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フィリピンの新しい政府系ファンド、マハルリカファンド

 現在フィリピンでは「社会保障(SSS、GSIS)の財源に手をつけるな!!」という訴えが響き渡っています。日本の国家予算運用、たとえば年金運用(公的年金積立金運用)はたびたび赤字や黒字を度々出していますが大きな社会運動には遭遇していません。しかし現在のフィリピンではやや状況が異なります。現在議論されているマルコス大統領の親族議員らが創設を目指す総額2500億ペソの政府系ファンド「マハルリカ・ウェルス・ファンド」は財源が国民が納めた保険料や年金から来ています。(正確には公務員保

    • 「おちてよ、ケンさん」をきちんと読んでほしい

      僕が好きな漫画家さんに鳥トマトさんという方がいて、その先生の新作が公表されたものの、作品のなかのトランスヘイト言説がかなり批判されて炎上している模様です。それにかんする雑感を以下に書きます。なお、鳥トマトさんは今までトランスの主人公をずっと描いてきたフェミニストの作家で、過去作は差別を正面から扱ってきたものばかりです。 【雑感】 まず、作品を読んでもらえればわかるんですが、なんやかんやあって洗脳されたミソジニー男性のケンさんは女性の特権を得ようと女性装をして出社します。そ

      • フィリピンの岩海苔

        【岩海苔/Gamet】 東アジア(日本や韓国)でしか食されていない、と言われている海苔ですが、なんとフィリピンにはれっきとした岩海苔の食文化が存在しています。カガヤン州の西端に位置するサンタプラクセデス市では岩海苔漁師が海に浮かぶ岩にボートから飛び移り、岩に生えた岩海苔を採取しています。高い波が岩に打ち上がり、足元も岩の上で滑る中での手作業です。岩海苔の収穫時期は10〜3月のみで、岩海苔漁師のロジャー氏によれば一度の漁で岩海苔は250グラムほどしか取れず、しかも生命のリス

        • 【フィリピンのウニ/salungo, tuyom】

          【フィリピンのウニ/salungo, tuyom】  僕の地元の北海道はムラサキウニやバフンウニが有名ですが、フィリピンでも海沿いではウニが食べられます。ザンバレス州の海は一部が保護海域になっているほど生き物が豊かで、なかでも海の幸の一つであるウニが有名です。マラタンダンと呼ばれる針の白いウニ(ガンガゼモドキ?)と、長い針を持っていて危険なガンガゼ(タユム)の二種類が食用にされています。ウニ漁師はガンガゼを先の曲がった金属の棒で引っ掛け、とうもろこし用のぶ厚い袋に入れて捕獲

        フィリピンの新しい政府系ファンド、マハルリカファンド

          あしなが育英会について勉強する

          「きみたちを守る」と自信を持って言える人が今の時代にいたことに驚いた。最近悪いニュースばかり見ていたので、こうして誰かの心に寄り添ったメッセージを発している人がいるのには真に感服する。今まであしなが育英会について深く知ろうとしてこなかったので、この会長のメッセージと支援金を機に、論文と記事を幾つか読んでみた。こうした「運動」は自分の専門外なのだけれども、1967年から続く団体の歴史があったり(設立自体は1993年)、『あしなが育英会は全額寄付で運営されており、財源の半分近くは

          あしなが育英会について勉強する

          なぜ分断の時代に「家族」が主役なのか?ー「パラサイト」と「家族を想うとき」ー

          *以下の記事では、現在公開中の『パラサイト 半地下の家族』『家族を想うとき」の内容と結末が述べられていますのでご注意ください。まだ作品をご覧になっていない方、これからご覧になる予定の方は以下の記事を読まないことをお勧めします。 ・はじめに 2019年に公開されたポン・ジュノの「パラサイト」とケン・ローチの「家族を想うとき」、これら2つの映画には「貧困」と「格差社会」という2つのテーマが編み込まれている。そして興味深いことに、劇中で貧困、格差問題に直面する主体が「家族」であ

          なぜ分断の時代に「家族」が主役なのか?ー「パラサイト」と「家族を想うとき」ー