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【薄桃色にこんがらがって】少年少女を捨てられない私たち①【ネタバレ感想/妄想解釈】

※2020年4月よりシャニマスを始めた新参者です。そのためキャラやコミュ解釈等が間違っている可能性があります。初心者の新鮮な感想を認めておく意味でのnoteです。読むのは二回目です。散文、個人の解釈です。
※ネタバレ感想
※かなり長くなりそうなので連載方式にしています。投稿後加筆修正がされる可能性が高いです。

「大人じゃない」ならば、私たちはいったい何なのだろう?

 私は、桑山千雪という人間に愛を感じている。

 アルストロメリアというユニットは女子高校生の双子の大崎姉妹と最年長の桑山千雪の三人で構成されている。
 こう言われると、真っ先に想像するのは、桑山千雪が大人として大崎姉妹の間に立ってバランスをとる……イメージだろうか。
 私はそう思っていた。
 アルストロメリアは一見、ふわふわと可愛らしい、薄桃色の似合う女の子らしいユニットだ。
 私の趣向として、そんなユニットにはハマらないと思っていた。(私はカッコいい曲やビジュアルが好きだ。そのため、初見時はアンティーカが最も気になっていた。)だが、今は、アルストロメリアがユニットの中では最も好きになってしまった。
 それは彼女たちがただの「可愛い」ユニットではないから。
 ただの「優しい」ユニットではないからだ。

 その中でも私は桑山千雪が好きだ。
 桑山千雪の「少女性」にすっかり、魅了されてしまった。

「桑山千雪」の少女性

 今回は【薄桃色にこんがらがって】を取り上げる。
 私がこのコミュを初めて読んだのは2020年5月7日。
 イベントコミュが無料解放されていた時期にまとめて読んだのだ。
 時系列順に読んだため、【薄桃色にこんがらがって】を読む前に、【満開、アルストロメリア流幸福論ーつなぐ・まごころ・みっつー】【完録、クエストロメリア!~サイコロ編~】も読んでいた。


 上は浅い感想でしかないが、【完録、クエストロメリア!~サイコロ編~】の感想について、注目したい。
 私はこのコミュを読んで千雪が好きになった。それはこの一言が理由だ。

「──私、大人じゃないもの」

 私は彼女を誤解していた。最年長で母性を感じさせるような柔らかなファッション、見た目、喋り方。それは一見して「大人」のように見せていて、私は正直そういったキャラクターをあまり推さない。(私は少女が好きだ。)
 しかし、彼女の心は「少女」だった。そして、それを彼女自身が理解していることに驚いた。
 私は彼女の「少女性」に気づいた。大崎姉妹を見ることで、共にいることで、自らの「少女性」を理解するからこそ、彼女が優しいのだと気づいた。
 この二つのコミュを読み終わった時、気が付けばもう既に彼女の虜になっていた。

 最年長である大人らしさと、内に秘めた少女らしさ──そのちぐはぐさが、愛おしかった。

 だからこそ、このコミュ【薄桃色にこんがらがって】を読むことにかなり覚悟が必要だった。
 評判は聞いていた。どのコミュがおすすめかと問われてこのコミュ名が上がらなかったことはなかった。
 そしてなにより、キービジュアルとタイトルロゴを見て、私はすごく嫌な予感を覚えた。彼女の優しくも悲し気な微笑みの意味することを知りたくないような気さえした。

 しかし、私は彼女の笑みの理由を知るために読むことになる。
 今回は二回目としての所感も書き記しつつ読み進める。
 初見時には軽くTwitterで実況していたため、ところどころツイートリンクを挟もうと思う。


1.【予感】/『3人でアルストロメリア』という鎖

 甘奈の自己PRからこのコミュは始まる。
 ある面接を受けるのだろう。そのPRを聞いて、千雪と甜花は「合格」「完璧」と優しく、甘く褒める。しかし甘奈は不服だったようで「もっと厳しく」と二人にお願いする。
 彼女は不安なのだ。当日の面接はこんなに甘くないのだから。
 彼女はアルストロメリアの二人や環境を優しく甘いと理解している。

「──空っぽですね……何も感じません……!」
「──反対ごっこよ、甜花ちゃん……っ 反対だと思えば、嫌なことだって……!」
「────あ、挨拶のキレが……いまいち、です……!」

 『反対ごっこ』。千雪の提案したその方法で、二人は無理やりにも厳しくなる。メンタルが削れる……と言いながらも、甘奈は真剣に取り組んでいる。三人の仲良しさがここでもうかがえるだろう。三人の絆は深い。

 甘奈は復刊される雑誌のオーディションをシードで受けるのだが、その雑誌の名前を聞いた瞬間、千雪は困惑する。

「えっとー 『アプリコット』……みたいな名前で──」
「──……え?」

 それは彼女が知っていた雑誌の名前だったからだ。複雑そうな声を出す彼女。そして何かを感じ取る甜花。しかし千雪は誤魔化すように甘奈に応援の言葉をかける。甘奈は嬉しそうにする。そして二人に感謝をした。
 その時、言い聞かせるように千雪は言うのだ。

