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近々未来への期待は当て外れする

2023年12月27日

ChatGPTは未来を明るくするコンテンツか?

グーグルが「パスキー」による認証を標準設定に。パスワードを“時代遅れ”にする取り組みを加速

SECURITY 2023.10.11 WIRED
パスワードに代わる認証方式「パスキー」によるログインをグーグルが標準設定にすると発表した。半ば強制的ともいえる利用促進により、“パスワードのない世界”の実現に向けた動きが加速することになる。

パスワードに代わる認証方式「パスキー」を、グーグルが数十億もの個人アカウントすべてに導入すると発表したのは、いまから半年近く前のことだった。そこからグーグルはさらに一歩踏み込み、パスキーをユーザーがログインする際の標準設定(デフォルト)にすると10月10日(米国時間)に発表したのだ。

Google アカウントにログインするとパスキーを作成する画面が表示され、Gmailのアドレスとパスワードの組み合わせの代わりにパスキーを使ってログインできるようになる。グーグルはアカウントの設定において「可能な場合はパスワードをスキップする」という設定をオンにする予定だが、これは実質的にパスキーの標準化に向けたゴーサインと言っていいだろう。

まだパスワードをなくしたくないユーザーは、この設定をオフにすることで、パスキーの作成画面を表示しないようにすることもできる。
アップルがパスワード廃止に向け実装した「パスキー」について知っておくべきこと

パスワードに基づく認証はデジタルシステムにおいて非常に汎用性が高いことから、簡単に置き換えることはできない。しかし、パスワードは推測されたり盗まれたりする可能性があるという、固有のセキュリティの問題を抱えている。

また、何十、何百ものパスワードを管理することは非常に難しく、ユーザーは複数のアカウントで同じパスワードを再利用することが多い。これにより、ハッカーなどの攻撃者が流出したログイン認証情報を使い、同じ情報を再利用できるアカウントに侵入する「クレデンシャルスタッフィング攻撃」と呼ばれる手口を容易にしてしまう。

こうした問題に対処できるようにパスキーは設計されている。パスワードに代わって、アカウントを認証する目的でデバイスに保存された暗号鍵を利用することで、フィッシング攻撃のリスクを大幅に低減する仕組みだ。

パスワードを「時代遅れ」なものに

これまでのところグーグルは、パスキーの普及に関する統計を共有していない。しかし、公式ブログ投稿では「ユーザーはYouTubeや検索、マップといったよく使うアプリでパスキーを利用しており、その結果は励みになっています」と説明している。

なお、アップルとマイクロソフトもパスキーに対応している。Uberや eBayのようなサービスもパスキーに対応し始めており、WhatsAppも近い時期に導入する予定だ。

「パスワードの不要な世界は、わたしたちが10年以上も前に実現しようとしたものです。パスキーを標準設定として提供することで、わたしたちはすでに次のステップに進んでいることにわくわくしています。また、パスキーに切り替えたユーザーから素晴らしいフィードバックを目の当たりにできることもうれしく思っています」と、グーグルのアイデンティティとセキュリティを担当するプロダクトマネージャーのクリスティアン・ブランドは『WIRED』の取材に対して語っている。

世の中でパスワードの利用が定着していることを考えると、グーグルのように大きな影響力をもつ企業であってもパスキーへの移行を一朝一夕には進められないだろう。それでもグーグルはその影響力を使うことで、ユーザーに明らかに“穏やかな圧力”をかけようとしている。

「パスキーを利用できるようになるその他のオンラインアカウントについては、今後も随時アップデートしていきます」と、グーグルは説明している。「その間もわたしたちは、パスキーへの移行を業界全体に促し続けます。そしてパスワードが珍しいものになり、やがては時代遅れになるようにしていきます」

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死んだら自分のSNSはどうなる? AIが実現する、死者と会話する未来

(WIRED US/Translation by Daisuke Takimoto)

※『WIRED』によるパスキーの関連記事はこちら。
 
パスワードの関連記事はこちら。

「パスワードが不要な世界」を(今度こそ)目指す新たな取り組みは成功するか

BY LILY HAY NEWMAN 

パスワードが不要になる未来が「すぐそこまで来ている」として、もう何年もじらされている。だが、いまだにパスワードの不便さから解放される日が来るとは思えない人のほうが多いのではないだろうか。

こうしたなか業界団体のFIDOアライアンスは、「パスワードが不要な認証の実現」というパズルの完成に向けて、ついに足りないピースを特定できたと考えている。FIDOは安全な認証の実現に取り組む業界団体で、この問題に10年にわたって取り組み続けている組織だ(FIDOは「Fast Identity Online(素早いオンライン認証)」の略)。 部分引用


