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【浅倉透pSSR「10個、光」】窓の向こう側に見つけたもの【ネタバレ感想/妄想解釈】

※2020年4月よりシャニマスを始めた新参者です。そのためキャラやコミュ解釈等が間違っている可能性があります。初心者の初見の新鮮な感想を認めておく意味でのnoteです。散文、個人の解釈です。
※ネタバレ感想。初見時ふせったーに実況しながら吐き出していたものに基づいた加筆補足修正咀嚼文です。

 降車ボタンから発される無機質な光。それをなぞる彼女は、何を見ているのだろう。

 2020年5月13日。ノクチル初のpSSRが実装された。ノクチルの中心人物であり、全ての始まりである彼女──「浅倉透」。RカードのW.I.N.G.優勝のコミュ時点で完成度の高いシナリオによって語られた彼女を、これ以上どう語るというのか。ガシャ実装直後に無事引き当てた私は、期待に震えながらクリックを進めた。

初めて「浅倉透」を知った時

 「浅倉透」は、掴みどころのない人だ。
 樋口円香からシャニマスを始めた私は、樋口円香のプロデュースを終えた後、自然と浅倉透のプロデュースをしていた。樋口円香という一人間の人生には、浅倉透の存在がいつもちらついていた。ちらつくどころか、染みついていた。だから、「知りたい」と思ったのだ。

 R【白いツバサ】浅倉透のプロデュースを終えた時、私は感嘆した。アイドルの独白。透明感のある情景は、「感傷」そのものだった。
 私の持つ「繊細」で「綺麗」なシャニマスのイメージは浅倉透のコミュを初めの方に見たからついたものである。
 私は浅倉透のコミュが好きだ。文体や表現、演出は美少女ゲームのようだと比喩されることもあるが、浅倉透のコミュは「素直」ではなく捻くれており、紡がれる文章の、言葉の上澄みをすくっただけでは「真意」を理解することはできない。否、「真意」を読み取らせる必要性がないのかもしれない。彼女の透明さ、不確かさ、それらを表現するには最適の文体なのだ。
 それは、【10個、光】でも存分に発揮されていた。これを解釈し読み解くのは「野暮」なのだろう。それでも私は彼女を知りたかった。だから、この先を読む人は、彼女を読み解こうとすることを、許してほしい。

1.【1こめ】/アイスコーヒーをもらう

 このコミュは「一生のうちにやりたい10のこと」のアンケートから始まる。大体の人はピンとくるだろう。【10個、光】の意味は彼女の「やりたいこと」、希望を描いていくシナリオなのではないか? 彼女の人間性を深く掘り下げるシナリオなのではないか?と期待する。それはここでのPも同じであり、透により深い「自分らしさ」を求めている。
 そんな期待とは裏腹に、彼女は本当に日常の些細なことをあげていく。

「いっぱい寝る……」
「映画とか観る……」
「……あ、ブラウス欲しい」

 巷では浅倉透という人間をあまりわからないというか、心がないなんて意見もよく見る。一方、この時点の私の彼女への印象は、“「自然体」に「ただそこに在るからいるだけ」の人”だった。大きな夢だとかやりたいことだとか、そんなものは彼女が生きているうえで、必要ない──「死なないから生きている」みたいな考えの人なんじゃないかなと思っていた。「刹那主義」とでも言うのだろうか(この表現が適切かはわからない)。

 Pが一生のうちだぞ?と聞いても、彼女は考え直すこともなく、答えた。

「明日宇宙人が攻めてくるかもしれないじゃん」
「今やりたいこと、今大事にしなきゃ」

 これこそ、彼女の本質だと私は思う。「未来」でも「過去」でもなく、「今」を重視している。
 彼女のこの考え方は、彼女が今を見ているだけで今まで生きてこれたということが大きく関わってくる。彼女のポテンシャルはいわゆる「天才」のようなもので、未来の不安や思考を抱えなくても、彼女は今まで生きてこれた。自然のままに生きていても、幼馴染がずっと傍にいて離れることはなかった。サポートコミュを見ている感じ、家族関係に問題はなさそうであり、孤独や不安を大きく感じたことはなかったのではないか。

