オヤジが死んだ
親父が死んだ
亡くなった…は相応しくない
「死んだ」がしっくりくる
悲しくはない哀しさは少しある
物心ついて25歳になるまで
地元に住んでた間は苦労や心労
その元凶だった
オンナにシャッキン
行き詰まると逃げる
中学生から大人になるまで
オヤジの代わりで謝罪に歩いた
街ではあのオヤジのムスコ
陰口を叩かれても家族には
恥をかかせまい
中学生の頃決心した思い
やがて大人になり
25歳で地元を離れた
「あのオヤジのムスコ」
それから逃れたかった
やがて地元の実家を引き払い
母親を引き取り暮らし始めた
しかし
今度は母親の口から出る
「あのオヤジのムスコ」
何を言っても何をやっても信用されない
「あのオヤジのムスコ」だから
そんな母親とは同居できず
強制的に別居させた
自分の家族を守りたかったから
子育てに失敗した夫婦
歳を取ったらムスコに世話してもらう
そんな腹積りだったんだろう
オヤジが死んだ
亡くなったのではない
過去もオヤジも死んだのだ