ロボティクス社会 ロボットに感情を持たせることはできるのか
ホーム ロボティクス社会 ロボットに感情を持たせることはできるのか
2023.11.28 元田 光一=テクニカルライター 未来コトハジメ

(写真1)奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 情報科学領域 助教の日永田智絵氏(写真撮影:元田光一)

KEYWORDダイバーシティ AI

ChatGPTをはじめとする生成AIが、さまざまな話題を集めている。いろんな質問に対して、まるで意識を持った人間が答えているように思える回答を返してくることもある。そんなAIは、いずれは感情まで持つようにもなるのだろうか。そして、そんなAIを人型ロボットに搭載すれば、人間のように感情を持ったロボットが生まれるのだろうか。

人間の感情は経験や行動から生まれる

そもそも、人間が持つ感情とはどんなものだろうか。感情と深いつながりを持つ言葉に情動というものがある。感情とは、何らかの状況に置かれた時に人間が感じる気持ちを指す。「喜び」や「悲しみ」、「好き」や「嫌い」、「恐れ」、「怒り」などだ。これに対して情動とは、感情によって引き起こされる「怒り」や「悲しみ」、「喜び」や「驚き」の行動を指しており、急激で一時的なものを指している。例えば、長い間一緒に暮らしていたペットが死んでしまったら「悲しい」という感情が引き起こされ、それによって涙を流して泣くという情動につながっていくだろう。あるいは、大学受験で志望校に合格できたら「喜び」の感情が引き起こされ、それによって「笑顔」という情動につながっていくと思われる。従来の心理学の研究では、人間はこうした感情や情動が遺伝子に組み込まれたまま生まれてきて、徐々に表に出てくるようになると考えられてきた。それが、最近の研究では変わってきたようだ。

人に寄り添うパートナーロボットの研究を進めている、奈良先端科学技術大学院大学 助教の日永田智絵氏は、人間のように感情を持ったロボットを生み出すために、感情のメカニズムについての研究を進めている(写真1)。日永田氏によると、感情とは何かについてはさまざまな捉え方があるが、最近の研究のトレンドは基本的には感情や情動は生まれてから作られるものだと主張する「構成主義的情動理論」が主流になってきているという。

(写真1)奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 情報科学領域 助教の日永田智絵氏(写真撮影:元田光一)

そもそも構成主義とは、人間の経験や行動というものは、脳や体内の生物学的なプロセスによって作られるという考え方だ。したがって構成主義的情動理論では、感情や情動ももともと人間の遺伝子に組み込まれたものではなく、人間の経験などによって都度作られるという考えになる。だから、人間は個々人でさまざまな怒りや悲しみ、喜びの感情を持っており、どんな状況だったらそうした感情になるのかという指標もない。

感情や情動はどのようにして身につくのか

では、構成主義的情動理論においては、人間はどのようにして感情や情動を身につけていくのか。日永田氏は、近年の感情研究において重要な要素が「感覚」だという。感覚には内受容感覚と外受容感覚があり、内受容感覚は基本的に内臓から得られる感覚だ。すなわち、心拍が上がって心臓がどきどきしてきたり、お腹が空いて胃が締め付けられるように感じたりする臓器の情報が内受容感覚であり、目で見たり耳で聞いたり鼻で臭いを嗅いだりという、いわゆる五感で感じる情報が外受容感覚になる。

怒りを感じたり喜んだりする感情は、内受容感覚と外受容感覚という2つの情報を統合した時に、脳の中で認知されるという(図1)。例えば、自分が好きな料理の臭いを嗅ぐとお腹が空いてくる、すなわち胃の中が空っぽだという情報を脳が受け取る。これが、五感から得る外受容感覚とそれによって起きた内受容感覚であり、その料理を「食べたい=好き」という気持ちが感情として表れる。逆に、自分が苦手な動物、例えばヘビなどを見ると、心臓がドキドキしてしまう。これによって、「嫌い」とか「怖い」という感情が表れる。

一方で、吊り橋効果のように、外受容感覚と内受容感覚が、本来とは異なる感情を生み出すこともあるという。「吊り橋の上で異性を見た時、本来は橋の揺れによってドキドキするという身体反応が起きているにも関わらず、目の前の異性が好きだから心拍上が上がったんじゃないかと勘違いしてしまう」(日永田氏)。

(図1)外受容感覚によって受けた刺激が内受容感覚に影響を与えて感情が生まれる(出典:奈良先端科学技術大学院大学)

(図1)外受容感覚によって受けた刺激が内受容感覚に影響を与えて感情が生まれる(出典:奈良先端科学技術大学院大学)

