説明が難しい、ピアノの響板が割れるということについて
同業の方のSNSで、こんな投稿がありました。
これ、ホントそう思います。
色々あるピアノの故障の中で、一番恐ろしいとされている「響板の割れ」
ピアノを持っている方は一度は、調律師に強めに注意するよう言われたことがあるかもしれません。
響板はピアノそのもの
響板はピアノの音を出すスピーカーの役割で、そのピアノのアイデンティティとも言える部分。ピアノの形そのままなことからも、ピアノの「核」と言っても良いと思います。
響板は木を継ぎ合わせた板なので、乾燥しすぎたときや極端な環境でパカーっと割れてしまうことがあります。これがいわゆる「響板の割れ」
頑丈そうに見えて、意外と簡単に割れます。
この故障が恐れられている理由のひとつは、割れてしまうととにかく修理が大変。
完ぺきに直すにはピアノを工場に移動して弦をすべて外し、鉄骨を外し…分解をしてピアノを“造り直し”に近いかなり大掛かりな修理が必要です。コストもかかるし、それだけのために大分解を行うのはピアノにも相当な負担です。
どうなるかは、割れ方次第
では、そもそも割れてしまうとどんな困る事があるのか?
ここが難しいところで、割れの大きさや位置によって、症状がまったく違うんです。ひどいケースではピアノを弾く度に「バリバリバリっ!!」と不快な音が出続けてとても弾いていられなくなります。でも割れどころが良いと(?)なにも違和感が出ないことも。
もちろん割れていないときよりも〈音の張り〉の面などで、確実に音は悪くなっているはずで、調律も狂いやすくなっているかもしれません。でもそれも比べないとわからないくらい軽度なことも多く…
「割れてみないとわからない。割れ方次第で困り具合が全く変わってしまう」響板の割れ。
ダメな割れ方をすれば一発で実質寿命と言える反面、無症状の響板割れであれば、 鍵盤が戻らないとかペダルが効かないなどの数分で直せる故障のほうが弾く方としてはよっぽど困ります。
なので響板の割れって、絶対に起こってはいけないことだけど、結構起こりやすくて、でも起こったからといって終わりではない(どころか何も変わらないかも?)というアンバランスさがあります。
調律師としても難しい
調律師的にも、割れる前は「響板割れはホントにまずいので、絶対に起こらないように気をつけてください!」と、割れたらこの世の終わり、くらいの熱量でお伝えします。
でも実際に割れてしまうと、大抵の場合の症状と修理のコスト・リスクを考えるとすぐに修理するのは現実的ではなく「うん…まあ、不快な響きがなければとりあえず大丈夫なので、これ以上広がらないように気をつけましょう…」と、トーンダウンせざるを得ないという、なんとも不思議なことになってしまうんです。
とは言え起こった場合の深刻度はくじを引くようなものでリスキー。そもそも響板が割れる環境では他の部分もダメージを受けているはずなので、絶対に起こらないように予防しましょう!と強めにお伝えしたいのは変わらずです。