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まかぎ祭の研究 - データからみる10選に選ばれる曲の傾向

はじめに

『まかぎ祭』とは

この記事は、12月26日(日) 00:00〜23:59にてニコニコ動画で開催された作曲イベント『イラスト統一祭 - まかぎ祭 - 』についての記事です。
詳細は以下を御覧ください。
Youtube告知動画:https://youtu.be/sUHhkaL4Pe8
TwiPlaイベント詳細:https://twipla.jp/events/489700

フライング組も含み、期間内に集まった楽曲は合計207曲。延べ19時間に及ぶ同時視聴生放送を完走し、大団円を迎えたまかぎ祭。
その後、ボカロ文脈にある「今年の10選」の延長で、「まかぎ祭10選」の選定機運が高まった。208曲を1日で完走した栗田氏の10選公開を皮切りに、徐々に選評が増えていった。

人の感性はさまざまで、誰もそれに干渉はできないので、それぞれの10選には多種多様な楽曲が並んでいる。が、よく見てみると、明らかに何度も選出されている楽曲が複数あるように見えた。たくさんの人の心にインパクトを残したということだ。すごい。

この記事の目的

前置きが長くなりましたが、この記事は「"祭"というシチュエーションにおいて、より多くの人の心に爪痕を残すためにはどうしたらよかったのか?」を考えるにあたり、以下2点を分析する記事です。

・まかぎ祭参加楽曲全体の傾向 をデータから
・まかぎ祭10選に選ばれている楽曲の傾向 をデータから

今後も自分が好きだと思う楽曲をこしらえるという軸は変わらないのですが、たとえばアレンジに迷ったとき、より聞いた人の心に残る方向に舵を切るための手がかりが掴めたら、という思いで手作業をしていた内容を、意外とボリューミーになったのでいっそのこと記事にするか、ということで体裁を整え公開しています。集計ミスなどあるかと思いますがご了承ください。興味があったらシートのデータを落として手元で触ってみてください。

そして、この記事に答えはないので、みなさんがそれぞれの楽しみ方・読み取り方をしてもらえたら幸いです。
※2022.01.02追記:unuiさんが『まかぎ祭参加曲歌詞分析』の記事を公開されています。併せてどうぞ!

データからみる『まかぎ祭』

①全体の傾向

傾向というのはいささか乱暴かもしれませんが、まずは207曲のディテールから見ていきましょう。集計タイミングは12月31日0:00ごろですが、常に変動しておりあくまで参考値です。

①-1.動画データ
 平均値:再生数 779、コメント数 17、いいね数 30、マイリス数 16
 中央値:再生数 230、コメント数 13、いいね数 22、マイリス数 12

まずは動画の数値データです。
上記については、すでにファンがついている/いない、フォロワーの多い/少ない等に依存する数字のため大きな意味は持たないと思っていますが、祭全体でみたとき、これといったバックグラウンドを持たない人ほど祭効果によって多くの人に視聴してもらえる環境にあったように見えます。
ちなみにじぶんの楽曲は再生数 177、コメント数 13、いいね数 20、マイリス数 14で、ホームランバッターから見れば凡打に映りますが、活動歴1.5ヶ月、参加当時のtwitterフォロワーが50という殆ど一見さんの状態から祭の効果でたくさんの方に聞いていただいた格好です。全曲巡回しようと思えばできる「ほどよい規模感の祭」であったため、バックグラウンドのないクリエイターほど得をしていると感じます。改めて、ありがとうございます。

①-2.シンガー分布
 初音ミク:34.6%
 可不:19.2%
 鏡音リン/GUMI/小春六花/インスト:2.9%…..

①シンガー集計 シートより抜粋

続いてはシンガーの分布です。
そもそもの市況感といえるのかもしれませんが、this is VOCALOID, 初音ミクが全体の3分の1で首位に、そして可不が2番手につけている格好です。ここについては皆なんとなくそう思っていたと思うので、多くは語りません。
面白かったのが3番手以降で、初音ミク・可不以外の(広義の)ボーカロイドはほとんど同率に近い形で結果が割れており、参加シンガーのバラエティでみたとき非常に網羅的であった点です。じぶんはボーカロイドに対する見識が浅く、網羅がどこまでを指すかの定義付けは難しいですが、総参加シンガー数は33種類と、偏るというよりは散らばっているように感じます。

①-3.1曲の長さ
 平均値:3:22
 中央値:3:25

1曲の長さですが、こちらについては3分半程度ということで一致しました。1分以内もあれば15分もあるという混沌のなか、だいたい3分半というのが「ちょうどいい」のひとつの基準なのかなと。

