刷新します。
「/RE DESIGNING THE BASICS(リ デザイニング ザ ベーシックス = ベーシックなものを見つめ直し、独自の視点を提案していく)」をコンセプトに、シェフやデザイナーなど業界を超えたコラボレーションで新たなプロジェクトチームを立ち上げ、共に開発したメニューを発表していくメニューシリーズ『No. COLLECTION』がスタート。
本マガジンでは、「SUMMER COLLECTION 2021」のメニューブックに掲載されている内容を順次公開していきます。


“それは言い換えれば、野菜というもの自体の存在を見直す、ということ”


―いわゆるメインとなる料理が「一切れの野菜」というのは、不思議な感覚ですね。

「メインらしさとは何か」という議論の中で、井口シェフは2つの視点を示していました。ひとつは、それが「何かわかる形」であること (一般的には肉や魚)。もうひとつは、「量」ではなく「質」のボリューム感を出すこと。これらを担保すれば、ひと切れの野菜だとしてもメイン足りうるのだと。

メイン以外は、人々に馴染みのあるスタンダードな料理の再考という発想でしたが、ズッキーニだけは、本当にシンプルに「野菜です!」という潔いメニューです。それは言い換えれば、野菜というもの自体の存在を見直す、ということ。

ズッキーニという食材は、今ではスーパーでも手に入るくらい日本でもポピュラーになってきていますが、多くの人は「脇役」としてしか食べたことがないのではないでしょうか。


―確かに、肉や魚と違い、ひとつの野菜を深く堪能するという経験はないかもしれません。

とは言え、ただ美味しい野菜をそのまま出すだけでは、料理人が料理として出す意味がありません。ズッキーニという素材の良さを引き出す視点として、野菜を焼くときに出る焦げの「苦味」に着目しました。一般的にはネガティブに捉えられるこの「苦味」を、中和して消すのではなく逆にポジティブに捉え、多層的な味のソースと合わせることで「美味しい焦げ」を味わってもらう、という発想をしています。


―ソースと組み合わせることで完成する?

そうですね。そういう意味では、余白のある一皿と言えるかもしれません。黒ニンニクのソース、焼き茄子のソース、赤ワインビネガーのバジルでマリネした桃、焼き茄子をパウダー状にしたもの (井口シェフは「野菜の灰」と表現してる) など、それら個々のパーツ単独でも甘味・酸味・塩味をバランスさせていますが、これらを自分で皿の上で自由に混ぜながら食べると、一皿としても「焦げ」も含めて甘味・酸味・塩味がバランスするように設計されている。

構造的余白とでも言うべきか、シンプルに見えて裏側では複雑な設計図が描かれています。また、ズッキーニには頭とお尻があって、頭のほうがジューシーで場所によって味が変わるので、そういう小さな発見も含めて「ひと切れの野菜」を楽しんでもらえたらと思います。


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記事の全文が載ったメニューブック
「No. SUMMER COLLECTION 2021 CONCEPT BOOK」は
No. の Stores から購入いただけます。

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