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【三峰結華pSSR「NOT≠EQUAL」】その感情は言わないで【ネタバレ感想/妄想解釈】

※2020年4月よりシャニマスを始めた新参者です。そのためキャラやコミュ解釈等が間違っている可能性があります。初心者の初見の新鮮な感想を認めておく意味でのnoteです。散文、個人の解釈です。
※ネタバレ感想。初見時、実況しながら吐き出していたものに基づいた加筆補足修正咀嚼文です。


 彼女は怯えていた。そんな彼女が出した正解は、なんだったのだろう。

 2020年6月5日。私は覚悟を決めて【NOT≠EQUAL】の扉を開いた。

 もうこのカードについてはいくらでも語りつくされているだろう。それほど、有名なカードだ。
 だけれど、私の中の正解を出すために、この文を書き記した。

「三峰結華」と目が合った

 三峰結華というキャラクターを知ったのは、二年前。

 アイドルマスターシリーズ最新作として発表され、サービス開始前にガシャが引けたあの時だ。
 私はなんとなく毎日ガシャをしていた。特に本気で始めようとしていたわけではない。絵が可愛いから、アイドルが可愛いから。そんな理由でなんとなくガシャを回していた。

 そんな時、眼鏡で黒髪ツインテールの彼女と目が合った。
 私はその時、彼女に言いようもない感情を覚えた。今まで出会ったことのないキャラクターのように感じた。それは直感だった。
 私は眼鏡キャラクターに縁がない。眼鏡というものにさほど魅力を覚えない人間だ。だから、いつもなら眼鏡キャラクターを推すことは少ない。
 だけれど、彼女の紹介を見て、私は何故だか「彼女が好きだ」と思ったのだ。それは一目惚れだったのかもしれない。

 私は新しいコンテンツにハマることを恐れていた。オタク活動はそれなりに体力や精神力を使う。貧弱な自分を見て、私はサービスが始まっても登録だけしてゲームをすることはなく、遠巻きに彼女のことを見ていた。

 彼女の評判は聞いていた。「めんどくさい」「人間臭い」「他に類を見ないキャラクター」。そして、今回感想を述べるカード【NOT≠EQUAL】が出たとき、かなり話題になっていたことも知っている。「彼女の本質はここにある」と。

 彼女に出逢って二年が経った。私がシャニマスを始めたきっかけは樋口円香だったが、今日この時のために私はシャニマスをやっていたのだと思った。三峰結華を一目見たときに感じたあの「言いようのない感情」をやっと理解できたような気がしたから。それは正解ではないのかもしれない。だけれど、私は彼女が好きだった。好きな彼女を噛み砕きたかった。

1.【これが間違いなんだとしたら】/他者から見た「自分」

「──私が、私に見えないのなら」
「あなたの隣にいる私は今、どんなふうに見えてるんだろう……?」
「──なんて」
「……こんなこと、気づかなければよかったのに」

 そんな冒頭から始まる。
 彼女のしっとりとした語り口は、明るい面を見せる彼女とは異なる声色だ。この語りから入ることで、このコミュが普段とは異なる彼女を描写するということが理解できた。

 夜景の見える綺麗なタワー内、Pと三峰は仕事の下見として訪れる。

「綺麗」とつぶやく彼女の瞳には夜景が映り──そして、こちらへと視線を向ける。Pは思わず口に出したのだろう。

「……なんか、結華じゃないみたいだな」
「こうしてると、いつもと違って見えるよ」

 「え──」と三峰はその言葉に引っかかりを覚える。
 今まであまり語られなかった三峰の独白が続く。

「きっと何気ない一言のはず」
「けれど、私の心臓は思いの外跳ねた」
「……何気ない一言のはず、なのに」
「その時確かに……怖いと思った」
「──私が、私に見えないのなら」

 この時点で私はもう見ることに耐えられなくなって、紅茶を淹れに席を一度立った。彼女の心に踏み込むことが怖かった。しかし、覚悟したのだから、と読み進める。

「──ほら、今日はメガネもかけてないし、髪も下ろしてるだろ?」
「そうやって、その日の格好で雰囲気が変わるのは結華の強みだよなぁ」

 Pは気づかない。三峰の心中が穏やかではないことを。
 Pは、三峰を喜ばせることを今までしてきた。三峰に信頼されることを、Pはいつもしてきた。だがそれは、無意識的にしてきたのだろう。「何気ない一言」──それが三峰にとっては救いになっていた。
 しかし、その「何気ない一言」は救いになるのならば、逆に毒にもなりうる。