「──もう 3人で、アルストロメリアでしょう?」

 この言葉は、他のアルストロメリアのコミュでもよく出てくる印象深い台詞だ。
 彼女たちは3人で1つのユニットだということを、とても重視している。彼女たちは誰一人として欠けてはならない。そう、理解しているのだ。
 一人の仕事でも、いつも二人が傍にいる。
 そう思って彼女たちはいつも頑張ってきた。これまでも、これからも。
 甘奈は「みんなで出ると思って頑張るね……!」と二人に宣言する。

 その後、P視点の話へとなる。
 『アプリコット』のオーディション事務局からの外線。もちろん話は甘奈のことだ。最初は感謝の言葉を述べるPだったが、雲行きは怪しくなる。

「──そ、そんな話聞いてないですよ……! それじゃあ出来レ────」

 Pのその言葉だけで、大体察しがつく。
きっとこのオーディションでは「出来レース」が決定している。
Pは電話を切られた後、確認するようにつぶやく。

「──……『3人で、アルストロメリア』…………」

 この言葉は重い。3人の信頼の証であり、3人を繋ぐ鎖でもある。この後、どうなっていくのか……、その言葉を唱え、今まで3人で乗り越えたことが、壊れてしまうのではないか、と予感させる。どうしようもなく不安になりながら、読み進めると、千雪の視点へと戻る。

 『アプリコット』と名残惜し気に名前だけ、彼女は呟くのだ。


2.【アプリコット】/少年少女の憧れ、「好き」への未練

 Pがツイスタの投稿を見ているところから始まる。
 ティーンの子たち特有の投稿。甘奈はティーンの子たちの支持が大きい。
 多感な十代の少女たちはアイドルに憧れを抱き、みな右に倣うようにアイドルと同じ物を見につける。自分が憧れの存在に近づけることを期待する。

「かつて一世を風靡した『アプリコット』の復刊にふさわしいフレッシュな才能に期待しているんです!」
「甘奈ちゃんのような子たちに、ぜひとも次世代のファッション誌を支えていってほしいんですよ!」

 電話でグランプリの事務局に言われた言葉。ここで甘奈が出来レースでもうグランプリを取るということを察することができる。
 甘奈のファンはファッションに興味を持つような子が多いだろう。彼女の恵まれたスタイルや、明るい性格──そしてファッションへの姿勢は10代女子の憧れの的となってもおかしくない。
 だからこそ、アプリコットのスタッフは彼女に期待するのだ。
 だから、Pは「すごくいい話」だと理解する。それでも──

 一方で千雪の部屋に響くのは、パラパラと何かを捲る音。
 くすくすと笑いながら、一人雑誌を読んでいる彼女。
 彼女に似合うようなキャッチコピーを優しく懐かしむように読み上げる。

「よく読んだなぁ 『アプリコット』の特集……」
「小物も、世界も──」
「──『ファンタスティックになるための全部がある』……」
「大好き……」

 彼女は噛みしめるように、愛するように口にする。
 彼女にとって、アプリコットは彼女にとっての「全部」なのだろう。ティーンの子たちが甘奈を真似するように、一時期の千雪を構成していたのは『アプリコット』だったのだ。

 『アプリコット』を開いている彼女は夢見る少女だった。だから心からの言葉が漏れ出てしまう。この雑誌に対して、そして甘奈が『アプリコット』のオーディションを受けることに対して──

「いいな…………」


 日が変わり、いつもより荷物が多い千雪が何を持ってきていたかと言うと『アプリコット』の古い雑誌だった。彼女は甘奈の手伝いができればと持参していたのだ。Pは嫌でも思い出す。出来レースのことを。しかしごまかすように、話をする。

「甘奈のこと、考えてくれてるんだな」
「……っ は、はい……」

 彼女は戸惑うように同意する。しかしこの時の彼女にはそんな思いはほとんどなかったのかもしれない。
 彼女はただ、自分の好きな雑誌を皆に見せたいから、という少年少女特有の自己表現をしたかったがために持ってきたのかもしれない。
 「こんな古い雑誌よく持ってたな」とPに聞かれると、「たまたま」と答える彼女。彼女は自分が少女ではなく、仕事をしている大人だとPの言葉で目を覚ましたのだろう。どこか諦めようとしているのかもしれない。
 「名前しか知らなかった」と話すPは短い期間で知った上澄みだけの昔の『アプリコット』を千雪に教える。
 それに感化され、千雪は話し出す。

「海外の絵本の特集があったりとか 素敵なSFの特集まであったりとか……」
「でもそういうのが全部とってもガーリーな、独特な雰囲気を作り出してて……!」
「映画の特集号なんか表紙の建物がすっごく素敵で……! 自分がヒロインみたいな気分になって、ほんと──」

 そう語る彼女は本当に好きなものを語る少女そのものだった。
 自分の好きなものの全部の魅力を知ってほしくて、矢継ぎ早に飛び出すそれらは彼女の心の中にずっと残っていたものなのだろう。
 だからすらすらと彼女は言葉が出てくる。彼女はその時だけは、『アプリコット』の世界の住民だった。
 夢を見て、好きなものを語る。そんな彼女を見て、Pは言う。

