ごうかく
ぼそり、君がたずねる。
「初夏は未完成の夏?」
入道雲はまだ見えないし、風はまだ涼しい。
夕暮れもパステルカラーでまだビビッドまでは彩度が足りない。
水溜りに反射する君の顔は、初夏のやわらかめの夕日に照らされる。
夕立、止んでステップ。
流れる雲、夜に歩く。
「未完成の夏だけどさ」
わたしが跳ねて答える。
「初夏としては一級品だよ。今日は」
ぞろぞろ隊列を組む蟻と、
アウトローぽいカラスの群衆。
季節は一瞬一瞬がブランド。
その日だけの様相と風体。
風は肩透かしのまま、夏にはまだ弱い。
でも、
かくいつ的な及第点は存在しない。
「いつも合格」
「初夏として合格」
人間風情の、
風情のないカクヅケ。
†
Kise Iruka text 111;
OK.
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