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メーカーを鵜呑みにしない方が良いこともある
お客さまにピアノに適した環境をお伝えするときは「湿度50%を目安にお願いします」と言っています。
実際にはもちろんピッタリである必要はなくて、45%でも、55%でも、年間を通して一定であれば問題ありません。それでも限度はあって、ずっと40%は低すぎですし、ずっと65%では高すぎます。また許容範囲内でも乱高下は良くないので、今日は45%だけど次の日は55%というのもピアノに負担がかかります。
なのでピアノにとっては湿度が「許容範囲内である」かつ「一定である」ことの2つが重要なんです。
メーカーさん、ちょっとゆるめじゃないですか?
それを考えると、ヤマハが公式に推奨する湿度は実態に比べてかなりゆるいなと思います。
【ピアノ】最適な温度や湿度はどのくらいですか?
ご家庭内でのピアノの故障の多くは、湿度が影響したものです。過湿・過乾燥、そして急激な温度変化による結露にご注意ください。温度は15~25℃、湿度は冬季:35~65%、夏季:40~70%を目安に、冷暖房装置および除湿機・加湿器などにより、調整ください。湿気が多すぎたり、逆に乾燥しすぎはピアノの大敵です。
許容範囲も広すぎますし、一定である必要にはほとんど触れていない。たぶんこれを参考にする方も多いと思いますが、多くの方が思ったよりゆるくて良いんだ〜と誤解しそうです。(あとは冬と夏で許容範囲がちがうのも不思議...)
どうしてこんなことが起こるのか?とモヤモヤしていましたが、ちょうど車についてのあるコラムを読んで、なるほどそう言うことかと。
「品質保証」と「性能保証」のちがい
コラムは“新車のならし運転は必要か?”という内容で、車メーカーの「特に必要なし」に対してエンジニアの筆者の方は「必要」
※ならし運転=走行距離5,000kmくらいまでは部品に負担をかけず馴染ませるためにエンジンの回転数を抑えて運転をすること
コラムによるとメーカーは基本的に「品質保証」の観点から市場品質の管理をしているため、ならし運転をしなくても「メーカーの品質保証期間内では“壊れる”ことはないので良し」としています。
一方、多くの人が望むであろう、車に楽しく気持ちよく長く乗るための「性能保証」の点で考えると、丁寧にならし運転をすることによって無理なく部品がなじみ、よりベストな性能で長く乗ることができる、と言うものでした。
工業製品としてのピアノ的にはゆるめの湿度管理でも壊れることはない(とは言え上記の環境でいちばん極端なほうに寄ればさすがに壊れる気はしますが...)ですが、楽器としてのピアノ的にはそれでは全然足りていません。
「品質保証」は決してウソというわけではないですが・・・実際につかう場合に大事な「性能保証」はもっと要求の高いものです。品質保証のことを言っているのか、性能保証のことを言っているのかを見極めないといけないな、というお話でした。
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