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「USスチール」買収はトラの尾踏み絵か

最新情報 クリフス、日鉄買収失敗なら「USスチールの資産買収」
【ニューヨーク=川上梓】日本製鉄によるUSスチール買収を米政府が阻止する方向になったことを受け、米鉄鋼大手クリーブランド・クリフスは「USスチールが閉鎖する(製鉄所などの)資産を即座に買収し、投資する用意がある」との声明を発表した。USスチールは日鉄による買収が不成立なら一部の製鉄所を閉鎖すると示唆している。クリフスのローレンコ・ゴンカルベス最高経営責任者(CEO)が5日付の声明で明らかにした...
日鉄のUSスチール買収 2024年9月7日 6:48 日経電子版

この話をする前に、過去に同じようなアメリカ資産を買収した件を参考にすると、わかり易いかもしれない。

結果的には、短期間でそれから撤退して大恥をかいた、という顛末は、今回も近似するか、というので調べてみた。

三菱地所によるマンハッタンビル買収劇は恥の上塗り糊塗だった
1989年10月、三菱地所はロックフェラーセンターを所有するロックフェラーグループ(RGI)の株式51%を取得しておよそ8億4600万ドル(当時のレートで日本円にして約1200億円)でビルを買収した。これはバブル期の成金的な「ジャパンマネー」による海外資産買いあさりの象徴的な例であり、アメリカ国民特にニューヨーク市民の大きな反感を買いジャパン・バッシングの火に油を注いだ。ウイキペディア

だいたいの大筋は、そんなことで今回の、USスチール買収劇がそれに近似しているように見えるが、換言すると日本の「タタラ」製鋼マニュアルを中国がパクッた、と表現すると判り易いか、(いや逆か)。

とすると今回も、その延長線上になる可能性がある。まず押さえておくべきは大統領選挙の票読みが絡んでおり、その「ラストベルト」票を奪取するかしないかで、アメリカ首長に成れるかどうかの瀬戸際のようだ。

それにしても、冒頭に示したように、過去の事例で、日本がアメリカを買収した事例で、うまく行った例がない。

その代表例 東芝


東芝を地獄に叩き落としたWHという会社
PRESIDENT Online 2017/03/12 11:00
東芝を債務超過に突き落とした簿外債務
東芝が迷走している。2月14日の2016年度第三四半期の決算発表は当日急きょ延期、見通しだけを発表した。
発表された見通しを見ると、4999億円の最終赤字に1912億円の債務超過。まさに末期的ともいえる状況だ。その最大の元凶が「ウエスチングハウス(WH)」の米国の原発建設などに関連した簿外債務だ。その額6253億円(全体では7125億円)、東芝にとっての火薬庫といってもいい存在だ。すでに報道ベースではWHを連邦倒産法第11章(チャプター11)の申請も検討されているといわれているが、さらに3000億円の追加損失が発生する可能性もあり、関係者の間からは「それができるくらいならだれも苦労はしない」(主要取引銀行関係者)という声が上がっている。
事実、東芝はこのほかにWHの債務保証などをし、7934億円(2015年度の決算資料から)の偶発債務を抱えている。整理すればそれが一気に東芝の負債となってのしかかる。
実は簿外債務の原因となっている原発工事は、そのプロジェクトを推進するために電力会社が政府から巨額の債務保証を受けて、資金を調達し建設を進めてきた。
WHがチャプター11を申請するようなことになれば工期はさらに遅れ、それが米政府の負担にもなりかねない。その総額は83億ドル(約9500億円)ともいわれ、日米間に大きな亀裂を生む可能性すらある。東芝にとっては“進むも地獄、引くも地獄”という状況なのである。

東芝を苦境に陥れたWHとはどのような会社なのか。
WHはもともと1886年から1999年まで存在した米国の総合電機メーカー「ウエスチングハウス・エレクトリック」の原子力事業部門で、1950年代以降「加圧水型原子炉(PWR)」の開発製造で独占的な地位を占めていた。
その後1999年に英国の「英国核燃料会社(BNFL)」社に売却された原子力事業が今のWHである。当時の売却価格は11億ドルといわれている。BNFLはMOX燃料など核燃料の開発や搬送、原子炉の運営などを行う英国政府が所有する持ち株会社。ところが財政が悪化し、2005年にはWHの売却を決断。当時は18億ドルの価値があるといわれたWHを東芝、ゼネラル・エレクトリック、三菱重工などが入札した。
このとき同じPWRを手掛ける三菱重工が有力視されたが、蓋を開けると、「沸騰水型(BWR)」を手掛けていた東芝が54億ドルで落札、当時は「2000億円の会社に6000億円を出すのはばかげている」(業界関係者)といわれたが、東芝の経営陣は勝利の美酒に酔いしれた。
BWRは国内が主要マーケット、世界の主流はPWRだ。WHで世界に大きく打って出たい東芝にとっては何が何でもほしい会社だったといえるのかもしれない。以下割愛