 しかし、アイドルになった彼女は初めて、「てっぺん」を見て、目指し始めた。それは「今」ではなく「先」や「未来」を見ることである。それは、自分の力だけでは成し得ないことで、Pがそばにいるから、目指せることである。つまり、「今」を生きるには一人の力で十分だが、「未来」を生きるには一人では不十分だと実感するのが、浅倉透のアイドルとしての在り方であり、成長なんじゃないかと予想している。
 だから、Pの「透の分のアイスコーヒーをいれる」を「正解」としたのではないだろうか。自分だけの世界に、彼女はPという人間を入れたのだ。

2.【2こめ】/窓の向こう側にある生命

 バスの中で透が眠っていたところからスタートする。

「バスってすぐだから」

 眠っていても、立ち止まっていても、進んでいく。それは彼女の人生のようだったのではないかと深読みしてしまう。自分から能動的に動かなくても、彼女は不自由なく生きていたし、進んでいた。だけど、「目的地まで3つ先」と教えられた彼女は「あれ?」と自分の感覚とは違うことに、アイドルになってから(反対側から向かってから)「よくわかんなく」なったんじゃないかと思う。

「暗くなるとよくわからない」
「窓だけ光ってて、ずっと窓ばっかり続いてて」
「ここってこんなだったんだ──ってなる」

 夜になると、家の輪郭もなくなって、窓から漏れ出る灯りだけ、光だけが見える。それを彼女は「窓ばっかり続く」という。つまり彼女はそれを「光」としか見ていない。

 一方でPは「透たちが住んでるおかげで通るようになったから、このへんに人がたくさん住んでいる」ことを話す。その後の沈黙から、彼女はその光を「人間が生きている」証拠だということを、Pに言われて初めて知ったのだろうか。

 Pが降車ボタンを押したが、バスの降車ボタンを「押したかった」と話す彼女。それは、彼女が「自分の意思」で「自分の未来」を決めたかった、能動的に動きたかったということなのだろうか。停滞した日常の希望を述べていた彼女からは少し印象が変わった。

「──これもさ、こんな光ってたんだ」

 「とまります」の文字を指で確認するように触れる。それは、透がバスに揺られて自分の知らないうちに思い描いていない未来に進む前に、自分の意思でとまって未来を考えたいと思っているのかもしれない。

《閑話休題》
 朝会話で「窓」について話す会話がある。窓の外を見ている浅倉透さん、ぼんやりと外を見ているだけで……「鳥」が飛んでることにPに言われてはじめて気づくの……これは【2こめ】につながることではないだろうか?無機質な窓の奥にある生命を発見──「見つける」ことが彼女の成長の証なのだろうか。「向こう側に誰かいる」ことを見つけることが彼女が変わるきっかけなんだろう。
 (窓というモチーフでくもりガラスの銀曜日を思い出した。くもりガラスの銀曜日ではガラス窓の向こうにある見えないものを見たいと望むシナリオだったが、一方浅倉透はもう見えているものを認知することがゴールなのだろう。【くもりガラスの銀曜日感想】→https://note.com/2shinano9/n/n13a56a0b832d)

3.【3こめ】/「日常」でなく「特別」な存在

「君が止めなければ行かない理由はない」

 透が趣味の映画を見ているところから始まる。
 実は透の趣味が映画鑑賞であることに、私は結構吃驚した。なんというか……感情移入をするタイプには見えなかったから。彼女は自分ではない人物の人生を第三者視点で眺めるのが好きなのかなとその時は思った気がする。好きというか、第三者としてでしか見ない人。またアクションや演出などの現実に起こらないものを客観的に見て楽しむタイプなのだろうか。(私は感情移入をする人間なのであまりこの感覚がわからない。彼女は映画の何を見て楽しんでいるのだろう。)

