【note64枚目】 カウントダウン/真梨幸子

 外商さんのイメージ悪くならない?大丈夫?と、フィクションだとわかっていても心配になる凄腕・薬王寺涼子。顧客の「望み」を痒いところに手が届き、痛いところには触れずトドメは一瞬。そんなキレ味を感じた。この人が黒幕で、また主人公はころころ転がされて地獄を見るのかなー?と思いきや、今回はそうじゃなかった。

 「デッドライン」

 締切や、もう動かせない最終期限を表す言葉として馴染みを感じるが、今回は「死の時期」と読む。「生」の終着点を知った時、この世に残して死ねるかという最後の執着が湧き上がる、その恐ろしさを感じる1冊だった。

 主人公はたぶん無自覚失礼な生き方をしてきた女なんだろう。自分の意図してないところで人に失礼を打ち付けて、その分自分の心に澱作る。意図してないから当然気づけないし気づかない。人にかけた迷惑のことは覚えて無くて、人への恨み、妬みがどんどん降り積もっていく。

 目を背けたくなるほど他人事じゃなかった。

 毎回、真梨幸子の本には自分がいると感じているけど、やっぱり今回もそうだった。

 人の親切が自分の恐怖に変わる認知のズレとか、落ち込んだり、怒りになったり、悲しくなったりするってわかっていても他人を見て比べてしまう。勝手に羨んで、勝手に嫉妬して、勝手に落ち込む。

 人物相関図がつながっていくエピローグは後付け感があるのに、それを踏まえて前からざっと読み直すと………って構成には鳥肌が立った。

 薬王寺涼子目線のストーリーも読んでみたい。

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