アナログならではの「はじっこ」と付き合う
ショッピングモールの駐車場の、ちょっと停めづらい柱の横。
本の見開き部分の文字はページがたわんで読みづらかったり。
カフェの窓際の席はちょっと寒いとか。
世の中には色々な「はじっこ」があります。
電車の端の席のような良いはじっこもありますが(主観)…均一であって欲しい楽器にとって、はじっこの存在は少しやっかいです。
鍵盤の「一番下のラ」と「一番上のド」は誰が見てもピアノの端です。あまり使わない鍵盤ですが、やはり両端のこの音は響き的には少し不利な位置。
でも実はピアノの中にはそれ以外にも多くの「はじっこ」が隠れています。
整然と部品が並んだピアノの中で、ここは同じに弾いてるつもりでもなんか同じにならない、周りと音が少し変わってしまう難しい音です。
さまざまなピアノのはじっこ
たとえば、真ん中から少し上の音では途中で弦がいちど途切れるところがあります。これはピアノの「フレームの柱」が通っている場所。この柱の両側の音はフレームの影響で少し金属的になったり、音が詰まったりする傾向があります。
もう少し高い音に行くと、それまで全ての音についている音を止めるための「ダンパー」と言う部品がなくなります。
ダンパーがあるところは音がパッと消えるのに対して、ダンパーが無いところは少し長めに音が残ります。切り替わりのところをスタッカートで弾いてみると、ダンパーのある・なしで結構差を感じます。
低音側にあるはじっこ
真ん中から下では、途中で弦が3本1組から2本1組になり、素材もスチール弦から銅線が巻かれた巻線になります。ここの変化も結構大きいです。
弦の角度が真逆になるところもあったり、(専門的に言うと、弦が乗っている「駒」が切り替わります)
かなり低い音では弦が2本から1本になるポイントもあります。
はじっこを知る
こう言った、たくさんある切り替わりの違和感をどれだけ感じさせないかが調律師の腕の見せどころではあるんですが、構造上100%同じにすることは絶対にできません。
この違和感は周りで聴いている方よりも、弾いている本人が気になる類のものです。弾く曲やフレーズとの相性もあります。
切り替わりの違和感をご相談されたときに、ピアノを開けて切り替わってることを実際に見て頂いたあとに弾いてもらうと「あれ?気にならなくなった」と言うケースが結構あるんですよね。同じように並んだ鍵盤だけを見ていると少しの差が気になるところが、理由が分かれば納得できて対応しやすいと言う感じでしょうか。
このはじっこの位置や種類はピアノによってそれぞれ違います。ご自身のピアノの内部を見て完ペキに把握はしないまでも、いくつかそういうポイントがあることを知っておくと少し演奏のヒントになるかもしれません。
デジタルには、はじっこが無い
電子書籍ではページがたわんで文字が歪むところは無いし、配信コンサートで見づらい席はありません。エクセルはどこまでも行が増やせます。
物質であるがゆえに存在してしまう「はじっこ」という部分。
これもピアノのひとつの個性であり、やっかいな部分でもあり、おもしろい部分なんだと思います。
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