 ただ、今回の映画の男の台詞に透は同調しているように思う。その時珍しく──初めてにも近しく、感情移入という感覚を覚えたのではないか? それを証拠に以下の台詞に彼女は反応している。

「君がいなきゃ、そもそもこんな面倒に巻き込まれてない」

 「Pがいなければアイドルになっていなかった」自分と重ねているのだろうか。

 キスシーンがくるから、と予告して。Pが「親とこういうの見ると気恥ずかしいよな」って振ると「親ならもう少しマシ」と言う透。ここで、Pを親ではなく、1人の人間として見ているのだなとわかる。
 (ここから少し樋口円香のPとしての意見)
 透にとって樋口円香は、親や身内の認識なのだろうなと思う。円香と映画を見てキスシーンが来るとなっても彼女は気恥ずかしいと感じないだろうし、円香は「特別」ではなく、「日常」なのだろう。一方で、Pは透にとって、ただ「唯一の人」なのだろう。

「聞こえないふりしないでよ、バカ…」

  透は女の台詞に少し微笑んで、映画を切る。彼女に対する言葉は「聞こえていない」のではなく、彼女が「聞こえていないふり」をしているだけなのだ。彼女へのレスポンスが薄かったとして、Pの言葉は確かに彼女に聞こえているのだろう。

4.【4こめ】/釣り合おうとする一歩

 ファミレスにて、Pと透の二人で打ち合わせをしているコミュ。Pが会計をしてくるからというと、Pに「いつもおごってもらっている」と透は言う。彼女は「経費」で落ちるという感覚がまだわからないのだ。それは自分が「アイドル」として仕事としてPと付き合っている感覚ではないということを表しているのだろう。
 自分のやっていることが、仕事として釣り合っていないと感じる。それはやはりまだ自分がアイドルという実感がわいてないのだろう。その実感がわくまでに透はどんなアイドル人生を辿っていくのだろうか。

「今度はワリカンね」

 彼女のこのセリフには、Pと個人的に話したい、遊びに行きたいという欲が出ているなと思った。彼女にとって「一生のうちにやりたいこと」は「Pの隣で歩きたい」ことも入ってるのだろう。

 そして、別の選択肢では彼女が奢られた食事に釣り合うように努力することを前向きに捉えている。それは彼女が「アイドル」として一歩ずつだが踏み出している証拠だろう。


 以上が優勝までのコミュ感想である。以降はTrueENDについての感想を述べるため、ネタバレを嫌う人はブラウザバックを推奨する。


5.【いつか】/「今」でなく「未来」を見つける

「星 いっこ光ってるなって」

 橙色と青色が混ざる空に、一つ光る星を見つける透。「夕方 おわっちゃう」と急ぐPと透はどこに向かうのだろう。二人は夕焼けの景色を見に階段を上っていく。

 光っているものが見えない昼ではなく、暗くて輪郭が見えない夜ではなく、そのどちらも見える夕方。光るものも、光らないものも見える、夕方。光るものも、光らないものも見える、夕方。その景色を見て、透は言葉を漏らす。

「全部見えるって感じ 世界中」

 決して街中ではなく、世界中。
 「ここは誰かのもの?」と問う透。世界は誰かのものかと言われたら、そうではない。誰のものでもないと答えると、彼女は安心したようにお礼を言う。

「誰かのものじゃないといいなって思っただけ」
「ここが」
「なんか、今が」

 この世界(浅倉透さんが置かれている状況や視線のこと)──つまり、Pの隣が誰かのものじゃない、アイドルになった自分が見ている世界が誰のものでもないことに安心しているのだろうか。彼女は「今」を誰よりも大切にしている人だということを、ここまでのコミュでよくわかっていたからこそ、この言葉が彼女の心からの言葉なのだろうとわかる。

