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8.14

波打ち際を歩く君の美しいくるぶしから目が離せない。波の音まで聞こえてきそうだけれど、寄せて返すのは風に揺れるカーテンのひなた。
BGMはスピッツの青い車で、僕は今すぐ君を連れ出したくなる。だけど僕には車がない。車を借りるお金もない。けど、電車の隣の座席に君が乗っていても僕は嬉しい。君はがっかりするかもしれないけれど。
小さな僕の1DKで、君が暑いねって微笑むから、僕は慌てて冷蔵庫の氷河の中からとっておきのアイスクリームを探し出す。
ストロベリーのアイスクリームをすくって舐める君の舌にめろめろにとろけてしまいそうだ。
白いTシャツをはためかせて逃した僕の熱が、君の頬を染めたらいいのに。
卓袱台の下でいたずらに押しつけられた君の裸足は冷たかった。アイスのカップがかいた汗が卓上に丸い水跡を残した。
僕の部屋の砂浜についた君の足跡が消えなければいいのに。八月の午後三時、僕の妄想が作る夏のポートレート。

814・裸足の日

#小説 #裸足の日 #裸足 #JAM365

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