 三峰が格好を変えていることを、三峰自身は心の底から「強み」だと思っているのだろうか?私は今まで彼女を見てきてそうは思わなかった。
 確かに彼女は好きでファッションに関心を持ち、自分を着飾っているのだろうが……一方でこんな見方もある。
「メイクは女の武装だ」
 私自身この考え方の元、日常生活対人する際は、自らを着飾っている。
メイクやファッションは他人から好印象を持たれ、そして自分を護るための武装。あからさまに田舎者で芋っぽい女の子よりも、ガッツリ金髪でガッツリメイクをしている女の子の方が、「強い」と感じるのではないか?
 実際、その強いという印象は女を外敵から護ることも多い。たとえ、内面が外面通りの印象でなくても。

「あなたの隣にいる私は今、どんなふうに見えてるんだろう……?」
「──なんて」
「……こんなこと、気づかなければよかったのに」

 不安げな声で彼女は思う。諦めたように彼女は呟く。
 それがどうしようもなく、切なかった。

2.【動点Pとの距離を求めよ】/距離感と境界線

「……本当は、こんなわがまま言いたくないのに」
「──でも私、勘違いだけはしたくない……」

 三峰結華を語る上で、「距離感」や「境界線」は外せない。
 彼女は他者と自分の距離感を常に意識している。アンティーカの面々はもちろん、他のアイドル──そしてPも。きっと彼女はどんな人間ともある一定の距離を置いている。
 それは、臆病で傷つきやすい自分を護るための防衛本能なのだろうか?
 それは、他人を傷つけたくないと思う優しさと臆病さだろうか?
 いずれの理由にせよ、彼女は自分と他人の境界線を踏み越えられることを嫌う。踏み越えられると、いつも明るい印象の彼女が心からの彼女の姿ではないことに気づかれてしまうから。
 私は彼女の明るい一面──仮面を、嘘だとは思わない。それも含めて彼女自身だ。だが、彼女はいつも誤魔化す。他人との距離感を、空気感を気にする彼女は、本当の自分と他者を天秤にかけ、他者を選ぶ。そんな人間だと私は思っている。
 自己犠牲といえば聞こえはいいが、彼女の場合は臆病さからそう選ぶしかないのだろう。
 彼女は隠している。意図的に内面の自分を隠している。
 それに罪悪感を覚える気持ちは想像に難くはない。この世は「心の底から明るく、優しい人間」が美談として語られがちなのだから。そして、隠している自分を知られたら嫌われると思う気持ちも少なからずはあるだろう。
しかしそんな彼女はアイドルとして、アンティーカとしてデビューしたことで仲間を得る。
 他のアンティーカのメンバーは確信的ではなくても、彼女の人間性に気が付いているだろう。同時に彼女が踏み込まれたくないと思っていることも気が付いている。だからアンティーカはお互いに一定の距離を置く。彼女たちは皆優しいのだ。
 一方で、三峰にとって仲間とは別に「特別」な存在がいる。それがPだ。彼女のプロデュースをしていればわかるように、彼女にとってPは「特別」だと明言されている。自分が取り繕っていることを知り、それも含めて全てを許容してくれる存在。
 仲間にも明確に言葉にしないことを、Pには言葉にする。
 それは彼女が心からPのことを信頼していることがうかがえる。
 だからこそ、今回のコミュは起きてしまったのだろう。
 彼女の中で信頼と異なる感情の境界線があいまいになっているのだ。
 人間の他者へ抱く感情は一つではない。愛情の裏返しは妬みだったり、プラスの感情にはマイナスの感情が付きまとうとは言うが、それだけではなく、あらゆる感情が潜在的に発生していると私は思う。ただ、それが表面化しているか、自覚しているかは別の話だ。
 三峰の中に眠る感情が呼び起こされ、「気づいてしまった」からこそ、彼女は動揺してしまったのではないだろうか。

 あの一件以来、彼女はPの前でうまく取り繕うことができなくなっていた。「Pたん」と明るく馴れ馴れしく呼ぶこともなく、「プロデューサー」と不安そうに彼女はPの様子をうかがっている。

