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青海三丁目 地先の肖像「3mの地図」

2020.07 | 葛

中央防波堤の外側をツアーすることも、人を集めてワークショップをすることもできない今、東京ビエンナーレの開催もどうなるかわからないけれど、我々にできることとしては、とにもかくにも、青海三丁目地先の地図を描いてみることなのではないか、と思った。

思い立ってすぐ1、2日かけてgoogleの衛星写真をひたすらにスクリーンショットした。中央防波堤の外側も含めると膨大な画像の量。今までに描いたことのない広大な3km x 3kmのエリア。まずは中央防波堤内側を、縦1m横3mの地図を描いてみることに決めて、私と森藤は分担して取り組んだ。

想像以上に長い時間をかけて、描き続けた。一度描き始めると、止まらずに昼も夜も描き続けた。他のことで忙しくなった時はそれはそれでパタッと止まって、でもまた時間ができたら、続きを描いた。

印刷された衛星写真の上に、トレーシングペーパーをマスキングテープで貼り、パソコンでも衛星写真を表示しながら、描き進めていく。トレーシングペーパーに染み込むインクからは微かに甘い匂いが漂って、その愉しさが少しだけ現実を忘れさせてくれる。都市全体が重く閉ざされていた中、私が辛うじて得た親密さだった。

私たちは横幅3mをほぼ2分割して分担した。それぞれにA3用紙で15枚分程度の地図を描き、それらをデジタルに取り込んで合成した。デジタルからアナログを経てまたデジタルへと行き、画像処理にもそれなりに時間がかかって、夏になってようやく、私たちの足と手が歩き回った、中央防波堤内側の地図は完成した。

それは私にとって、外界からの現実逃避の結果でありながら、少しの挑戦と忍耐強さも含む混合物であった。完成したファブリックからはそのことはもちろん伺い知ることができない。少しの驚きをもって「手描きなの?」と聞かれるだけだ。

私と森藤が繋ぎ合わせた中央防波堤内側から、更に中央防波堤の外側へ向けて。

遅々とした歩みだが、埋立を追体験するように、私たちの筆跡は更に広がってゆくはずだ・・・。

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