ニューロダイバーシティ

ニューロダイバーシティとは何か。〜企業が特異な才能を活かすにはどうすればよいか。〜

米国を中心に精神疾患/障害の一部をニューロダイバーシティすなわち神経多様性もしくは脳の多様性として捉える考え方が主流になっています。

一般的にこの概念に含まれるのは、ADHD,自閉症,失読症,不安障害,双極性障害,HSPなど先天的で、基本的には治るということがない疾患や障害のことです。

障害として分断するのではなく、性別や人種と同様に多様性の範疇で捉えビジネスシーンなどに積極的に包摂することを目指す考え方です。

*以下の議論は障害診断や公的支援を受け、就労や日常生活が著しく困難な方を議論の対象に想定していません。

ニューロダイバーシティーとビジネスシーン

ニューロダイバーシティーがハーバード・ビジネス・レビューに取り上げられ話題になりました。

同論文によれば、「ニューロタイプ」の異なる人々は企業のクリエイティビティやその他価値創造の場面で新たな視点をもたらすのではないかと述べています。SAPやヤフーなど大手企業は彼らの雇用に積極的で、実際にソフトウェアテストやカスタマーサポートといった領域で実績を上げています。(通常の従業員より30%高い成績を上げたチームもあります。)

またシリコンバレーのスタートアップでは自閉症のエンジニアを積極的に雇用していることは有名です。ピーター・ティールの起業家育成プログラムを紹介した書籍では「二人のエンジニアのどちらを採用するか迷ったら、口下手な方を採用せよ(なぜならその方が自閉症傾向を持ち、才能のある人材が採用できるからである。)」というエピソードが紹介されています。

ニューロダイバーシティーを受け入れる際の課題点

ニューロダイバーシティーに含まれる人の80%は失業中と言われており、まだまだ彼らの活躍の場は少ないのが実態です。この背景の一つには企業の採用、育成など人事システムの構造的な問題があります。

1つには面接というスクリーニング手段が適さないということです。特に自閉症傾向のある求職者は仮に優れた能力を持っていた場合にも、コミュニケーションが苦手なため面接では優秀ではないと評価されてしまいます。

また特に大企業にて、あらゆるプロセスやシステム、ルールは標準化されスケーラブルであることが前提とされているが故に、働き方や環境、評価について特別な対応が必要な従業員を雇用することのマネジメントコストが高くなっていることが上げられます。


ニューロダイバーシティーを受け入れるには

ここで重要なのはニューロダイバーシティーの受け入れは、決して社会貢献活動や利他主義的な活動ではないということです。人手不足やエンジニア需要などを背景に、ビジネスニーズを満たすのに必要な能力を持っているからこそ雇用を進めるのです。(もちろん受け入れのコストを便益が上回ります。)ニューロダイバーシティ特性に関する適切な理解に加えて、こういった経済的なメリットを自覚することが重要です。

また適切な就労アセスメントを実施し、本人の特性に合わせてジョブとのマッチングを丁寧に行う必要もあります。既存の就労支援の枠組みにおけるアセスメントは典型的な知的障害や重度の精神障害者を想定して作られているので、ニューロダイバーシティのもとで受け入れる際には不適切なケースが多いです。

国連障害者権利条約では、障害者に対する合理的配慮が求められています。ニューロダイバーシティの受け入れについても、障害者と同様に適切な職場環境や人間関係を構築していくことへの強い意識付けが重要です。

例えば低コストで導入できる受け入れ体制の例として以下のようなものが考えられます。

①ニューロダイバーシティーという概念を全ての従業員が理解する。
②集中できるスペースを作り、オープンオフィスとどちらでも選択できるようにする。
③ライフサポート(睡眠、燃え尽き症候群など)に関するサポートサークルを作る。
④昼休みに息抜きの自然散策を推奨する。

NYにあるULTLA TESTINGは従業員の75%が自閉症を持っており、面接に依らない選考プロセスで自閉症の候補者を適切に発掘、評価を行いソフトウェアテスト業務で高いパフォーマンスを上げています。同社ではslackと自社開発のツールを用いて適切なマネジメントシステムを構築しています。 

(毎日従業員のコンディションをチェックする仕組みを構築している。)


終わりに

難しい議論です。能力が多種多様かつ特性の高低も様々です。ニューロダイバーシティーの議論に対しては、より障害の重い当事者や医療従事者からの批判も多いです。但し、私見ではあくまで批判はノイジーマイノリティであり、ビジネスで活躍するポテンシャルがある人材活用の議論の妨げになってはいけないと思います。

この領域で事業とか色々やろうと思っているのでディスカッションさせて頂ける方TwitterにDMください。

参考

 https://www.fastcompany.com/40421510/what-is-neurodiversity-and-why-companies-should-embrace-it

https://hbr.org/2017/05/neurodiversity-as-a-competitive-advantage



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