この買収劇で、「東芝」は手痛い失敗を繰り返し奈落の底に落ちることになった。

拾ったのが「子ねこ」とおもい愛玩いとおしく日々、餌を与えそだてていると、やがてそれは身の丈以上の大獣トラに成長したという超リアル動画をよく見る。
そのトラの尾っぽを踏んでしまった、という比喩は的外れだが、その相手がもしアメリカだったら、本気で食い殺される、そんな予感がした。

話しは逸れるがもし、「トヨタ」が「フォード」を買収するというガセネタが出回ったら世間(世界)は信用するだろうか。

現況2030年に向かって、激しい激流が渦を巻いて流れ下っているが、それを高みの見物で眺望している日本は、多分、それは動画の世界だけだと、錯覚しているように思う。

米国のエコノミストが指摘
「USスチールと日本製鉄の取引を阻止することが、米国経済のプラスになると考える経済学者を、私は知らない」

2024/9/6(金) 21:25配信 クーリエ・ジャポン

日本製鉄による米国の大手鉄鋼メーカー、USスチールの買収計画を正式に阻止することを、バイデン大統領は発表する予定だ。また、米政府の外国投資委員会は両社に対し、買収には国家安全保障上のリスクがあるとする書簡を送っていたことがわかったと「ロイター通信」が報じている。

日本製鉄のUSスチール買収で米国人「徴用工」問題が再燃

政治家たちはみな「反対」
米メディア「NBC」によると、バイデンは今回の取引が「米国の製造能力に対する打撃であるだけでなく、国家安全保障上の脅威である」とし、次のように語っている。
「USスチールは1世紀以上にわたって米国を象徴してきた企業であり、完全な米国企業であり続けるべきだ。米国が所有し、米国の鉄鋼労働組合が運営する、世界最高の企業だ──そうあり続けることを、約束する」
これに関しては共和党も同じ意見で、大統領候補のドナルド・トランプも、自身が当選すれば「即座に」取引を阻止すると以前から表明している。
一方でUSスチールの幹部は、取引が失敗すれば、同社の命運が危うくなると主張している。デビッド・ブリット最高経営責任者(CEO)は「選挙で選ばれた指導者らには、この取引の利点、そして取引が失敗した場合に避けられない結果を認識してもらいたい」と語っている。

「激戦州の票」の奪い合い
両社の合意がなされた当初から、日本製鉄とUSスチールの取引には、鉄鋼業界の労働組合から非難の声が噴出していた。労働者の雇用への影響や安全保障の懸念を理由に、米国内では反発の声が多い。また、11月におこなわれる大統領選挙の影響も大きい。

USスチールが本社を置くペンシルベニア州は、いわゆる激戦州だ。労働組合や労働者の支持を獲得したい両党にとって、彼らの声は重要だ。
だが、そうした政治的な理由から企業の取引が阻止されることに、懸念をとなえる声もある。

米紙「ニューヨーク・タイムズ」によると、法律の専門家やウォール街のアナリスト、エコノミストたちは、バイデン大統領が行政権を行使して同盟国の企業との取引を阻止した場合、それが「前例となることは良くない」と指摘している。
「150億ドルの取引を頓挫させることは、開かれた投資という米国の文化から逸脱することになる。国際企業が米国への投資を考え直すきっかけになりかねない」と警告しているという。

米国の専門家らが指摘
【解説】日本製鉄との取引を阻止することは「米国のためにならない」
画像 政治的な都合によって、日本製鉄とUSスチールの取引は頓挫する可能性もある  Photo by Jeff Swensen/Getty Images

日本製鉄による米国の大手鉄鋼メーカー、USスチールの買収計画を正式に阻止することを、バイデン大統領は発表する予定だ。また、米政府の外国投資委員会は両社に対し、買収には国家安全保障上のリスクがあるとする書簡を送っていたことがわかったと「ロイター通信」が報じている。

政治家たちはみな「反対」

米メディア「NBC」によると、バイデンは今回の取引が「米国の製造能力に対する打撃であるだけでなく、国家安全保障上の脅威である」とし、次のように語っている。

「USスチールは1世紀以上にわたって米国を象徴してきた企業であり、完全な米国企業であり続けるべきだ。米国が所有し、米国の鉄鋼労働組合が運営する、世界最高の企業だ──そうあり続けることを、約束する」

