なぜ岩手から怪物が誕生するのか?
3月18日から開幕する第94回選抜高校野球大会。
通称春の「センバツ」。
今年も我が岩手県から楽しみな選手が出場する。
(twitter https://twitter.com/nikkan_t_hanbai/status/1503989830052503555より引用)
1年生でありながら、高校通算56本(3月16日時点)のホームランを量産している花巻東高校の佐々木麟太郎選手だ。
麟太郎選手は花巻東高校の佐々木洋監督の息子で、昨年秋に開催された明治神宮野球大会でも2本のホームランを打つなど全国的に注目されてきた。
昨年12月に肩の手術をし、万全の状態ではないが、それでも練習試合でホームランを重ね徐々に調子を上げてきたようだ。
花巻東高校は、これまで菊池雄星選手や大谷翔平選手などのメジャーリーガを輩出してきたが、次の次のドラフトの目玉ともいわれる麟太郎選手を生むなどその育成には定評がある。
また、そのほかにも岩手県では、MAX163kmの速球を武器に今年度の大活躍が期待されている千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希選手(大船渡高校)や、育成選手から支配下選手になり、先発ローテーション入りが確実と言われている堀田賢慎選手(花巻市出身、青森山田高校)など、怪物級の選手がぞろぞろと出てきている。
なぜ、岩手県からこんなにも怪物級の野球選手が出てくるのであろうか?
花巻東高校の佐々木洋監督は、この答えを、「ドラゴン桜」で知られる漫画家三田紀房氏と対談した際に語っている。
佐々木監督は「岩手から次々に逸材が現れるのか?」の理由について、次のように話している。
実は、自分は3年ほど前、「なぜ岩手県で怪物級の野球選手が出てくるのか」というテーマで講演をしたことがある。
その時はまだ佐々木朗希選手も高校生であり、堀田選手は話題にも上らなかったが、それでも大谷、菊池というメジャーのトップを張る選手がなぜ岩手県から輩出されるのか、エビデンスを探しつつ検討し、自分なりの考え方「仮説」として発表した。
その時に話した仮説は、次のとおりである。
要は、岩手県に限らず全国にスーパースター候補というのがいて、それらの生徒は身体能力がずば抜けているため、どんな種目をやっても好記録、好成績を収めると思われるが、岩手県は野球をする環境が整っているため、そういうスーパースターがこぞって野球をやったから怪物が生まれたのではないか?という仮説である。
例えば、バスケットボールの八村塁選手とか、水泳の萩野公介選手とか、もしかしたら陸上のサニ・ブラウン選手とかだって、野球をやっていれば一流選手になっていた可能性がある。
残念ながら岩手県では、NBAのバスケットボール選手を輩出できるような環境になっていないし(菅野ブルース選手のような才能のある岩手県出身の選手は他県の高校に行く)、全国レベルのスイミングクラブはないし、陸上の環境も恵まれているとはいえない。
競技種目の多様化により、野球をする子どもが少なくなる中で、岩手県はいまだにというか遅れて、野球をする環境が整ってきたのが原因ではないか?と当時は思っていた。
改めて考えてみると、佐々木監督のいうような指導者をはじめとする野球環境のすばらしさに加え、「夢を持ち続けている」というモチベーションが重要なキーワードとなっているように思えてきた。
というのも、先日の記事で書いたように、今の子どもたちは自分の実力というものを極めて客観的にみることができるのだ。
SNS等での世界のいろんな情報が手に入る。
数値化した指標等で自分は全国レベルでいえばどのくらいにいるのかを相対化することができる。
ただ、自分の能力を客観的にみることは、スポーツにおいて非常に重要な要素である一方で、過剰な客観視は自分の能力の可能性を閉じる事にもつながる。
そして、幼少期から激しい競争に疲れ、いわゆるバーンアウトする選手も少なくない。
「自分の実力はこんなものなので、マジに野球するのは高校まで」
「高校までやって疲れた。もう野球はしない。」
こういう若者も多いことだろう。
岩手県では、のびのびと野球ができる環境が整っているし、プロ野球球団のジュニアチームのような、すくなくとも幼少期からの競争はなく、バーンアウトの危険性も少ない。
将来の夢に向かって自分の可能性をあきらめることなくできる環境。
実はこのことが大きな要因となっている可能性も高い。
岩手から怪物が誕生する理由、それは指導者も含めた岩手県の野球環境のすばらしさに加え、「自分の可能性を閉じさせない」「夢をあきらめない」モチベーションがあるからではないだろうか?
とりあえず、このことを「岩手怪物論仮説」バージョンⅡとして披露しておくことにする。
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