見出し画像

ハチミツで狂ってみた

マッドハニーというハチミツをご存知だろうか。

主にネパールやトルコで生産されている軽い幻覚作用のあるハチミツで、舐めるとトリップできるというものだ。一応日本では合法で流通している。
原料となるシャクナゲ属の花の蜜や花粉に含まれる、グラヤノトキシンという自然毒にこのような作用があるという。

・・・・・

こんなハチミツがあるよ、と教えてくれたのは、小学校から高校まで同じ学校に通っていた幼馴染の友人だ。
高校以降は疎遠になっていたのだが、ひょんなことから数年ぶりに再会して、趣味が合うので最近は休日たまに遊ぶようになっていた。

ある日出先のフードコートで一緒に適当なご飯を食べていると、どういう流れか忘れたが一度は幻覚とか見てみたいよねという話題があがった。
そのままハチミツの話になり、とんとん拍子に今度試してみようと話がまとまったのだった。
持つべきものは友ですね。

ということでハチミツで狂ってみた体験を記していく。

・・・・・・・・・・

マッドハニーは高い。とにかく高い。
スーパーで扱われるような普通のハチミツが100gあたり大体100-300円で売られているところ、今回通販で用意してもらったマッドハニーは30gで約1万円だったという。

普通のハチミツの300倍のお値段。この時点でかなりマッドだ。
採取にかかる手間や需要と供給のバランスでこの値段になっているらしい。
ちょっと足元を見られている気もする。

手のひらに収まるちんまりとしたサイズの瓶をしげしげと眺めて、これが一万円かあと思う。

一万円ハチミツ


友人宅に泊まらせてもらうことにし、そのまますぐ寝られるよう食事や風呂は済ませておいた。

まずティースプーン1杯から。
質感は普通のハチミツよりもかなりサラサラしており、メープルシロップに近いような粘度だ。
色も茶色味が強く、花粉のような沈殿物がある。
一口食べてみると、味がとにかく濃くて深い。醤油などの発酵食品のようなコクと独特な風味があった。美味いけど喉がイガイガするくらい甘い。

一杯ではいまいち効果が分かりにくかったので、30gを2人で分けて、1人15gずつなめた。
ティースプーン3-4杯くらいか。 

しばらくすると少しずつ体がふわふわしてくる。
なんというか、酒を飲んだ時の酩酊感から悪いところを全部取ったような感覚だ。

ふわふわした感覚はありつつも頭も痛くならないし、ぼんやりしない。意識は逆に冴えてくる。でありながら、酒を飲んだ時のように、現実的で些細な悩みは遠くへすっ飛んでいき、じんわり幸せな気持ちになる。

視覚的な効果を期待してyoutubeで適当な動画を流していたのだが、特に何も起こらない。
気が散るので消し、各自静かに寝っ転がることにした。



目を閉じると次から次へと脈絡のないイメージがポンポン去来してくる
実際に見えている、というのではなく、意識がある状態で夢を高速でザッピングしているような感じだ。脳が適当なイメージをシャッフル再生してくる。
知らないおじさんの顔が浮かんだと思ったらそれがどんどん抽象化されてピカソの肖像画のようになり、パッと場面転換して会社へ通うシーンが浮かぶ。こんな感じだ。
連鎖反応を起こすように次々イメージが浮かぶ。
寝ているのか起きているのかちょっと分からなくなってくる。

脳内シャッフルにも徐々に慣れてきたので、次は音楽を聞いてみた。

びっっくりした。
バンドが耳元で生演奏しているのかと思った。

いつも音楽を聴く時は、どうしてもメロディラインやボーカルに集中しがちで、その他の音は単なる伴奏として聞き流しがちだ。

それが、背景に流れている微かなあしらいの音まで、メロディーラインと均一化され、同じ価値を持って鼓膜に迫ってくる。
今まで何度も聴いてきた曲なのに、音の厚みが広辞苑なみに分厚く感じられる。
メインボーカルの奥にある、ベースの音、ピアノの音、ふしぎな電子音、ふわっと入ってくるサブボーカル、全てが粒立って聞こえてくる。

通常音楽を聴く時は、無意識のうちにメインのメロディーを聞き分け、それを軸に曲を束として解釈していくように思う。

一方、マッドハニー舐め舐め状態では自己がゆるゆるになっているため軸が設けられず、音楽が束ではなく、それぞれの音がダイレクトアタックしてくる。
勝手に簡略化して聞いていた音楽の解像度が、一気に上がったようだった。音を浴びている感覚というか。
あえて図式化するとこんな感じだろうか。

あと、人格から余分な要素が剥がれていく感覚があった。
漠然とした不安だとか外向きに取り繕う用の人格だとか、そうした生きる上で蓄積していった垢が剥けて、自己がツルツルむき卵状態になる感覚。

その分音楽がより沁みやすくなっているように感じた。スキンケアと同じですね。

同じような効果があるかは知らないが、ラッパーや海外のミュージシャンがやたらと大麻を吸いたがるのはこういう訳なのかなと思った。

一体、脳のどの部分がどうなってるんだろうか。マッドハニーを舐めた状態で脳波を測定してほしい。そういう治験に参加したい。

プラシーボ効果も大いにあるだろうし、人によって、コンディションによって受ける感覚は大きく異なってくると思う。
大手を振って万人にオススメはできないが、個人的には面白い体験だった。

機会があれば次は量を倍にして試してみたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?