 流石にPも三峰の様子がおかしいことに気づいていた。

「最近、どうしたんだ?」
「……その。確かに、調子はよくないの っていうか絶不調。ご覧の通り隠せないしね」

 彼女はその原因をアンティーカのせいでも、仕事のせいでも、Pのせいでもないという。

「──ちゃんと! ちゃんと自分で解決するから! むしろ自分で落としどころ見つけなきゃいけないやつだから」

(結華はひとりで抱え込みやすい でも──……)
「……こういう時の三峰信用ならないだろうなぁっていうのは本人としても重々承知してるんだけどさ」

 Pは彼女のことを理解している。一方で、Pが思う「三峰結華」を、彼女も理解しているのだ。

 彼女の強みであり最大の弱みは「本人の立ち位置、第三者からの印象を自覚している」ということだ。
 アイドルとしてセルフプロデュースできる力があるのは、今までのコミュから容易にうかがえる。(直近ではストーリー・ストーリーでもそれは色濃く出ていた。)
 自分の戦える土壌や武器を理解しており、世間や大衆のことへの関心も深い。つまり、彼女は理知的に、商業的に売ることができるアイドルだろう。
 一方でこれは弱みと成り得る。彼女が自分の本心を隠しているのは「他者からの評価」や「他者との関係性」を気にしているからだ。彼女は自己評価や自己肯定感が低いことは指摘されているだろうが、自己肯定感が低い人間は「外」へ自分の存在価値を求める。
 彼女はその傾向が強く、他者によく思われたいと思う。だからこそ、彼女は他者の感性や思考を理解し、他者の望むように当たり障りのないように動くことができる。
 それは意図的でなくても、もう彼女には「癖」になっているだろう。無意識でもそんな動きを彼女はしてしまうのだろう。油断することもなく、精神を研ぎ澄まして。
 その行動は彼女の心労に繋がることだろう。だからこそ、彼女にとって油断しても許されるアンティーカやPの存在はガス抜きとなっているのだ。だから、彼女は今日も明るく振舞える。

 しかし、その前提条件が、崩れてしまったら……?
 動き続けるPとの距離がわからなくなってしまったら……?

「──……それから、もう一個わがままがあって」
「みんながいる時とか、しょうがない時はそのままでもいいから」
「……できれば『結華』って呼ばないでほしいなって……──」

 彼女は恐れている。名前を呼ばれるたびに感情が大きく揺れ動くことを、どうしようもなくPに全て吐露してしまいそうになる自分を。
 彼女はわからないのだ。「他者から自分がどう見えているのか」わかっているつもりだったのに、今、「Pから自分がどう見えているのか」わからないのだ。わからないことが怖いのだ。
 それは彼女の中にあるPへの感情が彼女自身を曇らせているから、だと予想している。
 あえて、私はその感情に現時点で名前はつけない。
 彼女がどう落としどころをつけるのか、見守っていたいと思ったから。

「──私が、私に見えないのなら」
「あなたの隣にいる私は今、どんなふうに見えてるんだろう……?」

 きっとこの問いが、今回の彼女にとっての心からの言葉なのだろう。

3.【雨の中(二度目)の正解をくれた】/信頼の確認

「──臆病、ビビり、意気地なし」
「……普段はうるさいくらいしゃべるくせして」
「こんな時ばっかり、だんまりなんだから」

 彼女が自分を客観視した語りから始まる。
 やはり彼女は他者から見た自分を理解している。そして、Pや他人がこんな自分を心配していることも理解している。それでも、口を閉ざす自分を歯がゆく思っているだろう。それは自分が臆病であることの証明なのだから。

(──……ほんと、勝手)
(勝手すぎて嫌になる…………)
「──私は、アイドル 三峰結華は、アンティーカのアイドル」
「だから、プロデューサーの隣にいる ……そういう枠の中にいるはずだったのに」

 彼女はアイドルが好きだ。好きだからこそ、その枠に自分をはめたがる。
 彼女のアイドルの輪郭や解像度はきっと他のアイドルよりもはっきりしていて、理想的なアイドルの動きを彼女は知ってしまっている。
 だから許せないのだ。自分がアイドルの枠から外れた感情を抱いていることを。

