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小学生の時に決別した「お菓子作り」と仲直りできた話

こんにちは。つぐみBooks&Coffee店主のシノです。

外出自粛でお家にいる時間が多くなり、親子でお料理やお菓子作りをしている方も多いと伺っております。いいことですね。

お菓子作りを早いうちから経験しておくことは、間違いなく強みになると思います。私は今、猛烈に「(お菓子作りのメリットに)もっと早いうちに気がつくんだった……」と痛感しているので。とはいえ、後悔はしていなくて、早いうちに始めていたら今の方向(マクロビとか)には向かっていなかったかもしれませんからね。結果オーライということで。

◆なぜ決別するまでに至ったのか

ご挨拶の記事にも書いたのですが、私は小学生の時のトラウマにより、それ以降、お菓子を作ろうとしたことはほとんどありません。

大げさなようですが、繊細な小学生だった私にとって「冷蔵庫で冷やすだけ」という、誰にでもできる前提の文言のついたお菓子ができなかった、ということは、もうプライドをズタズタにされるような出来事だったのでしょうね(何かには簡単だと書いてあったかもしれませんが、今チョコレートムースのレシピを見る限り、全然簡単じゃない。お菓子作りの恐怖「混ぜすぎないでしっかり混ぜる」「道具をたくさん使う」「色々な材料をそれぞれ加工してから絶妙に合わせることを求められる」など失敗どころがたくさんある、ということが今ならわかる)。
結果的に美味しく食べられないものが完成し、つまりは材料を無駄にし、後片付けも面倒臭いという、その一回でも「お菓子作りには何一ついいことがない」という結論を導き出すには十分でした。……そういえば、大学生で一人暮らしをしていた時、安売りの日にスーパーに行って(安売りの札にのせられて)うっかり卵を買ってしまい、(食事はほとんどアルバイトの賄いで生かしてもらっていたので、自炊数回で卵10個なんて消費期限以内に使い切れる訳もなく……)どうにか消費しようとカスタードクリームを作ろうと試みたことがありました。お菓子を作るというレベルではない話ですね。しかも「電子レンジで作る簡単カスタードクリーム」みたいなネットのレシピを参考に作ったような気がするのですが、できあがったものは惨憺たる有様でした。バニラエッセンスを入れすぎて苦いし、クリームも指も冷蔵庫もバニラ臭がすごいし、バニラ臭がすごいのに卵臭いし、それが大きなお皿にたんまり出来ていてうんざりという……。大学生になってもそんな感じで、やっぱりやるんじゃなかった、という思いを強めただけでした。

一応負けず嫌いなのでネットで検索したり図書館でお菓子のレシピ本を読んでみたりもしたのですが、読めば読むほど、すごい量の砂糖、バニラエッセンスなど日常的に使わない材料、焼き型や泡立て器など日常的に使わない道具、登場する「大さじ」「小さじ」「1カップ」「g」「ml」「cc」など入り乱れる単位……もう苦手意識しかない。パティシエなどプロはもちろんすごいのですが、これを趣味でやってる人が一定数いるということが信じられない。しかも趣味とはいえ、みんなプロ顔負けのレベルでめちゃくちゃ美味しそう……
過去から失敗体験の積み重ねを味わっている私には、

絶望感のミルフィーユ 〜レシピで難易度の追い打ちシロップをかけて〜

みたいな。

はい。自分でも何を言ってるのかよくわからないのですが、自分の味わった無理だという気持ちをお皿の上に表現したらこんな感じかなっていう。

そんな感じで、私のお菓子作りのフルコースは、恐ろしいデザートで幕を閉じたのでした。


◆なぜ、どうやって「仲直り」できたのか


結果から端的に申しますと、『へたおやつ(白崎裕子)』に出会ったからです。

「へた」って言っちゃった、って思うじゃないですか。

下記「おわりに」の文章をご覧ください。

お店でおやつを買えば、「へた」にはなりませんよね。〜中略。市販のキットとかを使えば、自作したとしても特別「へた」にはならない〜
誰かのために、それらをやめて、自分で一から材料を選び、作ることにした、ほとんどお菓子作りの経験がない、そんな勇敢な人たちが、最初にぶつかる壁。それが、「へた」なんだと思います。「へた」はえらいのです。
              ――『へたおやつ(白崎裕子)おわりに』 より

いや……泣いちゃうな……私、こんなに優しい「へた」って言葉あるか?と感動しました。

「へた」でもいい、というハードルの下げ方すごいですよね。それこそ「簡単」とか「すぐできる」という、レシピの方のハードルを下げる文言はよく見かけますが、「へた」って、お菓子を作る人、つまりこの本を読む読者を“下げる”言葉じゃないですか。それだけで反発や、抵抗感を覚える人も、きっといるんじゃないかなと思います。でも、私はすごく救われたというか、「へた」だけどお菓子を作りたい自分をそのまま認めてもらえた気がしたんですよね。「へた」卒業の日まで、とも書いてあるのですが、ずっと仲良くしたいレシピばかりです。

