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防衛本能によって柔軟性を広げる

こんばんは、2nd GYMです。

突然ですがPNFストレッチングってご存じですか?トレーナーは覚えておかないと損するレベルの強力な技です。関節可動域を大きく広げる可能性があります。

PNFとは固有受容性神経筋促通法(Proprioceptive Neuromuscular Facilitation)の頭言葉からとった用語で、理学療法士や医師によって開発された手技で、主にリハビリテーションや理学療法士によって用いられています。

PNFは固有受容器とよばれる感覚器(センサー)を刺激することによって、神経筋機構の反応を促通する方法と定義されています。PNFストレッチングは、このPNFを用いたストレッチングの技法で端的にいうと「対象とする筋肉に一度強い筋力発揮を行うことで脱力を促し、より脱力した状態で筋肉を伸ばしていく」方法です。

関節や筋肉には様々な感覚に対する固有受容器があり、それらのセンサーからの情報が、筋肉が発揮する力を調整します。

防衛本能を生かしたPNFストレッチング

筋肉の長さを検知する筋紡錘がその一つで、一般的なスタティックストレッチ(静的ストレッチ)はこの筋紡錘を刺激し伸張反射を起こさないように伸ばすことによって効果が得られます。かっけの検査でおなじみの膝蓋腱反射は膝蓋腱を叩くことで大腿四頭筋が瞬間的に引き伸ばされることで起こる反応です。これは過剰に筋肉が伸びて損傷することを防ぐ体の防衛本能です。

PNFストレッチングで活躍するのはこの防衛本能を生かしたストレッチングといえます。ここで活躍するのは筋肉の末端の腱に存在する、ゴルジ腱器官という筋肉の張力を感じるセンサーと考えられています。筋肉が強い力を発揮すると、筋肉や腱、関節に強い力がかかります。それによる筋断裂などの障害を防ぐために、ゴルジ腱器官が強い力を感受すると筋力発揮を反射的に抑制します。この反射機構を自己抑制またはⅠb(ワンビー)抑制といいます。

基本的に人が運動を起こすときは、脳からの指令が脊髄、神経を通って動作を起こしますが、大脳からの指令なく、不随意的に引き起こされる自己抑制という自己防衛本能を逆手にとり、それによって弛緩した筋肉を引き伸ばす方法がPNFストレッチングということです。

となると、方法は強い抵抗をかけて筋肉自身に「これは筋肉が損傷するかもしれない」と思わせるために、パートナーが必要になるのですが、それがトレーナーの役割です。自分自身単独で行う場合は自己抑制を起こさせるほどに自分をだましてあげることが必要です。

方法は3種類知ってますが一番手軽なのがHR(ホールドリラックス)法でしょう。ハムストリングの静的ストレッチングにおいて、具体的には約6秒間抵抗をかけ、開放し再度伸ばすという方法です。

柔軟性はフルパワーによって得られる

私は以前、あるクライアント様で直立状態から靴紐を結べず、あぐらもかけないほどハムストリングや股関節周りの筋肉が硬い方を、週に1回30分のパートナーストレッチを3か月であぐらをかけるように変えられたのは、このPNFストレッチングのおかげであることは間違いないでしょう。

また関節可動域の増大だけでなく、肩こりなどの強い体のこわばりにも応用が効く上に、高齢者のリハビリや能動的に動くことを極端に嫌がるクライアント様へのアプローチとしても汎用性が高くおすすめです。

フルパワーは脱力から生まれる』ように、脱力もフルパワーから生まれるものだと思っています。余計な力が残っていることで疲れがたまったり、脱力できずに苦しむこともあると思うのですが、これはある意味で全力を出し切れていないことの表れではないかなと思っています。

自己防衛反応が起こる手前まで、自分の意志によって「全力」を出して初めて効果的に柔軟性が得られるのかもしれません。

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PNFストレッチングにおいて、本来は「全力で」抵抗をかけないと自己抑制は起こらないのではと思うのですが、だいたい全力で力を発揮しようとしても対象とする筋肉意外の部位に力が入ってしまうものです。

実際の力量は7割程度で十分かなという印象です。リハビリの現場で行う極めて弱い筋力発揮でも十分可動域の改善はみられるようです。ストレッチにおいては筋力発揮後の脱力状態を作れるほどの力を出せればいいです。

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