照りもせず曇りも果てぬ春の夜の朧月夜に似るものぞなき

『源氏物語 巻二』瀬戸内寂聴訳 講談社

源氏は陽キャ・・・。。。。しみじみ。。笑

今更だが、源氏物語がいくつかの話に区切られていて、それぞれの中に異なった女性が登場してくるというという構成から、「女性は恋愛を上書き保存するが、男性は恋愛を別のフォルダに保存する」みたいな言葉を思い出した。本当にそうなのだろうか・・・。

巻二は全体を通して、源氏が私と同い年くらいのお話で、その勢いが故の不安定さに共感した。

花宴での「朧月夜に似るものぞなき」は、調べてみると、白楽天という詩人の引用らしい。

「照りもせず曇りも果てぬ春の夜の朧月夜に似るものぞなき」

春や秋の、季節の変化を感じると、それだけで心が揺れる。風の匂いや、街の音、草木の色・・・。マスクをつけていると、周りの匂いに鈍感になる。朝、はじめて家を出る時は、誰もいないことを確認して、少しの間、マスクを外して、思いっきり息を吸い込む。そうすると、秋の匂いで胸がいっぱいになって、寂しい気持ちになる。寂しい気持ちになることが分かっているのに、その寂しさが恋しくて、ついついやってしまう。調べている途中で、秋の白楽天の詩にも出会った。

「月見れば千々にものこそ悲しけれ わが身ひとつの秋にはあらねど」

ひとつの物語は、決してひとつで成り立っているのではない。その裏側に無数の物語の支えがあって、互いに支え合いながら、むしろめり込みながら、その姿を保っている。

また、九帖の葵は、非常に衝撃的な話だった。生霊やら、紫の上とまじわっちゃうやら、刺激が強い。ただ、そういった源氏の一つの恋は、ただの恋の話ではなくて、その裏で政治が確かに流れているのが、面白かった。どちらかがメインなのではなく、どちらもメインで大切なのだ。

まるで別世界のようで、ほんとうの部分では、繋がっている。



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