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ピアノ調律師同士で考えたい

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同業者の方と一緒に考えたいことや、おすすめのグッズなどを紹介しています。
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#調律

ピアノ調律師のための「錆を化学的に知る」

弦、フレーム、チューニングピン、キーピン、レール、スプーン、蝶板、ペダル...ピアノには多数の金属が使われています。そして金属とは切っても切れない「錆」 金属が錆びるのは酸化するからという程度の認識くらいで、ふと実は錆のメカニズムを正確には把握していないなあと言うことに気づきました。より的確で無駄のないメンテナンスをするためにも、こういったピアノに関する事象を化学的に知っておく必要があると最近は感じています。 と言うことで、こちらの本を読んでみました。 化学的な基礎知識

「なおす仕事」の闇

ピアノ調律師の仕事は、音程を直す、音色を直す、音が出ないのを直す、弾き心地を直す… かんたんに言えば【ピアノを直す仕事】です。 僕は基本的に調律するピアノの台数を1日2台までにしています。時間的なこととか、スケジュールの組みやすさなど理由はありますが、一番は単純に疲れでクオリティを落とさないため。1台たった2時間くらいの作業でも、調律をすると結構な疲労感があります。 もう疲れて何もできない〜と言うような疲れと言うよりも、今日はもう調律は無理だ...と言う疲れなので、身体

筋が通っている人はどこまでも筋が通っている

どのピアノの中にも調律カードと呼ばれるメンテナンス記録の紙が入っています。それぞれの調律師の、この紙への接し方を見るといろいろと勉強になることが多いです。 入っていた2枚の記録今回のピアノには2018年5月の記録が書かれた前任の調律師の名刺と、2018年5月〜2019年まで数回のその方のメンテ記録が書かれた調律カードの2枚が入っていました。 実はこの前任の方は亡くなってしまったとのことで、お客様から今回こちらへのご依頼がありました。 前任の方が最初に調律をした際には、こ

本当の定規は本当に良い

ピアノのメンテナンスで欠かせない道具。定規。 最近コクヨから発売された「本当の定規」人気で品薄みたいですね。 ふつうの定規 本当の定規 実は数年前のオンラインショップ限定発売のときから使っています。(ちょっとした自慢) 0.1mm〜0.2mmといえども、やはり目盛りの線に厚みがある以上どの位置で測るか、という問題は以前からありました。特に鍵盤の高さはシビアで、0.1mm以下の薄さの紙1枚を入れるか入れないか、と言う世界なので結構大きな問題です。 同じピアノで毎年鍵

「テセウスの船」的にピアノのことを考える

「テセウスの船」というパラドックスがあります。 ギリシア神話の英雄テセウスが乗っていた船。長年のあいだ木材の交換修理が繰り替えされ、多くの部品がオリジナルと置き換わったとき、今のテセウスの船と元々のテセウスの船は果たして同じ船と言えるのか?という問題。 言い換えるとモノのアイデンティティはどの部分に宿っているのか?ということでもあると思います。 ピアノはどうなんでしょう?切れた弦を張り替えたり、ちょっとした部品を交換しただけではもちろん元のピアノと変わらないと言えます。

「ピアノ調律の料金設定」について考えてみた

お客様から「調律料金安いですね!」と言われることが多いので、料金に対する考え方を少し。 調律料金のシステムは大きく分けて2パターン(1)前回の調律からの年数に関わらず一律料金 (2)基本料金+前回の調律からの年数によって追加料金(1年ごとに1,000〜2,000円程度) 当社では空き年数に関わらず一律料金なので、作業料金が安くなる理由はこの追加料金がかからないことが大きいです。(もちろん修理やタッチの調整などは状態とご希望に応じて別途かかります!) かと言って、別に安

ピアノ調律師がVESSEL 電ドラボールを1年間使ってみた

ピアノのメンテナンスをするためにはピアノを開けないといけないので、止めているネジを外すためにドライバーは欠かせない工具です。 ピアノを開けるためのネジは1台に10本程度とそんなに多くはないのですが、まあまあな長さがあるのでこれを全て手で回して外すのは結構大変です。 当たり前ですが外したら最後はつけないといけないですしね。 かと言ってそのためだけに大きな電動ドライバーを持ち歩くのも馬鹿らしいな〜という、絶妙な手間なんです。 そこでベッセルの「電ドラボール」 発売当初は

「保育園のピアノ」について考えてみた

保育園のピアノをメンテナンスしていると、部屋によって極端に狂いや故障の多いピアノがあることに気づきます。 もちろん部屋によって日当たりや空気の流れが違うので狂い方に違いがあるのは当然ですし、たくさんの人がいたりいなかったりと差がある「施設」には環境変化はつきものです。 それにしても、というほど他の部屋との狂いの差を感じる部屋があります。 なぜなのか疑問だったのですが... 共通点は5歳児の部屋ということ置いてある湿度計の記録を見たり、先生にお話を伺うとどうやら保育園で

仕事の休憩にはノイキャンが手放せない

ピアノの調律は、作業中にはそこまで感じないのですが相当集中力を使っているようです。 ベストなコンディションで仕事をするためにも、特に午後のお客さま宅に入る前には車の中で仮眠をするようにしています。少し早めに着いて15分くらいの仮眠がベストなのですが、交通状況でなかなかそうもいかないことも。 そんなときは少しの仮眠でも頭がリセットできるようにAirpods Proのノイズキャンセリング機能をつかっています。 これを使うとほんとにまわりの音が消えるので、5分くらいしか時間が