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青海三丁目 地先の肖像「2022年、動き続ける」

2022.10.04 | 葛

2021年の年末に、初めて知り合ったアーティストたちと夕方から夜にかけての埋立地を巡った。東京ビエンナーレの後、久しぶりに訪れた中央防波堤の夕暮れは美しく、風は思ったよりも優しかった。

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それから数ヶ月経った5月下旬、彼らの計画は藤倉麻子さんが主催する物流型展覧会「手前の崖のバンプール」として実現し、私も観覧してきた。Aokidさんが水上タクシーの上で港湾と海の動きなぞり、指し示している。海風が同乗者たちの服をはためかせる音がする。タクシーの中では、藤倉さんたちが埋立地の歴史について対話をしているラジオ番組が流れている。

気がついた時にはもう港湾から離れて、運河を辿って倉庫の近くに停泊していた。

他のアーティストがどのように港湾や埋立地を見、表現するのかということを体験できて、大変楽しかった。特に海上から見るクレーンの風景は私も見たことがないものであり、そこでは物流を形成する幾多もの動きが、昼夜を問わず延々と繰り返されているようだった。

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水上タクシーに同乗していたしていた美術家の光岡幸一さんに「青海三丁目 地先の肖像」の話をしていたら、その後自費出版した書籍を買ってくれたらしい。実はその本は『青海三丁目 地先の肖像I』という記録集なのだが、ここに執筆した記録を含めて様々な記録や写真を取りまとめ、3月末に刊行したものである。

光岡さんはその後も中央防波堤に興味を持ち続けたようで、「中央防波堤外側埋立地見学会」を7月下旬の土曜日に企画し、遂に中央防波堤外側に上陸できたようだった。

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知人がメンバーの1人である、ULTRA STUDIOが参加するART BAY TOKYO ART FESTIVAL 2022が9月下旬に行われたが、これは東京テレポートから有明にかけての湾岸部を舞台とした屋外作品を主とするアートフェスティバルであり、どうやら港湾局が主催しているらしかった。

まだまだ始まったばかりの取り組みで色々と制約の多い中でのイベントだったようであるが、臨海埋立地を活用しようとする活動が行政側からも発案され、続いてきているのは興味深い。

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アートフェスティバルのついでに、渡辺誠の設計により1997年に建てられ、2001年以降休館している、K-MUSEUMこと臨海副都心共同溝展示館も見てきた。まるでフロンティアに着陸し、打ち捨てられた宇宙船のようである。中に収納されている共同溝もガラス越しに見えているが、思ったよりコンパクトな外観に却って驚いた。2001年で時間をとめられたタイムカプセルか、棺のようにも見えた。

まだ10月初旬ではあるが、この1年間、埋立地も引き続き動き続けており、少しずつではあるがより多くの人々が行き交い始めているような気がする。

次の週末には海の森公園でもイベントが開催されるようで、あの封鎖され続けた公園も、やっと市民に開かれはじめようとしているらしい。

今後もどんな形で動きが続いてゆくのか、注視記録していきたいと思う。

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