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誰でもないあなたへ

誰でもないあなたへ

こんにちは。
この文章は特定の誰かに宛てたものではなく、ただこれまでの人生で考えてきたことが形として存在するために書いた文章です。意味など元より無いものです。したがって、ここで書くことは決してあなただけに言っているわけではない。ただ私が覗き見た世界。そこだけは忘れずにいていただければ幸いです。

生きていると幸せで堪らない瞬間が幾度となく押し寄せます。これは精一杯生きる人へのご褒美のようなものでしょうか。
 どうしてこんなに空は美しいの
 どうしてこんなに眩しい笑顔を振り撒くの
 どうしてあなたはこんなに優しいの
 どうして世界は鮮やかなの
あまりに感動してしまうと、嬉しくも、苦しくなるものです。何事も度を超えないことが大切ですから、世界が綺麗にみえてくるほど、それは麻薬のように作用して、日常においても美しさを求めてしまうものです。
「美しい世界にいるはずなのにこんなにも汚く惨めで冷たい」という現実とのギャップに耐えることが人一倍つらく難しいという状況に陥ります。

世界は美しい 世界は素晴らしい 人は捨てたものじゃない 視野を広く持て

それは事実

世界は汚い 息苦しい 視野狭窄 非道徳的

それも事実

人はその二つの相反する世界の模様の深い谷底に突き落とされる。だからこそ少しずつ、交互に混ぜ込んで埋め合わせて生きていく必要があるのです。

そんなのわかっているんです
みんなわかってるんですよそんなこと。そうでしょう?

混ぜ込むのが苦手な人間でした
上手く混ぜ込めない不器用な人間でした

母はよく面白いことを呟く人で(受け売りと本人は言っておりました)、幾つかは生きているとふと頭をよぎることがあります。その一つに、「なんでもできるってのは何もできないってのと同じだよ」というものがあります。
全てを浅く広くこなすということは、そのうちの一つのことを完璧にできるということとイコールではないという意味です。
私はずっと長い間、何か一つ大切に完璧にできる方が価値があると考えていました。それでも一つを極めることは自分には向いていなくて、解決策として理想に反して広く浅く、様々な事を平均以上に保つ事で生きてきました。それ相応の努力をして、上手く生きてきたと思います。勉強もスポーツも、数字で表れる部分はそれなりに良く出来ていました。未来の自分へ、未来の自分へ、と、未来の自分が少しでも苦しくないようにと地道な努力を重ねて生きていきました。
ですがそれは、身体のありとあらゆる異なる部分から一つずつネジを抜いていくような、側から見て気づきづらい壊れ方をもたらすようでした。私はそれに気づかないふりをして生きてしまいました。一つの決まった部分のネジが壊れるのならすぐ不調に気付けたのかもしれません。ですが私の場合、気づいたらグラグラと修復困難という状態に陥っていました。未来が欲しいものではなくなり、それ故未来の自分のための努力ができなくなり、遠くからやってきた未来に立っては途方に暮れ、怠惰な過去の自分を憎むようになりました。
冒頭でも出した言葉ですが、「何事も度を超えない」ことが大切なのです。
不器用な私はそれができませんでした。

混ぜ込め 混ぜ込め 全て混ぜ込め
そうしないと人は生きていかれないのです
こんなにも矛盾した世界で生きていかれないのです。
みんながうまく混ぜ込める訳ではない、だからこそ最低限自分自身と大切な周囲の人間を気にして生きる必要があるのだと思います。
あなたの隣のあなたは大丈夫でしょうか。頑張り屋だったあの子は今元気にしているでしょうか。そして、あなたは今大丈夫ですか。
混ぜ込んで生きていけていますか。
残念なことに私はあなたの助けにはなれないでしょう。自分ですら助けてやれなかった。
できることはこうして文章を書きあなたに私の考えていたことを伝えることだけです。
この文章はある人には意味を全然なさないのです。ある人、というよりほとんど大半の人には意味をなさないのです。
それでも私と似たような人間、あるいは似た人を知っていて気にかけるような優しい人間には少しの気づきをお分けできるかもしれない。
どうか、外れた小さなネジを見過ごして捨ててしまわないように
美しい部分を、少しずつ拾って笑って生きていけるように
誰でもないあなたが幸せに過ごしていけることを心から願っています。

2023年8月16日
今日は晴れと突然の雨を繰り返した、忙しい夏の日でした。
私はこれまでの人生において夏が苦手で冬が大好きな人間でしたが、この夏は「夏も好きかもしれない」なんて考える日が多くありました。自分でもかなり驚いています。
こんな風に、あなたの価値観も好き嫌いも、少しのきっかけで変わる日が来るかもしれませんね。その日を一緒に待ってみませんか。
あなたに会うことはないでしょうが、一緒に、何かが変わる日を同じ世界で待っていていただけませんか。
私の文章を読んだ誰でもないあなたが同じ時間を生きていると思うと、勝手ながらとても心が軽くなるのです。
同じ世界のどこかにこの文章を書いた私がいます。誰でもないあなたを心の隅に置いて生きている私がいます。
あなたがいなくなっても私がいなくなってもわからない。たとえそうだとしても、あなたがいなくなったとしても、私はあなたを心の隅に置き続けるのです。あなたは私を忘れても構いません。
でもそれでいいじゃないですか。
それでいいと言おうじゃないですか。それじゃダメなんて、言ったら負けたみたいじゃないですか。私も誰でもないあなたも時間と空間の障壁に負けたりしませんよ。

電車の車窓から見える夕日がとても眩しいです。とても良い一日でした。
あなたが今日も笑っていたら嬉しいです。

誰でもない私より

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