①-4.投稿時間帯
 フライングが1曲
 0:00ちょうどの投稿が64曲(30%)
 0:01〜0:59内の投稿が41曲(20%)
 1:00〜11:59内の投稿が25曲(12%)
 12:00〜19:59内の投稿が31曲(15%)
 20:00〜23:59内の投稿が44曲(21%)

投稿時間帯ですが、0時台に過半数の105曲が投稿されています。
一方、20:00〜23:59のいわゆる「駆け込み投稿」の時間帯にも44曲が投稿されており、投稿〆切RTAの参加者も多かったのかもしれません。

他にも切り口はたくさんあるかと思いますが、記事のカロリーが増え続けているので一旦ここで止め、10選ピックアップ曲の傾向に移っていきましょう。

②10選ピックアップ曲全体の傾向

はじめに、そもそもの集計方法ですが、twitterにて「まかぎ祭10選」の結果を表明している30アカウントについて、目視で集計したものです。10選に絞られていない場合や、鍵アカウント等の投稿は集計不可とし除外しています。

この記事の本題は「10選に何度も登場する楽曲にはなにか傾向ってあるのかな?」という疑問なのですが、それに進む前に、いったん「まかぎ祭10選に1票以上の得票がある楽曲」に絞って、同じ項目について再度見ていこうと思います。
12月31日03:00頃の時点で、対象楽曲数は112曲でした。

②-1.動画データ
 平均値:再生数 613(↓)、コメント数 23、いいね数 39、マイリス数 23
 中央値:再生数 325、コメント数 17、いいね数 31、マイリス数 18

動画の数値データについて特記すべきは、平均再生数のみ減少している点です。個人がそれぞれの「好き!」を発表するため当然なのですが、必ずしも再生数によって評価がなされるわけではないという形に見えます。

②-2.シンガー分布
 初音ミク:31.1%
 可不:22.6%
 結月ゆかり/小春六花:4.7%

②10選集計_all シートから抜粋

次にシンガー分布ですが、小さな誤差はあれど、分布自体はほぼそのままです。多様性!

②-3.1曲の長さ
 平均値:3:25
 中央値:3:26

1曲の長さについてもほぼ変化なしです。

②-4.投稿時間帯
 フライングが1曲
 0:00ちょうどの投稿が40曲(36%)
 0:01〜0:59内の投稿が19曲(17%)
 1:00〜11:59内の投稿が7曲(6%)
 12:00〜19:59内の投稿が19曲(17%)
 20:00〜23:59内の投稿が26曲(23%)

投稿時間帯について特筆すべきは、0:00ちょうど投稿組の割合が6%増加している点です。


③10選ピックアップ曲のうち、頻出楽曲の傾向

お待たせしました、いよいよ本題です!「まかぎ祭10選」に頻繁に選出される楽曲について見ていきましょう。

今回は、twitterにて「まかぎ祭10選」の結果を表明している30アカウントの結果に対して、6票以上を獲得している楽曲、つまり5人に1人がイイと思っている楽曲を対象としました。
12月31日03:00頃の時点で、対象楽曲数は11曲でした。

③-1.動画データ
 平均値:再生数 1548、コメント数 52、いいね数 64、マイリス数 41
 中央値:再生数 887、コメント数 40、いいね数 58、マイリス数 40

動画の数値データですが、11曲のうち6曲が3桁再生、かつそのうち4曲が500再生未満と、再生数と個人評価は比例しない度がより一層高まったように見えます。ざっと手勘定で、50人に聴いてもらえれば、それを良いと思ってくれる1人に出会える可能性がグッと高まるということです!大丈夫だ!いい曲をつくってファンを増やしていけ!

②-2.シンガー分布
 
初音ミク:27.3%
 可不:27.3%
 鏡音リン/鏡音レン/琴葉/小春六花/作者歌唱:9.1%

③10選集計_top シートより抜粋

続いてシンガーの分布ですが、ここでも大きな変動はなく、むしろ注目したいのは、「初音ミク」「可不」の2大シンガー以外もまんべんなく選出されていることです。
これはつまり「初音ミクだから好き、可不だから好き」というバイアスがあまり掛かっていないということであり、あなたが好きなシンガーで"良さ"を伝えられるということです!
じぶんはまかぎ祭でただ一人「めろう(NEUTRINO)」で参戦しましたが、"良い"の基準はシンガーによらないというこの結果をみるに、もっと良い曲を作れていればたくさんの人の心に残ったということですね。悔しい!

