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『起業の天才!: 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』感想

「自ら機会を創り出し、機会によって自ら変えよ」はリクルートの社訓ですが、聞いたことがある方が多いのではないでしょうか。

一方でリクルートを、そして社訓を作った人物を知っている人は多くはないのではないでしょうか。
私も教科書で習った「リクルート事件」は覚えてましたが、創業者である江副浩正氏のことは知りませんでした。

この本は2021年に書かれており、江副氏のことを良い点も、悪い点も改めて評価している本ではないかと思います。

内容的には江副氏の創業当時の関係者の話、本人の生い立ち、会社の成長、歴史的な事件について順番に書かれています。

印象的だったのは、タイトル通り起業の天才であり、当時としても画期的な企業だということでした。

今のリクナビの前身であるリクルートブックをはじめとした広告をベースとしたビジネスモデルを作っているだけではなく、転職市場(現:リクナビネクスト)、住宅情報(現:スーモ)の市場などそれまでの慣習を覆すようなサービス、ビジネスモデルを創出している動きはまさにゼロから1を創る事業だと思います。

また男女雇用機会均等法の制定される10年前から女性の活躍する機会がある、20代前半から管理職にも抜擢されている等の話も出ていました。
昭和のど真ん中の時代に画期的なことですよね。

設備投資の面でも先見の明があり、IBMの小型汎用コンピューターの導入や、オンライン住宅サービス、クラウドコンピューティングに近しい構想など当時のインフラでは想像しがたい先進的な投資を行っていたなど日本の起業家としては稀有な方だったものと思います。

それだけに政治に傾倒し、当時はグレーな部分はあったにせよ歴史的な汚職事件によって退出することになってしまったのは残念ではあります。

この本ではその後、リクルートの立て直しにおいて中内功氏が登場しますがその中でもリクルートの風土が分かるエピソードがあり興味深く読みました。

他にもどこかで聞いたことがある経営者の話なども出てきて、日本の経済・経営の中枢における歴史的の一端を垣間見ることができる良い本だと思います。


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