「……ははっ、そういえばなんていうか」
「千雪、『アプリコット』の中に出てきそうだよな!」

 私はこの言葉を聞いた瞬間、「なんて残酷なことを言うのだろう」と思った。
 それは二回目読んでいる今はもちろん、初見でもそう思ったことを覚えている。Pが悪気はないのはわかっている。それは彼女にとっての最高の賛美だということもわかっている。
 しかし、「今」言うことが、全ての始まりだろう。「ズレ」の始まりだろう。
 それを、初見時にも感じた。

 昔、自分が好きだったもので、諦めさせられた経験がある人は、少なからずいると思う。
 私もその経験がある。
 好きだったゲームシリーズの新作情報の音沙汰がなくなったとき。
 好きだった友達と、親によって受けさせられた受験により泣く泣く離れさせられたとき。
 好きだったものを、捨てられてしまったとき。
 それは、唐突に訪れた。自分の覚悟も決められないまま。
 私たちは必ず未練がある。全て満足のいくような人生になっている人は……ほとんどいないだろう。
 だから懐古する。「あの頃は楽しかった」と。
 好きなものがあったあの時、世界はきらめいていた。
 好きだったものを語る時、言葉は多くなってしまう。
 多感な少年少女の「好き」は何よりも大きい感情だった。

 暗い画面に一言だけ書かれた言葉は、「好き」に未練のある私を唖然とさせた。(読むのは二回目のはずがもう既に泣いてしまった。机に突っ伏して、「あーもうおしまいだ……」と屍のようになっている。)
 昔諦めた好きだったものを思い出させるトリガーを引かれてしまったら、好きがあふれ出して仕方ないだろうに。
 千雪は、それを言われて、どう思うのだろう。

 千雪は驚く。しかしその後すぐに、アプリコットが新しい方向──つまり甘奈に合っている方向性で行くと聞かされることとなる。しかし、Pは隠せない。彼にはアプリコットの話題が出る度に、出来レの文字が浮かぶ。
 Pも千雪も、そして大崎姉妹も。この先考えなければならないのだろう。
 このオーディションのことを。

「千雪。メンバーのことを考えてくれるのは本当に大切なことだ」
「だけど、自分のことも大事に考えてくれ」

 Pは千雪に言う。それは人を思いやって尽くす彼女の姿をいつも見ているから、口癖のようになっている何気ない言葉だろう。
 しかし、今の夢見る少女の彼女には違う意味に聞こえてしまうだろうということが私には理解できた。「少女のように我儘であってもいい」と。

 一人になったPは思い返す。

「あれっ、聴いてないです? ここだけの話、甘奈ちゃんはグランプリ内定してますよ~」

 千雪が協力的にアプリコットの雑誌を持ってこようと持ってこまいと、もう既に決まっていたのだ。

 私はこのグランプリ内定について批判するつもりは一切ない。
 シャニマスは、芸能界のシビアな世界を描くことから逃げない。
 その姿勢を私は好ましく思っている。
 「ストーリー・ストーリー」でも、それは色濃く出ていて、テレビ局は視聴率のためにアイドルの捻じ曲げられた印象を放送していた。それは、彼らの正義だ。
 彼らにとっての数字は生きるためには必要なことであり、注目を集めるためにどんな手段も厭わないことは理解できるだろう。
 倫理的道徳的に嫌だと思っても、私は理解できてしまう。
 注目を集めることが正義だと、私も常々思っている。私自身、趣味の範囲ではあるがこうして文字を書いたり絵を描いたりなど作品を投稿している。その作品が見てもらえなければ、その作品は存在しないものと同じだと、私は思っている。たとえ、自らの欲求の放出のために書いていても、世に放つからには誰かに見つけてほしい気持ちはあるのだ。

 成功するために、注目度の高いアイドルを採用するのは、不思議ではない。
 そして、後々語られるが、「グランプリ」というお祭りで注目を集めようとするのも商業的に間違ってはいないのだ。それがたとえ出来レースだとしても。
 それは、彼らの正義なのだから。

 私はそういった表現を好ましく思ってはいるが、それはアイドル達に苦しんでほしいと思っているわけではない。それだけはわかってほしい。
 こんなどうしようもない世界で、優しく助け合い生きていて欲しいのだ。

 少年少女を捨てられない私たち②へ続く


余談 私は個人的にこのコミュがシャニマスの中で一番好きだ。だからこうして長文になり連載方式をとることにした。一番好きだからこそ一つ一つの話や言葉をかみ砕いてどうしようもない気持ちになってしまう。(くもりガラスの銀曜日の感想文のように全体を通してまとめることも考えたが、このコミュこそ語られ尽くしているであろうと考えたため丁寧に時系列順に感想を書き記すこととした)正直ここまでで二回は涙がこぼれた。私のメンタル的に連続で読むことは厳しいためここで一旦筆を置くこととする。

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