感情を人工的に作る実験

日永田氏が研究を行う際に参考にしている、もう1つの重要な考え方が「感情分化」だ。もともと感情を持たずに生まれてきた人間は、生後3カ月頃には快と不快という感情を持つようになり、そこから不快が怒りなどによって細分化し、快も喜びなどによって細分化する。そして、2歳くらいまでに基本的な感情が揃ってくるといった理論だ。そこまでで子供に外受容感覚を与えるのが、母親や父親といった養育者になる。

そこで日永田氏は、AIにもこのような外受容感覚を与え、擬似的な内受容感覚を持たせることで、感情を芽生えさせようとする実験を行っている。生後数か月の赤ちゃんを模した感情モデルをコンピューター上に構築し、「喜び」「悲しみ」「怒り」「平常」という4種類の表情を持つ母親役の画像を用意。その画像を赤ちゃんに見せると、赤ちゃんが何らかの表情を出力する仕組みを作った(図2)。

(図2)赤ちゃんを模した感情モデルによるシミュレーション(出典:奈良先端科学技術大学院大学)

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(図2)赤ちゃんを模した感情モデルによるシミュレーション(出典:奈良先端科学技術大学院大学)

実験では、赤ちゃんが笑ったり泣いたりしている表情に近い母親役の画像を、赤ちゃんに見せるということを繰り返す。これは、実際に赤ちゃんをあやす際に、赤ちゃんが笑顔になると母親もつられて笑うという自然な反応を模している。赤ちゃんには、母親の画像を見て次にどのような表情を出力するのかを判断させているが、その過程で、擬似的に血流や呼吸などの数値が変化するという体調の影響を織り込んでいる。

この実験では、当初は赤ちゃんは母親の表情と無関係にさまざまな表情を示すが、フィードバックを繰り返すうちに、母親の4種類の表情ごとに別々の表情で応答するようになった(動画)。これは、赤ちゃんの感情が、生後3カ月頃から単純な「快・不快」から「怒り」「悲しみ」などへ分化していく過程と似ているという。

(動画)感情モデルによるシミュレーションの実行結果(出典:奈良先端科学技術大学院大学)

体を持たないAIは感情を持てない

日永田氏は、このようなシミュレーションを使ってAIが感情を身につけていく過程を明らかにしようとしているが、現時点での実験ではあくまでも擬似的に内受容感覚を与えているに過ぎない。AIが自ら感情を身につけるには、実際にロボットなどに組み込んで体を与える必要がある。

例えば、体を持たないChatGPTから帰ってくる返答は、いつも客観的だ。それは、ChatGPTが自分でいろんなことを実際に経験したわけではないので、この店の料理がお薦めですと言う時でも、自分はこの料理のどんなところが好きですといった主観的な意見が言えない。したがって、AIが体を持つことがなければ、感情を持つ可能性はほとんどないと日永田氏は考えている。

一方で、人間は生きていくため、すなわち自分の命を守るために必要だから、感情を身につけていったとも考えられる。例えば、相手に攻撃された時、痛いという感情が身を守ろうとするし、怒りという感情が芽生えれば相手と戦おうとする。また、感情は人間だけでなく他の動物も持っているが、人間だけが持つと言われる「笑う」という情動も、仲間を作って集団で狩りをしていた時代に、連帯意識を高めるために生まれたのかもしれない。

現状のロボットには基本的に痛覚がないし、死の概念もない。それは、人間には耐えきれない過酷な環境で働いてもらうためには邪魔になるからだ。また、ほとんどのロボットには緊急停止ボタンが付けられ、なにかあればすぐ活動を止められる。そんな構造は、生物としてはありえない。

ロボットにも死という概念が搭載され、自分が生き残るためにはどうしたらいいのかなどを、自分の身体の状態とかを加味して行動するようになってくると、そこに感情が生まれてくるかもしれない。「ロボットに死の機能を持たせたとしても、死ぬことの意味を知らなければ感情は持てないだろう。ロボットに感情や情動を芽生えさせるには、自ら生きたいって思うようになることが重要なポイントだと思う」(日永田氏)。

≫ ChatGPTはどこまで言葉を理解しているのか?

OpenAI社が2022年11月30日に公開したAIチャットボットサービス「ChatGPT」は、公開後からわずか2カ月で1億ユーザーを突破し世界中で大きく注目された。質問の入力と回答は日本語にも対応しているため、最近は日本の自治体でも、職員の業務効率化などの目的で活用され始めている。ChatGPTはとても適切に質問に回答するため、まるで言葉を理解しているように見えるが、はたしてAIはすでに人間の言葉を理解しているのだろうか。そして、AIが意識を持つことがあるのだろうか。

https://project.nikkeibp.co.jp/mirakoto/atcl/robotics/h_vol76/

≫ 感情表現も進化する人に寄り添うロボット

≫ ロボットの顔はどんどん人間に近づく 良好な関係を結ぶため表情を豊かに

※画像 ワイアード ゲーム

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