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お客さまと調律師のギャップを埋めたい

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ピアノって、調律って、本当はこうなんです。 ひとことで伝えるのは難しい「ギャップ」を解消する記事をまとめました。
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#仕事について話そう

調律をたくさんすればピアノが安定する、と言うわけじゃない

ピアノは結構音が狂う楽器です。 ピアノ調律師の仕事はいわゆる「狂った音を合わせる」だけではありませんが、基本の作業であることは間違いないです。 でもその「音の狂い」にもいろいろあります。実はただ調律を繰り返せば良くなるわけではなく、適切なタイミングで調律することや、環境を整えたり、持ち主の方の協力が絶対に必要です。 今回はそのために絶対に共有しておきたいけど、意外と調律師の感覚に留まっていてひとことで説明するのが難しい「ピアノの音の狂いとは?」について言語化したいと思い

協力していくなら順序は大事だよねって

最近、調律先のお宅で「前回教えて頂いた加湿器を買いました!」と、部屋にピアノのための加湿器や除湿機を置いて頂いているケースが増えました。 加湿が大事です!除湿が大事です!といろいろな方法で伝えても、なかなか置いてもらえないんだよなあ…と言う悩みがずっとあって。 冷静に考えるとそれはそうなんですよね。今までの生活になかった機器を導入するのって結構ハードルが高いんだと思います。僕もどんなに便利と言われても、ウォーターサーバーを家に置くのは抵抗あります。 でも、お客さまのため

ピアノは工業製品であって、工芸品でもあって

工業製品と工芸品。 ユニクロのTシャツと手編みのニット。 コンビニのスイーツと専門店のケーキ。 ニトリの家具と大工さん手作りの家具。 身近なものではそんな違いがわかりやすいかもしれません。 ピアノにはどちらの側面もあって、そのことがピアノと言うものを理解するのに結構大事なんじゃないかと思っています。 と言うのもこのnoteでは「お客さんと調律師のギャップを埋めたい」と言うことを命題のひとつに掲げていますが、そのギャップってピアノを工業製品と捉えているか工芸品と捉えてい

アップライトはグランドピアノの劣化版で、電子ピアノは紛いものか

「ピアノを本気でやるのにアップライトなんてありえない。ましてや電子ピアノなんて…」 こんな主張がピアノ業界には昔から根強くあります。 ここに続くのが 「だから自分はグランドピアノを弾く」 は全然良いと思うんです。でもそれを他人に強要したりマウントをとったり、アップライトや電子ピアノのユーザーが負い目に感じてしまうのは非常に悲しく害のある風潮だなと。 グランドピアノだけが本物のピアノ?歴史的には確かにピアノは元々グランドピアノから始まりました。 その構造を大胆に変え

ピアノの「お見積もり」をやめました

眠っているピアノをまた使いたいというご相談は多いです。 古いピアノも多く、買った当初に数回だけ調律をして10年以上弾いていなかったようなケースもざらです。 使っている方からすると「はたしてこのピアノは直して使えるのか?」「そしてどのくらい費用がかかるのか?」が一番の心配ごとですよね。 実際にたまに、まずはお見積りを...と言うご相談もあるのですが、少し前に「お見積りだけ」のサービスをやめました。 古いピアノは大きくわけて4パターンもちろん古くても使えるピアノはたくさん

人が家に来るときは、約束の何分前が良い?

ピアノの調律は事前に「何月何日の、何時に伺います」とお約束をして訪問する仕事です。 時間の約束についての感覚は本当に人それぞれですよね。仕事でもプライベートでも、なにを“常識”とするかが全くちがって未だに難しい。 「10時に」とお約束したら00分に着くのが良いのか、5分前が良いのか。時間通りには来ないものだと思っている方もいて、ちゃんとした時間に着くと驚かれることもあります。エリザベス女王のお茶会には5分くらい遅れていくのがマナーと言うのは本当なんでしょうか。 自分の中

調律師へのお茶出しについて。それともっと大事なこと。

ピアノ調律師を呼ぶときに、結構みなさん気にされているのが「調律師へのお茶出しをどうすれば良いのか」 これを知ったときにびっくりしたと同時に、ありがたいなと思いました。 そもそもこちらは仕事でお邪魔していると言うのに...みなさん当たり前な感じで迎えて頂いてるように見えますが、当然いろいろと考えてくれているんだよなあと。 たしかに調律を頼むのが初めてだったり新しい調律師を呼ぶときなど、他のお宅はどうなんだろう?なにもしないのはどうなのかな?逆に作業の邪魔にならない?とか、

専門家が放つ言葉は呪いになるかもしれない

その日の仕事は、2件のはじめて伺うお客さま宅でのピアノの調律でした。(タイトルと書き出しが怪談みたいですね。怖くないのでご安心を) 1台目、午前中のピアノの記録を見ると、2年前まで同じ方が毎年調律に来ていました。その都度「特に問題は無いですよ」と言われていたそうで、お客さまも安心していました。 午後のピアノは9年前に引っ越しと一緒に調律もしてもらったパターン。点検した調律師に「内部がだいぶ傷んでますね」と言われたとのことで、ずっと気にされていてのご依頼。 話だけ聞くとコ