③-3.1曲の長さ
 平均値:3:41
 中央値:3:51

1曲の長さですが、これまで3分半程度だった曲長が、4分に近づいています。とはいえ大きな差異があるわけでもなく、曲の長さについてはあまり考えなくてよいかと思います!流行りの曲が3分を切っているから2分以内に収めなきゃいけないとか、TikTokに上げるわけでもないのにソワソワしなくていいみたいです!

③-4.投稿時間帯
 0:00ちょうどの投稿が6曲(55%)
 0:01〜0:59内の投稿が4曲(36%)※すべて0:01
 1:00〜11:59内の投稿が0曲(0%)
 12:00〜19:59内の投稿が0曲(0%)
 20:00〜23:59内の投稿が1曲(9%)

投稿時間帯について特筆すべきは、11曲のうち10曲の投稿時間が「0:00」と「0:01」であったということです。
これは明確に何らかの傾向があると思っていて、仮説としては以下が考えられそうです。

仮説1. 「0:00」「0:01」の投稿者は予約投稿やスタートダッシュ同時投稿ができるほど準備万端だった方々であり、制作過程で時間に追われていない——つまり、当日にミックスやマスタリングを行っていない、細かな手直しをする時間的余裕を持っていた——がゆえに、相対的に楽曲の質を高めやすかった。

仮説2. 「まかぎ祭」巡回者は、おそらく基本的には投稿順に楽曲を視聴していくため、参加楽曲内に同系統の楽曲が複数ある場合に、巡回中にはじめて出会った曲のほうが——バリエーションの面でも集中力の観点でも——新鮮なインパクトを感じ印象に残りやすかった。

仮説3. 全曲同時視聴と同タイミングで視聴していたリスナーから見て、DAY1で紹介される楽曲は、DAY2以降の楽曲よりも相対的に人の目に触れる期間が長く、多くの人に伝わりやすかった。DAY1とDAY4とでは3日間のラグがあり、誰かがtwitterで"良い曲"として取り上げた場合にDAY1の楽曲のほうが3日ぶん早く広く誰かに届く可能性がある。

仮説4. 上記はすべてまやかしで、偶然である。

ボカコレ等はまた傾向が異なるかと思いますが、少なくとも「参加楽曲200程度」「全曲同時視聴あり」のルール下においては、なるべく早い時間帯に投稿をすることが最適な行動だった可能性は否定できないように思えます!
ちゃんと準備して、はやめに投稿しよう!

まとめ

祭における動きの確認

本記事を通して見えたことは以下のとおりです。
※「◯◯祭」などの立て付けで一定の人に音楽を聴いてもらえる前提の話で、かつそれらの人に"良い"と思ってもらえる方法であり、再生数を伸ばす方法ではないということには留意してください。

【大前提】
いい曲をつくる。頑張ろうな。

【再生数について】
50人に聴いてもらえれば、良いと思ってくれる1人に出会える可能性がグッと高まる。

【シンガーについて】
どのシンガーであっても良いと思ってもらえる。

【曲の長さについて】
関係ない。1分でも15分でもいい。

【投稿時間について】
スタートダッシュに合わせたほうが効果的そうだ。


各楽曲ごとの"良さ"の分析

となると次は「頻出楽曲11曲のどこが人の心を掴んだのか」を分析したくなりますが、音、歌詞、構成、映像など要素が複雑かつ多岐にわたるうえ、そもそもそここそ感性の話なので何かを語ることもおこがましく思うので、続きはみなさんでトライしてみてください!(じぶんの中には「こういうことかな」と感じる部分があり、めっちゃ興味深かったです!)

「まかぎ祭10選」頻出楽曲のリストは以下にまとめています。環境トップに君臨するTier1のデッキ構築に目を通しておきましょう。


記事を作成するにあたり、作業したスプレッドシートは以下です。当初は公開を想定しておらずハチャメチャに汚いですが、需要があればダウンロードしてみてください。


最後になりますが、酩酊堂さま、まかぎさま、クリエイター・リスナー問わずまかぎ祭に参加したすべての皆さま、本当にありがとうございました。超楽しかったのでヤバいボリュームの文章を公開してしまいました。もし機会があれば、第2回もぜひよろしくお願いします!



ちなみにじぶんはこういう曲をつくっているよの告知コーナー:
niconico https://www.nicovideo.jp/my/mylist/72256152
youtube
 https://www.youtube.com/channel/UCR28J4Hi6kZzSy_Ly-Ksm4w


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