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季節外れの雪が降る 賛否両論の判定は半々ではない? 続編.3


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誤振込されたお金は返さなくてよい?山口阿武町「4630万円返還拒否」騒動を弁護士に聞く
2022/5/3(火) 8:45配信 bizSPA!フレッシュ
022年4月8日、山口県阿武町で理解に苦しむ出来事が起こった。役場職員が誤って出力した振込依頼書を銀行に渡したことで、1世帯だけに463世帯分の対策の給付金4630万円が振り込まれてしまったのだ。
4630万円を受け取った世帯主は、役場から返金を求められたが応じず、「金は別口座に動かし、元に戻せない。罪は償う」と拒否。

4月22日阿武町の花田憲彦町長は改めて記者会見を開き、「痛恨の極みで、心からお詫び申し上げる。なんとか公金を取り戻せるように最善の努力を続ける」と述べた。しかし、4月27日に行われた町議会会員協議会後、末若憲二議長は「現時点で議会として、うつ手が見つからない」と諦めムードだった。

これに対して本当にうつ手がないのか、「プロスペクト法律事務所」代表の坂口靖弁護士(@yassiyassiyassi)に聞いてみた。

不当利得返還請求権が生じるが…
誤送金を受け取った世帯主は「返したくない」と答えているのだが、そのお金は我々の血税だ。この信じられない世帯主の行為に対して、法的処置は取れるのだろうか。
坂口弁護士は「理由のないお金が世帯主に振り込まれているので、法律的には“不当利得返還請求”という権利が生じます。誤振込を受けた人は、当然お金を返さないといけない義務を負います」とし、「ただ結局、ない袖は振れないといいますか、お金がない人から取りようがないので難しいかもしれません」と言う。

世帯主が得しただけなのか
「プロスペクト法律事務所」代表弁護士。坂口靖氏

お金を使ってしまった世帯主が、ただ得しただけになってしまうのか。そんなことがあれば国民も黙っていないだろう。
「そうですね。金銭的には得することになると思うのですが、法律的な支払い義務はなくなるわけではありません。この人が働いていて金銭を得ることがあれば、お金を差し押えて強制的に取り立てることはできる可能性があります。ですので、簡単に逃げ切れる話ではないと思います」

逃げられないように世帯主の名前を掲載すれば……と思うのだが、これについては逆に訴えられるリスクもあるという。

「名前が出るかどうかはマスコミの人の努力もありますが、今回の件は刑事事件化しておらず、民事上の話なので、個人情報の観点からして役場側もまだ名前も出していないです。警察が捜査して逮捕したら名前を公表すると思うのですが、現状では役場側はリスクを考えて『この人です』と言わないでしょう」

仕事を辞めていたら「うつ手なし」

逃げる手立てとして考えられるのは、世帯主が仕事を辞めることだ。

「仕事を辞めてしまうと、給料も差し押さえできないですね……。あと生活保護を受けている人だと差し押さえできないので、この場合かなり難しいです。
仮に生活保護を受けている人だとして、『毎月これだけ返します』といって返金することもできますが、結局、国のお金を循環しているだけなので、国民からの合意は得難いなと思います」
さらに世帯主が破産宣告した場合、完全勝利ということになってしまうのか。

「免責されるかどうかが重要なんですね。破産手続きのなかで“免責決定”というのが出るんですけど、それが出るとお金を返さなくてもよくなるんです。ただ今回のような故意または重過失によって生じた債権なので、破産しても免責されるのは難しいお話になります」

回収するのにもコストがかかる
また、報道によれば世帯主が「罪を償う」と開き直っているようだ。もし世帯主が給付金を全額使ってしまったとなると、回収までに時間がかかりそうだ。
「長期間かけてお金を回収するのにも、役場の人件費や裁判費用など、コストがかかってしまうと考えられます。事実上、途中で諦めてしまうケースはよくある話かなと。役場も世帯主のことを、刑事告発するという話も出ていますが、警察に被害届等を出せば窃盗罪や詐欺罪で処罰を受ける可能性があります。

もう少し細かく言うと、銀行窓口から現金を引き出したということであれば詐欺罪になります。あと窃盗になるかもしれないと言ったのは、ATMから引き出せば、詐欺行為の対象となる『人』ではなく機械に対しての不正なので、窃盗罪にあたります。

