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11.17 蓮根の日

白くて長いレンコンをコンコンと叩くとなんだか不思議な音がする。
思い切って二つに割ってみたら、穴がたくさん空いていた。
この穴には、何が入っていたんだろうか。
種だろうか、実だろうか、それとも空気だろうか。
輪切りにすると、縦横無尽にたくさんのムンクの叫びが並ぶようで面白い画になった。
ドーナツの穴は、くり抜いた丸があった気がする。
レンコンの穴はどうだろう。
よく考えてみたら、蓮の実、がレンコンの種じゃないか。
だとすると、この穴は種の穴ではないのだろう。
お釈迦様の住む蓮池にも、レンコンはなるのだろうか。
するとレンコンは、聖なる食べ物なのだろうか。
穴を覗けば、遥か遠く曇天から一本の蜘蛛の糸が垂れてくる。
登れば天国へいけるのだろうか。
実際に目の前に現れると、登ることに恐怖を感じる。
今の生活が一番です、と震えながら心の中で唱えてレンコンの窓から目を離す。
普通の日常が帰ってくると、レンコンはただのレンコンになっている。
少し惜しかった気もするのが、人間の悪いところだと思った。
結局レンコンはアクを抜いて、美味しい金平にして腹に収めた。
何事もなく美味しいご飯が食べられる幸せ。
レンコンはサクサクと小気味いい音を立てて口の中でリズムを刻む。
レンコンの日に考えた、レンコンの話。

11.17 蓮根の日
#小説 #蓮根の日 #蓮根 #JAM365 #日めくりノベル

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