 時間が経ち星が増え始めて、一つ光る星がわからなくなったとき、透はPに告げる。

「見つけてよ」

 「星」を見つけて──自分を見つけて、思い出してほしいと願う心なのだろうか。ゆっくり思い出してと言った彼女の願いは今も彼女の中にある。Pには他にも輝くアイドルがいて、自分だけではない。それでも、彼女は見つけてほしいと願う。

 しかしPが彼女を見つけることについては【2つめ】にて既に言及はされている。

「ちゃんと伝えられるかな」
「もう光ってるもののこと────昼の間もちゃんと光っているもののことを」

 Pは既に光っているもの=透をちゃんと見ていて、見つけていて、認知していているのだ。それをPは直接彼女に伝えている。うまく伝わっているかはわからないが、彼女は「聞こえないふりをしている」だけなのではないだろうか? Pが自分を見てくれていることを彼女は知っているのではないだろうか。
 それなら彼女の望みは何なのだろう?
 私はPが自分と共に「アイドル」として成長し続けていく自分を見つけ続けてほしいと願っているのではないかと思った。それは自分にもわからない「光」であるから。 
 わからないからこそ、彼女は一生のうちにやりたいことの一つに加える。

「さっきの星、見つけるって」

 Pの「いつになるんだろうな」という問いに「いつか」と返す。
 「でも見つけられる」と確信する。「誰のものでもないのなら」
 それは彼女にとっての決意のように感じた。

 一つ光る星が透にとって、何なのか。私はそれを「アイドル」としてちゃんと自覚し輝いている自分──「てっぺん」に到達する自分だと感じた。今はまだ「わからない」その自分を探しに、彼女は歩いていく。「自分」は誰のものでもない、自分だけが見つけられるもの。だから、安心するのかな。他人にとっての「正解」なんてないから。

 透にとって「今」ではなく「未来」を見ることはほとんど初めてのことだ。それは一人では成し得ないことだと彼女は理解しているように思う。だからこそ、Pに願うのだ。自分の隣で歩むことを。自分の先ではなく後ではなく、隣で、同じ視線で一生をかけてこの先の「未来」を歩むことを。
 そして、これからも自分が光ることを、教え続けてほしいのだ。

「俺はちゃんと見えてるからな 昼の間も光ってるもの」
「……光ってるものは光ってるんだ」


《閑話休題》
 思い出アピールが「見つける」について。「自分」を「見つける」という目標を見出した透のことなのだろうか。


総括感想・余談

 この文章は時系列にリアルタイムで書き記した初見の感想を整形して紡いでいる。そのため、今の解釈とはズレているところがあるが、それも込みで初見の新鮮な感想のため残しておくことにする。

 私が彼女に抱いていた“「自然体」に「ただそこに在るからいるだけ」の人”という印象から、一歩ずつ変化していくようなコミュだった。

 また、演出に力を入れていることは変わりなく、特に【2こめ】が私はお気に入りである。バスの中の無機質で独特の空気感は、現実であるはずなのに蜃気楼を見ているような心地がした。「光」を通して、彼女の価値観やものの捉え方を知ることができた気がしたのだ。彼女とPの会話は一見交わっていないようで、共通コミュと比べると、二人はお互いをまっすぐに見ているように感じる。すれ違うことがないように感じたのだ。それは二人の関係性の変化──進展と言ってもいいだろう。

 このコミュは彼女が「アイドル」として光るための一歩のように思った。共通コミュではPと彼女の関係性を深く描いていたが、それはこのコミュで「Pとともにアイドルとして歩むことを決意する浅倉透」を描くための礎だったのではないだろうか。共通コミュがあったからこそ、このコミュは深みを増している。

 彼女が自分のアイドルとしての光を見つけたとき、どんなことを思うのだろう。

 私は彼女のことを理解できていない。彼女のような人間は私の中にはいない。だからこそ、私は彼女の新しい一面を見つけ続けたいと願う。知りたいと心から願う。

 「いつか」アイドルとしての彼女を見つけるために。

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