また自分の口座から違う口座に振り込んだ場合は、詐欺罪の一種でもある“電子計算機使用詐欺”になると思います。刑の名称は違うものの、刑罰の重さは同じくらいです」

坂口氏が予測する「刑罰」の重さは…

実刑になったとして、どのくらいの重さになるのか。

「世帯主に前科がないという前提で、『1円も弁償しませんよ』となると、実刑判決で執行猶予なしの3~5年の期間刑務所に入れられるだけで終わる可能性があります」

え? そんな刑で済んでしまう? これでは悪が得してしまうような…。

「刑が終われば、この件に関してもう罰を受けることはありません。ですが、先ほど話した不当利得返還義務は、服役したからといってなくなるわけではなく、債務として残ります。よくあるパターンとしては、刑事事件になって『逮捕されたくない』とか『刑務所に行きたくない』という気持ちにさせてお金を返してもらうことです。

でもこの人の場合は『刑務所に入っても仕方がない』というようなニュアンスで言っているようです。そこまで開き直られると、なかなか自発的に返金してもらうのは難しそうです。」

借金返済に使ってしまった可能性も
ふと、警察に自首してしまえば、刑はさらに軽くなってしまうのか心配になった。

「これまで報道されていて、『捜査機関も今回の誤振込の事実の存在』についてわかっているので、法律上の自首が成立する可能性は比較的低いですね。今のところ刑が法律上軽くなることは想定できません」

使ってしまったお金の行き先というのは、銀行で簡単に把握できそうなものだ。なぜこんなにもうやむやにされてしまうのかが不思議だが、坂口弁護士は「振込先は調べればすぐにわかりますが、現金で引き出されて何かを買ったり誰かに渡したりした場合、ある程度追っていくことはできると思いますが時間はかかりますね」とのこと。

世帯主に入れ知恵した人物がいた?

そもそも誤送金を世帯主が受け取ってから、4630万円を一瞬で完全に使い切るのは難しい。

「想定できるのは世帯主に借金があり、そのお金を返したのかなと。4630万円の借金を返したとしても、そこに債権者がいるわけです。もし役場が誤送金の金銭を貸金の返金に使用したというのを把握したら、その金銭を受領した債権者に対して返還請求することも一応、考えられます。ただその債権者が誤送金の事実を知らないまま返金を受けたのであれば、お金を返す必要はありません。

この世帯主がどんな生活をしていたのかわかりませんが、仮に生活保護を受けていて債権者側も把握していたのなら、『いきなりこんなに多額のお金を手に入れるのはおかしい』ということで、ある程度事情を把握した上で返金に応じてくれる可能性もあるでしょう」

ちなみに最初の報道で返金に応じるとあったが、その後「返金しない」と変わった。これに対して「周りにいる人が入れ知恵をつけたのでは?」と坂口弁護士は指摘。

「普通なら4630万円を稼いで貯金するのは大変じゃないですか。極端にいえば懲役3~5年で刑務所に入ったとしても、『仕事に行ったと思って、このお金を隠せばいいんじゃないの?』と入れ知恵されたという可能性もなきにしもあらずですね」

お金を回収する方向で最大限の努力を

戻ってこなかった場合、役場職員が代わりに支払うことも考えられる。

「法律的に職員に重過失が認められる場合など、住民訴訟等になる前に公共団体がミスした職員に対して請求することはありえます。今回も職員の重過失があるかどうかで、その請求が認められるかどうか変わってくるかと思います。

同じようなケースで、簡単なミスをした職員に対して、半分の金額だけ公共団体が職員に対して返還を求めた事例もありました。ただ職員に対して今回のような多額の債務の責任追及をすると、今後の職員の仕事ぶり等に大きな萎縮的効果が及ぶこととなり、役場の仕事が滞ってしまう可能性もあるので、そもそも、職員に対し責任追及するのかという判断も難しいところがあります」

なんとなくこれまでの役場の受け答えをみると、「このまま泣き寝入りしてしまうのでは」と思ってしまう。坂口弁護士は最後に「泣き寝入りするかどうかは、いろいろ努力してから決める話ですね。やはり税金なので、できることはしっかり行い、お金を回収する方向で最大限にやってもらいたいですね」と語った。

4630万円がある日自分の銀行口座に振り込まれていても、通常なら天の恵みとは思わないだろう。早く世帯主は観念してお金を返し、国民のモヤモヤした気持ちを解消してもらいたいものだ。

<取材・文/大川藍>

【坂口靖】
プロスペクト法律事務所代表弁護士。千葉県弁護士会刑事弁護センター委員。千葉県弁護士会民事介入暴力被害者救済センター副委員長。刑事事件実績400件以上。Twitter:@yassiyassiyassi

bizSPA!フレッシュ 編集部


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