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保育園で安全に負担なくピアノを使うためのリアルな話。

保育園はピアノが大いに活躍できる場所です。

でも保育園でのピアノは主役では無くて、音の良さやタッチを追求する場所でも無い。悪くない状態で、保育に支障が無く、お子さん方の楽しみの邪魔にならないことが大事だと思っています。そして数ある保育のためのツールとして、なるべく予算をかけずにその状態を長く維持していく必要があります。

この記事は、そんな一般家庭ともホールなどの施設とも違う保育園のピアノをメンテナンスしてきて気づいたこと、多くの先生方からフィードバック頂いたことを踏まえ「これを気をつけると保育園でのピアノがもっと活きる」と言う内容になっています。

一部保育園のみの内容(お昼寝のことなど)もありますが、幼稚園でもほとんどの内容が当てはまると思いますのでぜひ。

保育園特有の、布団の綿ボコリ

お昼寝のためにピアノの近くで布団を敷くので、短期間でピアノの外にも中にも綿ボコリがどっさり積もります。放置すると虫の温床や、湿気の影響を促進してサビや故障の原因となります。

外側のホコリは日々、先生方にはらって頂くしかありません。内部のホコリは調律の際に毎回しっかり掃除することでしかキレイにできません。調律師によっては掃除が基本メニューに入っていない場合もあるので、担当の調律師には鍵盤を外して内部の掃除までしっかりしてもらうメニューで作業の内容をご相談してください。

ここはけっこう重要で、実際に僕が今までご依頼を頂いた保育園さんで、前任の調律師が内部を掃除していたケースはほぼ無かったです。短期的には掃除をしなくてもすぐに支障が出ないので、どうしても後回しになってしまうんだと思います。

お子さんの安全のために

ピアノは重いです。小さなアップライトピアノでも200キロ前後、グランドピアノは250キロ以上。地震に備えてピアノの脚の下には「耐震インシュレーター」を履かせておくのはほぼ必須です。ゴム製の深いお皿タイプで脱輪しづらく、地震のときにピアノが動いたり倒れたりすることをある程度防いでくれます。

対策をした上で、実際に地震の際はピアノに近づかないことが鉄則。グランドピアノの下に避難したと言うお話も聞きますが、これは絶対NGです。

大きな地震ではグランドピアノの脚が折れて250キロのピアノに潰されてしまう可能性があります。「ある程度丈夫で軽い」テーブルと違って「丈夫だけど重い」ピアノは、下に潜るのは危険です。

それ以外のピアノ周りの危険では、古いタイプのアップライトピアノは鍵盤の蓋が“バタン”と重さで勢いよく閉まります。手を挟む事故を防ぐために、最近のピアノのように手を離しても蓋がゆっくりと閉まるようにできる後付けの商品もありますので、つけておくと安心です(取り付けられないピアノもありますので調律師にご相談を)

そもそも開け閉めできないように家具の扉をロックするグッズをピアノの蓋に取り付けている園も多いです。保育園ではお子さんがピアノを開け閉めしないといけないシーンは無いはずなので、この対策も良いと思います。

ピアノにカギをかける対策は…カギをどこにしまったかわからなくなり、いざという時に弾けない…ということになりかねない(実際にありました)のであまりおすすめしません。

先生の安全のために

「ピアノを自分たちで動かすことってできますか?」保育園で結構聞かれる質問です。

普段はこっちにあるピアノを式典のときには正面へ、など移動して使いたいとのことなんですが、ご自身で動かすのはやめたほうが良いです

アップライトピアノは特に危険で、無理やり動かして倒れる危険性がありますし、ついているキャスターは動かすには不向きで、床が傷つくのは必至です。

またグランドピアノも実は危なくて、今年実際に保育園で先生方が動かそうとして、床の出っ張りにキャスターが引っかかり勢いでピアノの脚がバックリ割れてしまったと言うことがありました。幸いピアノが倒れることはなかったので怪我はありませんでしたが、一歩間違えれば…

それでも影響は大きくて、長期間ピアノが使えなくなり、相当な修理料金がかかりました。

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