こうして、『へたおやつ』が私とお菓子作りの仲直りを仲介してくれたのです。

そもそも、この本を手に取るに至ったきっかけとしては、白砂糖・小麦粉・卵・乳製品不使用の料理・お菓子について学ぶべく、様々な本を読み漁っていた中で「白崎茶会」さんを発見したこと。言われてみれば『うかたま』で読んだことあったかも……という程度だったのですが、巻末の既刊紹介で『へたおやつ』というお菓子の本を出されていると知った私の衝撃たるや。「へたおやつ」って!なんちゅうタイトルか!(しかも「へた」ってあるのに表紙の写真はめちゃくちゃおいしそう)すぐに購入し、晴れてお菓子作りと仲直りできたという寸法でした。めでたしめでたし。

実は、このお店の開店にあたっては、自分でお菓子を作るつもりはなかったんですよね。だってできないと思ってたから。マクロビ系のお菓子を作っていらっしゃる上手な方も(ツイッターやインスタで)たくさん知っていたし。そういった方々にお願いできたらいいなぁと考えていました。なので、開業は私のお菓子作りのモチベーションにはならなかったのです。『へたおやつ』に出会わなければ、今でもお菓子作りは一切していなかったんじゃないかなぁと思います。

身体によくて失敗しにくい素材と手順、本当に感謝しかありません。

◆そして思うこと

今になって思いますが、お菓子作りは「訓練」として、とてもいい題材だなぁと

まず材料と道具をきちんと揃えること。
そんなのもう必要最低限に決まってるんですけど、つい最近始めたばかりで習慣になっていない私には、かなり重要な気づきだったんですよね。例えばレモン汁が終わりかけてるとか、そういうところをうっかりすると、調理中に(レモン汁登場の段階になって)「ぎゃーっ」ってなるので、始める前に必要分量あるか見ておいた方がいい。洗うのが面倒臭い、引き出しから出しておくのを忘れたとしても、泡立て器とゴムベラに同じ働きを求めるのは(どんなに私がものぐさでも)無謀です。書いてみるとそりゃそうですよね、としか言えないのですが、今まで何もしてこなかった私は(お察しのとおり)一通りやらかしたというわけです。
それを痛感してからテレビで料理番組を見たあの衝撃。なんとなく料理番組のイメージとして当たり前になっていた「バットの中に並べられたガラスのちっちゃい器に入れられた調味料や材料など」。うわーあれ最高じゃん、と。洗い物が増えまくるし、「塩ひとつまみ」まで1器に入れる意味とは?ってなるので、自分ではしませんけど、調理段階で計量しなくていいの楽だし、材料の不足や入れ忘れも起こらないし、確実ですよね。テレビの収録だし、料理人さんもいつでも撮り直せる訳じゃないし、(画がいいからだけでなく)理に適っていたんだなぁと。

さらに、オーブンの余熱や、ココナッツオイルを溶かしておくなど、「事前準備が必要だけれど、遅すぎず早すぎないタイミングが大切」な手順があること。
まぁ、どちらもちょっと早いくらいなら問題ないのでそんなに厳密ではないのですが、必要なタイミングできちんと使えるように準備しておくには「どれくらいで使えるようになる(暖まる、溶ける)のか」を把握した上で「いつまでに準備開始しておくか」という認識が必要になる訳です。

あとは焼いている間に洗い物をするとか、ものの配置は動線を考えてとか、ケースを使いやすいものに変えるとか、当たり前だけどちょっとしたことでどんどん快適になっていくのがたまりません。遣り甲斐あるぅ!


まさにお菓子作りは、全てが「段取り八分」!!!


この「段取り八分――段取りができていれば八分(80%)はできたようなもの(実行は残り20%)――」という言葉がどれくらい一般的なのかわからないのですが、何をするにしても、この「段取り」ってやつが得意だとめちゃくちゃ有利だと思います。もちろん「お菓子作りをすれば、絶対に段取りが得意になる」ということではありません。それでも、少なからず訓練する機会は増えると思います。料理ももちろん同様ではあるとは思うのですが、家庭料理ならば比較的無計画でもどうにかなるような気がするんですよね。個人的には。なので、より訓練レベルの高い「お菓子作り」を繰り返すことは、自己鍛錬の意味でも有意義だなぁと感じる日々です。実験もするので、今でも失敗しまくっていますけどね……(笑)

◆まとめ

というわけで、私にとってお菓子作りとの仲直りは、本当に大きな出来事となったのです。有難いことです。

・健康的な「おやつ」を食べられるようになった(身体的健康)
・お菓子作りのトラウマから解放された(精神的健康)
・お菓子作りができる自分になった(自己評価の向上)
・素材の性質や工程を知り、工夫したりリカバリーしたり、実験が楽しい(新しい挑戦。好奇心が満たされる)
・お店で自家製のつくりたて「おやつ」が出せそう(修行中)

いいことばっかりだ……


ふぅ。また長々書いてしまいましたが、こんな私でも「お菓子作り」が楽しめるようになって、とても嬉しく思っています。もしも私と同じように「自分で作ってみたいけど、買ったほうが絶対美味しいし……」と尻込みしてしまっている方がいるようであれば、「買ったお菓子はもちろん美味しいだろうけど、自分で作ればつくりたてだし楽しいよ!」とお伝えしたいと思います。楽しい上に、どんどん自分好みに寄せていけるので、きっと美味しいお菓子がつくれるようになると思います。

よーし、私ももっと修行頑張ろう!次は何を作ろうかな!

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