Twitter詩 2020.8
花火
はしゃぐ子ども
冷えたスイカ
線香の香り
空を見上げる
花火の音
鎮魂の祈り
少し寂しい
蝉の声も
止んだ
(20200802)
ひとり疎開した
祖母の恐怖を
わたしは知らない
無口になった
祖父の傷を
わたしは知らない
もう知ることができない
それでも祈る
平和を
知るものとして
大地で育まれる
草木が美しいと
涙する人のとなりで
(20200806)
最後まで光求めるきみは、美しい
(20200812)
雷鳴
空に轟く
きみの声は消えた
地球上の悲しみが
降り注いでいる錯覚
土砂降りの雨
流せない苦しみもある
蒸発しない悲しみもある
きみはもういない
30分ほどで
落ち着きを取り戻す
明るくなった空
架かる虹
別世界に連れて行かれたように
忘れてしまった
雷鳴
きみの声
夏の終わり
(20200814)
金魚
ひらひらと優雅に
赤い体を揺らして
水槽の金魚は泳ぐ
観賞用に生まれた
運命とは知らずに
大きな目を見開き
輝かせて指を差す
同じことをしたい
私に指はないけど
見られているのは
本当はあなたの方
自由を決めるのは
あなたじゃないの
生まれ変わったら
無機物になりたい
(20200817)
ぼんやりした思考と意識を
銀河系の何処かへ放り投げて
コンクリートの街から見上げる
三日月の欠片に見立てて
ざらざらした石ころを
かざしてみる
満たされるわけがないのに
納得させた
形ないものへの執着
誰にも知られずに
そこにある影を見つめる
愛されていたはずの
(20200824)
故郷
あの月は故郷で見た月と同じだろうか
先人の歌に思いを寄せて
ただひとり家路につく
朝になれば忘れるだろう
引力に引きずられた
感傷の海ならば
(20200825)
壊れた夏
働きづめ帰宅後の缶ビール
脱ぎっぱなしのハイヒール
切り取った写真はSNS映え
加工して誤魔化す承認欲求
遅れて出る紫外線ダメージ
無駄に掻っ込むビタミンC
海水浴もプールも怖い年齢
夏休みの宿題の絵日記には
決して書かれない日常でも
愛おしい私の日常なんです
(20200830)