「もしかして、違ってしまっている? ずっと、そう見えないことをしてしまっていた?」
「……だとしたら──」
「わかんないよ、勘弁して……」

 彼女は「理解できない」ことが怖いのだ。今まで他人の感情や行動の真意を汲み取ることに聡かった彼女は「理解できない」ことが怖いのだ。突然盲目になってしまったような、そんな心地だろう。
 そんな中、救いの手のように雨の中、Pの声がする。Pは三峰を見つけ、安心する。

「……よくここがわかったね」
「いや、正直全然わからなくて」
「──え……」

 少し余談。シャニマス全体の話になるのだが、フィクションによくある「以心伝心」をシャニマスでは「偶然」としか描かない。手放しな綺麗事を描かない。
 ここで、Pが「全然わからなかった」と返したことに私はときめいた。他人の全てを理解できる、と無責任に現実味のないことをシャニマスは言わない。だから、私はこのゲームのシナリオが好きだ。

 Pは三峰に教えてもらった場所を色々探してやっとここにたどり着いたという。

「今日イチのラッキーだ」

 そう、他者と巡り合い心を通わせることは「ラッキー」でしかないのだ。
三峰が何故そこまでして探してくれたのか?と問うと、Pは答える。

「そんなの決まってる プロデューサーだからだ」

 プロデューサーにとって、担当アイドルの心配を聞くことは普通だし、そのために必要なことをするのも普通のこと。そのまっすぐな言葉を聞いて、彼女は笑う。

「──あはっ、そっか プロデューサーなら、普通のことか」

 彼女は安心したのだろう。「アイドル」としての自分が「プロデューサー」の隣にいることは「普通」のことだと、プロデューサーが曇りなき言葉ではっきりと言ってくれたことに。
 彼女が本当に怖かったのは、曖昧で臆病な自分の隣にはプロデューサーがいてくれないということだったのかもしれない。
 笑顔の仮面を被っていなければ、プロデューサーは自分を「自分」と見つけてくれないかもしれないと思ったことだったのかもしれない。

「どこにいても、プロデューサーは三峰を見つけてくれるんだな、って」
「それは、任せてくれ 約束する」

 力強い言葉を聞いて彼女はプロデューサーへの信頼を固める。
 彼女は笑顔で宣言した。

「三峰結華、通常営業に戻ります!」

 一度目、アイドルとして自分を見出してくれたP。
 二度目、アイドルとして自分を見つけてくれたP。
 彼女はPの言葉に依存しながらも、それを正解とする。
 それは、彼女なりの信頼だった。

4.【答え:アイドル三峰結華】/パートナー

「もう怖くない、怖がらない」
「──私たちはこれで正解って、思えるようになったから」

 彼女なりの落としどころを見つけたのだろう。自分はアイドルとして、プロデューサーの隣にいるということを。

 一話目と同じタワーにいる二人。お昼も綺麗、夜より遠くまで見渡せる感じ、と言う彼女は笑顔だ。一話目のときは夜だったから、お互いのことがぼやけてはっきり見えなかったのだろうと彼女は思っているのだろうか。
(思い出アピール名が「夜が煽るから」なのもあって)

 「デート」とからかう彼女の姿はやはり、Pにとっては久々のものだったようで。彼女の中のPに対する感情が「本当」になってしまうのかと不安で、からかうこともままならなかったのだろう。

 そんな時、幼い女の子が寄ってくる。三峰のファンだと言う。

「いつも応援してますっ……! 結華ちゃんもアンティーカも大好きっ!」

 幼さがあるからか、その言葉は噓偽りなく、彼女に届いたのだろうか。「アイドル」として応援されていること、「アイドル」として自分がいまPの隣に立っていることを彼女ははっきりと自覚する。

「……ふふ。これ、三峰との約束ね? だからまだまだ三峰たちのこと追いかけてきてほしいなー?」

 これは彼女にとって、Pにも届けたいと思っている言葉だろう。ずっと見つけていてほしいと願っているだろう。
女の子が去る前に質問をする。「隣の人は彼氏なのか」と。それは女の子特有の、何気ない質問。驚きながらも、彼女は優しいような諦めたような、決意したような笑みを浮かべて、否定する。

