幻想へ
記憶の中の花をかいでみる。
麗しい髪が風にながれている。
君の背だけが、はっきりと夕焼けに浮かび上がる。
あぁ、そのままで、振り向かないで欲しい。
†
夢の中のあやふやさは、
たゆたいのように不均一でいい。
可能性に溢れた領域こそが、
わたしには美しいと思える。
おぼろげなシルエットに、
夕焼けがまわり込んだオレンジの輪郭。
溶けてゆく夏のうだる暑さに、
蜃気楼、君を幻想に奪ってゆく。
時間は流れるままに流れてゆく。
記憶のボックスに詰め込まれてゆく。
そこでは、いろいろなものが混ぜこぜになり、
どこにも存在し得ない美しい怪物ができあがる。
まっすぐに立っている背を眺める。
ゆったり下りる髪の流れを梳く。
記憶の風が吹いてきて、
やはり、君らしき粘土細工を、
めちゃくちゃに崩して、
さらってゆく。
*
KISE Iruka text 128;
to Fantasia.
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