これに関しては共和党も同じ意見で、大統領候補のドナルド・トランプも、自身が当選すれば「即座に」取引を阻止すると以前から表明している。

一方でUSスチールの幹部は、取引が失敗すれば、同社の命運が危うくなると主張している。デビッド・ブリット最高経営責任者(CEO)は「選挙で選ばれた指導者らには、この取引の利点、そして取引が失敗した場合に避けられない結果を認識してもらいたい」と語っている。

【解説】USスチールの買収取引が、政治的にこじれまくっている理由
「激戦州の票」の奪い合い
両社の合意がなされた当初から、日本製鉄とUSスチールの取引には、鉄鋼業界の労働組合から非難の声が噴出していた。労働者の雇用への影響や安全保障の懸念を理由に、米国内では反発の声が多い。
また、11月におこなわれる大統領選挙の影響も大きい。USスチールが本社を置くペンシルベニア州は、いわゆる激戦州だ。労働組合や労働者の支持を獲得したい両党にとって、彼らの声は重要だ。
だが、そうした政治的な理由から企業の取引が阻止されることに、懸念をとなえる声もある。

米紙「ニューヨーク・タイムズ」によると、法律の専門家やウォール街のアナリスト、エコノミストたちは、バイデン大統領が行政権を行使して同盟国の企業との取引を阻止した場合、それが「前例となることは良くない」と指摘している。

「150億ドルの取引を頓挫させることは、開かれた投資という米国の文化から逸脱することになる。国際企業が米国への投資を考え直すきっかけになりかねない」と警告しているという。

党派を超えて疑問視
買収取引に政府が介入することには、専門家たちは党派を超えて懐疑的なようだ。

オバマ政権をサポートしたハーバード大学のエコノミスト、ジェイソン・ファーマンは「買収を阻止することが米国経済にとって良いことだと考える経済学者を私は知らない」と指摘し、次のように続けている。

「米国はフレンド・ショアリングを強調しつつ……グローバリゼーションを終わらせはしないと述べてきた。今回の件は、その精神に反するものだ」

さらに、トランプ政権で商務長官を務めたウィルバー・ロスは、米国は日本製鉄の技術から恩恵を受けるだろうし、国家安全保障上の問題が浮上すれば、米政府はいつでも同社を掌握できると主張した。

「本当に悪いことは何一つないと思う。ただ、外国人による大規模な投資を不快に思う人が多いということだ」
11月の大統領選に向け、バイデン氏とトランプ氏はいずれも鉄鋼労働者からの支持獲得に力を入れている
バイデンが日本製鉄のUSスチール買収に反対するようになった“裏事情”

追い込まれる取引
民主党の大統領候補であるカマラ・ハリスも、USスチールは米国の所有者の手に残るべきだと表明した。

ニューヨーク・タイムズの別の記事では、日本製鉄は「11月の大統領選挙を過ぎても話し合いが続くことに賭けている。その後は労働組合の政治的影響力が弱まる可能性があるだろう」と報じられている。

また、日本製鉄は「この買収取引が両社とその従業員、そして米国と日本にとって良いものであることを示すために、相当な努力を払ってきた」としている。7月には、米国の規制当局から疑惑の目を向けられる可能性があるとして、同社は中国での事業から撤退すると発表した。



【解説】USスチールの買収取引が、政治的にこじれまくっている理由
3min2024.4.17
1世紀以上の歴史を持つ米鉄鋼大手USスチールは、大規模な買収計画を進めている。同社が取引相手として選んだのは、米国内のライバル企業であるクリーブランド・クリフスではなく、日本製鉄だ。

そして4月12日、およそ2兆円の買収計画を巡って臨時の株主総会を開催され、賛成多数で承認された。だが「物議を醸しているこの計画の見通しが、これほど悪くなったことはかつてなかった」と米「CNN」は報じる。
この取引は、米国の鉄鋼業や国内政治にとって重要な意味を持つだけではない。大統領選挙を目前に控える米国にとって、主要な同盟国である日本との関係にも大きな影響を与えうる話題だ。
企業間の取引を超え、政治的問題となったこの買収計画は、スムーズに進みそうにない。
11月の大統領選に向け、バイデン氏とトランプ氏はいずれも鉄鋼労働者からの支持獲得に力を入れている

バイデンが日本製鉄のUSスチール買収に反対するようになった“裏事情”







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