「──……ううん、違うよ」
「この人はプロデューサー 三峰のお仕事を助けてくれる大切な人なの」
「大事な──大事な、パートナーなんだ」

 今の彼女は「パートナー」の意味をきっと、「ビジネス」のものとして言っている。
 だが、きっと、あの夜には異なる意味の「パートナー」としての期待が、彼女の中にあったのだろう。だからこそ、確かめるように、ゆっくりと彼女はその言葉を発する。今はもう答えを出したのだと自覚するように。
 その異なる意味をここまで来てはっきりと言うのは野暮だと思うため、やめておこう。

 女の子が去った後、三峰はPに問う。「自分のファン対応はどうだったか」。それは自分が「アイドル」として立っていられたかという確認だろう。彼女は「アイドル三峰結華」としてプロデューサーの隣にいることを答えにしたのだ。たとえ、それ以外の感情が自分の中に眠っていようとも。

 優勝後のコミュで彼女はこう語っている。

「……いつか、三峰が思う理想のアイドルになるよ」
「憧れられるのに、相応しいアイドル、かな」

 きっとその思想は今も彼女の中では変わっていないのだろう。
 その証明が、この【NOT≠EQUAL】だったのだ。


 以上が優勝までのコミュ感想である。以降はTrueENDについての感想を述べるため、ネタバレを嫌う人はブラウザバックを推奨する。


5.【……頼ってもいいですか?】/境界線は越えないで

 熱が出て休むという三峰から連絡が来たところから始まる。
 Pは三峰が一人暮らしだったことを思い出し、お見舞いに行った。それに三峰は驚くが、Pは三峰の様子を見に来て、すぐに戻るという。
 そんな時、彼女は呼び止めた。

「あ……待って──」
「もう少しだけ、一緒に……おしゃべり……とか、してくれない……?」

 熱で弱っているからだろうか、甘えたような声で彼女は言う。もちろんとPは言う。彼女はきっと、Pを心から信頼しているのだ。「担当アイドル」として自分を見て、接してくれることを信じているのだ。Pはその信頼に無意識でも答えてくれるから。

 後日、お世話になったと申し訳なさそうに言う三峰。心細かったから嬉しかったといってから彼女はからかうように言葉を続けた。

「だからね、『プロデューサーが熱出したら三峰が看病してあげる♡』」

 恋人みたいに甘い台詞を彼女は吐く。恋人の定番シチュエーションを敢えて彼女は吐く。そして沈黙の後、彼女は本心を伝える。

「……とかじゃなくて、さ」
「……本当に嬉しかったから、この先プロデューサーが熱出したりしないように、見ててあげる。」

 きっと彼女にとって、甘い台詞も一種の本心でPとそうなることもやぶさかではないのだろう。
 しかし彼女は決めたから、Pの隣で見ていてあげるという。それが、アイドルとPの境界線だと彼女は理解しているから。
 そう、これは彼女の感情は関係ない。ただ、自分もそうしてもらったんだから。人と関わるうえで当たり前の行動だと。
 彼女は念を押すように、笑った。

「……お礼として!」

総括感想・余談

 このコミュを経て、三峰結華の表面上はほとんど変わっていない。

 Pとの関係性も、Pへの信頼も変わってはいない。だけれど、彼女にとって確かに必要な出来事だったと私は思う。彼女も作中で言っていたように「勘違いしたくはない」から。彼女は聡い人だ。このまま有耶無耶にしておくと今後に響いてくるとはっきり理解し、解決しようとした。

 彼女がアイドルとして成長するには必要な出来事だった。

 私が三峰結華に惹かれた理由。それを述べると自分語りになってしまうが、簡単に言うと、彼女は私と同じようなにおいのする人間だった。彼女と私の人生はきっと絶望的に異なるとは思うが、それでも彼女の心情が嫌になるほど理解できた。彼女は嫌になるほど生々しく「生きている」キャラクターだった。きっと、だからこそ彼女に惹かれる人が多いのだろう。

 私が三峰結華を「結華」ではなく「三峰」と呼ぶのは……私は作中のPのように彼女の境界線を踏み越える勇気がないからだ。作中のPのように「放っておいてほしい」と言う相手を追いかける勇気はないからだ。
 きっと、三峰も自分と同じような人間と出会っても、踏み込んだりはしないだろう。

 私が三峰結華に出逢った時に抱いた感情は言葉にしない。だけれど確かに自分の落としどころを見つけることができた。それだけでよかった。

 彼女がPへの感情を言葉にしないように。私もそうしたいと思ったのだ。

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